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1章
47話 ご飯を食べていなかった!
しおりを挟む防具屋での用を済ませた俺は、ビルスさんに挨拶を済ませ、防具屋を後にした。
いやー、それにしても、防具屋に来てよかった。ていうか、ビルスさんに出会えて良かった。
正直、冒険者ギルドに行って絡まれるのって異世界に来たなら絶対起こるイベントだと思ってたから、まさか事前回避出来るなんて思わなかった。本当に運が良かった。出来るなら今後も冒険者ギルドに行かなければいけないなんていうイベントは怒らないでいて欲しいと願うばかりだ。
これ、振りじゃないからね? フラグじゃないからね? 本当にやめてよ?
と、そんなことを考えながら歩いていると、お腹がグゥーという音を奏で、空腹を伝えてくる。
「そういや、まだ昼飯食べてなかったっけ」
現在の時刻は昼過ぎの午後一時。朝食をべルート公爵邸で食べたのが朝七時過ぎだったから、腹が減っていても可笑しくない時間帯だ。
んー、何を食べようかな............。
どこか美味しい飲食店の情報を聞いておけば良かったと後悔し、どこで腹を満たそうか考えながらマップで飲食店のある場所を探していると、ある通りの情報に目が止まる。
「屋台街か~。いかにも異世界って感じがして、いいかもな!」
異世界の街といえば屋台街があるという謎知識を持っていた俺には、その場所はうってつけの場所で、迷わずに行き先を屋台街に決め、目的地に向けて歩き出す。
数分程歩くと、道の左右に屋台が並ぶ通りに出る。
時間がお昼すぎなためか、客足はそこまで多くないものの、遠目から見るだけでも売っている食品は美味しそうだ。
異世界での初めての食事である、オーク肉の串焼きから始まり、魔物の肉類、果物、果実水、お酒なんかもあって、かなり種類が豊富でどれを食べようかな迷いに迷う。
まあ、折角お腹も空いてる事だし、手当たり次第に適当に買おうか。
そう決断すると俺は10店舗程を周り、それぞれの店で一品ずつ食品を買う。
オーク肉の串焼き。ホーンラビットの串焼き。三面鳥の串焼き。アポールジュース(多分アップルジュース)等など見た目が美味しそうなものを中心に買い込んで、脇道にあるベンチに座ると、早速食事を始める。
まずは、唯一食べたことのあるオーク肉の串焼きから食べる。
焼きたてで熱々な肉からは、熱を感じさせるスモークから芳醇な香りが出ていて、食欲がそそられた俺は、勢いよくその串焼きにかぶりついた。
口の中に入れた串焼きから噛むたびにジュワッとした肉汁が溢れて、口の中を幸せで満たしてくれる。
「うめぇーーーーーー!!!」
思わず笑顔でそう叫んでしまうのも仕方ない。というか我慢出来ないくらいに美味しかった。
異世界にきて初めて食べたものということもあり、オーク肉には素材以上の美味しさを感じていることも否めないが、美味しいは正義なので何の問題もない。
続いて食べたホーンラビットの串焼きや、三面鳥の串焼きもオーク肉と同じくらい美味しくて、「うめぇーーーーーー!!!」と再度叫んでしまった。
その後に喉を潤すために飲んだ、アポールジュースは、やはりアップルジュースの味がした。ただ、果汁20%くらいのちょっと薄い味だったためか少しだけ物足りなさを感じてしまった。でも、美味しいことには変わりないので、文句ではない。
そんな風に独りでベンチに座り、黙々と食事を続けた結果、10品あった食べ物は、ものの数分で全てが俺の胃袋に収納されていた。
ふうー。食った食った。ほんと、大大大満足だ。
さて、お腹も満たしたことだし、そろそろ動こうかな。
そう思い、ベンチから腰を上げて立ち上がった時、ふと、誰かから見られている感覚を感じる。
俺はその視線の正体を探るべく、周りを注意深く見回す。すると、遠目にある小道から、ひょこっと顔だけ出してこちらを見つめている少女を発見した。
その少女は、遠目から見て分かるくらいにやせ細っていて、正直言ってかなり小汚い格好をしていた。
何故こちらを見ているのか.......なんて愚問だな。
ここで今さっきまで俺が何をしていたかを考えればすぐに分かる。
きっと、お腹が空いているんだろう。
あんな小さくて痩せ細っているんだからお金がなくて食べ物に困っていることくらい簡単に分かる。というか、もしかしたらあの子は孤児ってやつなんじゃないだろうか?
正直、今あの子にご飯を上げることなんてただの偽善行為でしかないだろう。
今この時だけ俺があの子に食事を上げて俺が満足したところで、あの子はどうなる? 美味しい食事を食べられる喜びをしって、この後からはまた食べられなくなる生活が続くなんて、あの子を今より苦しめるだけなんじゃないのか?
そんな考えが堂々巡りするかのように俺の頭を駆け回る。だが、俺には耐えられなかった。
親もいなくて、食べ物すらろくに食べていないような、今にも死んでしまいそうなくらい痩せ細っている子供を見つけて、見捨てるなんて俺には出来ない。
それはただの偽善でしかない?
この後のあの子の気持ちを考慮しろ?
はっ!!!! そんなクソみたいな理屈並べたところであの子は助からないじゃないか!!
結局助からないかもしれないなら、俺が今あの子を助ければいい。
今の俺にはあの子に物を食べさせて上げられる力がある。
だったら食べさせてあげるだけだ。
大体人を助けるのに細かいことなんて気にする必要なんてないんだ。
それにあの子はどう見ても子供で、俺はこの世界では大人だ。
大人っていうのは、子供を助けることが当たり前の存在なんだ。
助けたことであの子これから苦しむかもしれないって言うならまた助けてやるだけだ!
一度助けたなら最後まで面倒を見るなんて当たり前だ!
俺はさっきまで悩んでいた自分を恥ずかしく思った。だが、今はそんなくだらないことに時間を使っている場合じゃない。
俺は再度オーク肉の串焼きを買った店と、アポールジュースを買った店で同じものを一つずつ買うと、そのままの勢いで、痩せ細っている少女の元へと足を進めた。
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