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臨戦態勢
しおりを挟む「ははは。上の意思がどういうものなのかわからなくなってしまった今となってはその体を傷つけていいものなのかもわからないから自殺は勘弁してくれ。とりあえず報告書にはそのように書いておこう。ネクロノミコンによる性別変換での心理変化…なかなか面白い実験結果だ。」
「死ぬことすら禁止ですか…そこは上官も一緒に死んでくださいよ。」
「私には妻も子も夫も爺も婆もいるんだ。巻き込まないでくれ。」
なんだ…その関係は…妻も夫もいたらおかしいだろう…どっちかにしろ…
「嘘をつかないでください…上官は独り者でしょうが…」
「まぁ冗談はここまでにしようか。」
そう言うと上官は身体を半身に構え腰を落とし戦闘体勢に入った。
「そうですね。そろそろこの身体がどれほど俺の力を引き出せるか調べないといけませんからね。」
そして俺も身体を半身に構えて臨戦態勢をとる。
「ルールは致命傷や治療不可能になるような攻撃でなければどんな攻撃も可。使える魔法は身体強化のみ。攻撃魔法の類は使用不可。こんなところで攻撃魔法使ったら施設がぶっ壊れるからな。」
要は殺人術じゃなく格闘術の範囲内で戦おうぜって事だ。軍人は殺人術も修めているからルールで区分しておかないとお互いの認識が違うまま始めると冗談じゃ済まされないことになる。
「わかりました。それでかまいません。」
俺もそれは歓迎なルールなので了承する。
「お…余裕だな…今日こそはお前に地に膝をつけさせる事が出来そうだな…まぁ私よりも小柄な小娘になってしまったお前に勝った所でたいした自慢にもならんが…」
俺に余裕があるのは事実だ。元の身体での俺と上官の勝負は100戦やって99戦俺が勝ち1戦引き分ける。そんな勝率だ。通常なら負けようがない。
だが問題は通常じゃないこの身体を使うということだ。
「へぇ…もう勝った気でいるんですね…いつもどおり上官を地に伏せさせてあげますよ。」
そんなわずかな不安を相手に悟らせないよう俺も上官を挑発する。
「お前こそ普段と違う身体だということがどれほどのハンディになるか思い知るだろうよ。」
そんな事やる前から充分わかっているさ…この身体がどれほど不利なのかを…
この子があの謎の液体に入っているときからずっと観察していたんだから。
とても剣など握ったことのなさそうな傷ひとつない手。力仕事など一切した事なさそうな華奢を絵に描いたような体つき…
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