2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮

文字の大きさ
上 下
30 / 57
1章

29話 感動の場面は突然に

しおりを挟む



 迷った。完全に迷った.......。

 
 されるがままに連れてこられたせいか、ここまで辿り着くまでに至った道が分からない。

 だが、まだ焦る時間ではない。

 いや、まだあわてるような時間じゃない......。

 一度冷静になって考えてみる。


 客間からさっきまでいた部屋まで来るのに要した時間は大体一分くらいなはずだ。そして、その部屋までに1回階段を登った....。


 そうだ、階段を登ったんだ!!

 客間は確か、屋敷の中では二階にある場所だったから.....ここは三階ということか!!

 ははっ。なんだ簡単なことだったじゃないか。


 ふっ、流石俺。推理力がメガネのガキ並だ。


 さて、現在地が分かったことだし、さっさと二階に降りよう。客間までの道は分からないけど、二階にいるメイドさんに聞けば分かることだ........ていうか、最初から適当に歩いてメイドさんを探せば.........。


 いや、考えるのはよそう。


 考えてしまったら残酷な未来が待っている気がする。



 ドタドタドタッ!!

 ドッドッドッ!!

 いざ、俺が二階に降りようと動き出すと下の方から何やら激しい勢いで誰かが階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。この音からしてそうとう急いでいる様子が感じられる。

 ここで俺がゆっくり降りていると邪魔になるかもしれない。そう思った俺は、一旦降りようとするのをやめて端っこにずれる。


 ドッドッドッ!ドッドッドッ!

 段々と音が近づいてくる。


 さて、こんだけ急いで駆け上がってくるのは誰だ......って、べルート公爵?? それに後には執事のヘパと奥さんのキャルアさん、更には何人かのメイドさんもいる。 なんだ? 何かあったのか?


 俺は、駆け上がってくる面々の必死の形相を見て、何があったのかが気になった。

 階段を上がりきった面々は、廊下の端っこ寄っている俺には目もくれることなく気付かずに更に三階の廊下をダッシュしていく。


 おいおい、いよいよなんかやばいことがあったんじゃないのか?
 そう思った俺は、その集団を追うことにした。が、すぐにその集団はある部屋の前で立ち止まった。

 なんだ、結構近かったな.......ん? あれってさっきまでいた部屋だよな? 


 ああ、なるほど。さっきの美人さんにみんなで会いに来ただけか! 病気とかいってたし、毎日お見舞いというか容態をみんなで確認しているのだろう。


 って待てよ。 それなら態々あんなに急いでなりふり構わず上がってくる必要なんてないよな?

 なんであんなに焦っていたんだ?


 全くさっぱり1ミリもわかんないな.....と思っていると、べルート公爵たちは、部屋のドアをノックして一言告げて、中に入っていく。

「エリシャ、入るよ?」


 未だ誰も俺には気づいていないが、俺も入っていいのかな?


 さっきは長居するのは良くないと思って速攻で逃げ....退室したけど、これだけいっぱい人がいるなら別に緊張.....怖っ......うん、大丈夫ってことだ!!


 俺は、その場で入るのを躊躇ったが、何かその場を覗き見することの方がそれはそれでまずい気がしたので、意を決してそろそろと中に忍び....堂々と中に入る。


 そして、中に入った瞬間、目にしたのは、べルート公爵とキャルアさんがベッド上から降り、部屋の中で立ち上がっていた先程の美女を抱きしめて号泣している光景が広がっていた。




 ああ、うん。まあ薄々ってかほとんどそうだと確信してたけど、やっぱりさっきの美女、てかエリシャって呼ばれてた娘、公爵令嬢さんでしたか...........。
 
 
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...