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なりきる事

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「それで俺はいつからその女子校に通うのですか?入学手続きとかそのあたりは…」


 最後まで言い終わる前に俺の頭を上官が言葉を挟み…


「そのあたりは気にするな。それよりも前にお前にはやらなければならないことがある。」


 持っていたメモ帳の角で叩いてきた。


「ちょ、痛いですよ。上官。なにするんですか!?俺が何をしたって言うんですか!?」


 思わず叩かれた頭を手で押さえる。すると前の俺の体ではありえないような髪の感触が指に伝わってドキッとしてしまう。男と女で髪質の違いはあるくらいの事はわかっているし女の髪に触れたことが無いわけでもないが自分の元の体のつもりで触れたらまったく違う感触だったのでつい驚いてしまった。

 いい加減この体にも慣れなきゃいけないな。いちいちこんなことで反応していては立派な軍人とはいえない。


 それにしても普段上官は部下を理不尽にたたくような人間ではないはずなのだが…俺、なんかやらかしたのか?


「何もしてないから叩いたのだ。お前はすでに女なのだ。そんなお前が『俺』とかそんな言葉使いするんじゃない。」


 言われて気づく俺…いやわたし…くっ…なんか屈辱…

 立場上の会話で私と使う事はあっても女を意味するわたしは使った事が無いので何かすごく不安になってくる。


「す、すいません。上官…わたしが悪かったです。」


 ここは女性らしくしおらしく頭を下げて謝る事にする。ん?女性らしく?俺の周りの女でしおらしい女なんて見たことが無いが女になりきるとはほんとにこれでいいのだろうか?


「そうだ。それでいい。あと学園についてもそのしゃべり方崩すなよ?間違っても部下たちに話すみたいなオラオラ口調でしゃべるんじゃないぞ?そんな女はいないぞ。」


 そういいつつも口元に手を当てながら上官も少し女とはなんぞやと言う感じになっているようだ。

 眉間にしわを寄せ考えているような表情をする。


「う、う”ん…まぁ…確かに女にもいろいろいるから一概には言えないが一般的にはあまりいないはずだ。だからその…気をつけろよ。」


 目をそらし咳払いをしながら妙な訂正を加える上官。心当たりがありすぎるのだろう。


「わかってますよ。さすがにそこまで馬鹿じゃないですよ。外でそんな言葉使いしませんよ。わたしだって…」


「わたしだって何だ?言葉使いだけじゃないぞ?態度動き全部変えなきゃならない。女子高生がそんな肩を広げて胸を張って立ってるのは不自然だろう。もう少し抑えろ。胸を張ること自体はおかしくないがそこまで反らした立ち方する女は軍人以外ありえない。この任務の意味はさっぱりわからんが何かしら身バレするとか疑われれば死ぬくらいの覚悟で挑め。わかったな?」


 女子校なんて楽勝だろうとか思ってたけどこれはある意味最高難易度になるかもしれない。今までだって性格を塗り替えていろんな身分になりきって潜入する事はやってきた。


 喧嘩なんてした事無いようなうだつのあがらない商人になりきる任務もあったし逆に喧嘩しかとりえが無いようなごろつきになることもあった。


 だが今回の任務は女…しかも女子校生。多感な時期でコロコロ考えている事が変わってこの世で一番理解しがたい生き物だ。それになりきり怪しまれずに生活する。思ってたより難易度が高いかもしれない。
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