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1章
27話 俺もメイドも慌てんぼう。
しおりを挟む「では、レイ様。こちらの客間にておくつろぎ下さい。」
執事のヘパに連れられて到着した客間に入って、俺は言葉を失った。
いや、これ.......本当に客間か??
まず客間に入って最初に目に入ったのは、扉のすぐ横に置かれている壺と壁に掛けられてい絵のようなものだ。うん、どう見てもどちらも超高級品っぽい。素人の俺でも一目見ただけで分かるんだから絶対に高級品だろう。
更には部屋に置いてある家具、寝具類も恐らくかなりの高級品。
いやいやいや。これ絶対客間じゃないでしょ? いくら貴族で公爵様と言えど、一人のお客にあてる客間にしては広すぎるし高級さが過ぎるよ? 俺は王族でも貴族でもないただの一般市民ですよ?
てかこんな場違い感半端ない客間だと逆に休めねえよ! なんて言えるわけもないので、とりあえず文句は言わずに一旦ソファーに腰を落として落ち着くことにした。
うわぁー。なんだこのソファー...........。ふっかふか過ぎるよ......。高級とかそれ以前にめちゃくちゃ座り心地が良くて座ってるだけで心が落ち着くわ......。どうなってんのこれ?
「ふふふっ。お気に召して頂けたようで幸いで御座います。では、私はご案内が終わったのでここら辺で失礼させて頂きます。何か御用があれば、部屋の外でメイドが一人待機していますのでお気軽に御申しつけ下さい。では、ごゆっくりおくつろぎ下さい」
完全に油断して顔を呆けているところを見て、満面の笑顔でこちらを見ながら、ヘパさんはそう言って客間から退室して行った。
.........恥ずかしすぎるわ!! ああ、穴があったら入りたいとはまさにこのことか......。ちくしょう! 次は絶対にアホみたいに油断したところは見せないぞ! 絶対にだ! まあそもそも次があるのかどうかはわからないけどね。
うーん。ごゆっくりおくつろぎ下さいとは言われたものの、何もすることなんてないんだけど、どうしようか? 部屋の中に無数に存在する高級そうな置き物たちが俺の行動意識を完璧なまでにかりとってきて身動きができない。
...............よし、メイドさんを外に待機させておくのも申し訳ないし折角だから呼んで話し相手になってもらおう!
「すすすすいませぇーーん!!」
余りにも緊張して吃って声が裏返ってしまった。なんてこった!
「は、はい!ただいま参ります」
部屋の前に待機しているメイドさんから返事が返ってくると、その後すぐに扉をノックしてからメイドさんが中に入ってくる。
「お待たせしました。何か御用でしょうか?」
中に入ってきたメイドさんは、長い金髪で青い瞳の綺麗な女性だった。年は大体二十歳くらいだろうか? うん、とにかく美しすぎるメイドさんである。そしてそれ故に俺の緊張度は更に高まる。
「あええっとそのあの.......」
まずい。何も考えずに呼んでしまったからそもそも用事なんてない。これは非常にまずい。もしもなんの用事もないのに呼んだことがバレたら確実に嫌われてしまう。こんな美人で、しかもメイドさんな彼女に嫌われたら俺のライフはゼロになってしまう。なにか話題なにか話題....そうだ! 話題といえば天気だな!
「今日は、いい天気ですね」
「........?は、はい。そ、そうですね?」
アホなのか? 俺はアホなのか? 何が今日は、いい天気ですね。だよ!! なんの脈絡もなしにいきなり呼びつけた人に何いきなり天気の話題振ってんだよ! 思春期の中学生かよ!! あっ、俺そうだったわ。ってんなことはどうでもいいんだよ!何か早く次の話題を......。と慌てふためきながら話題を考えていると目の前のメイドさんの方から話しかけてくる。
「あ、あの、喉は乾きませんか?」
「えっと.....はい。そういえば、喉が乾いていると思います。」
いきなり話しかけられて何を言い返したのかは既に覚えていない。俺今なんていったんだ? と考えているとメイドさんが部屋から出ていった。
え? 俺なんか不味いこといったんじゃないだろうな? いや、でも普通に考えて俺がなんか不味いこと言ったから外出ていっちゃたんだよな? まずいよ....ヤバいよヤバいよ.......。
と一人でソファーに座りながら今後の身の振り方を必死に考えていると、部屋に再度メイドさんが入ってきた。
メイドさんの手元には、ティーセットがある。なんでティーセット?と思っているとその疑問をメイドさんが即座に解消してくれる。
「こちら、奥様もよく飲まれている、老舗の紅茶になります。まだ熱いのでお気をつけてお召し上がりください。」
「へっ?ああ、っとはい。」
といきなり紅茶を与えられた俺は、テンパりながらもとりあえず一口飲んでみる。
「.........ってあちっ!!!」
なんも考えずに飲んだ紅茶の熱さにびっくりして思わず悲鳴のような声を上げてしまう。
「おおおお客様!!だだ大丈夫ですか!?」
その様子を見た目の前のメイドさんは、慌てて俺の様子を確認してくる。あー。なんか目の前に慌てている人がいると逆に落ち着いてきたな。
うーんと、そうそう、確かさっきメイドさんは熱いから気をつけてお召し上がりくださいって言ってたな。ははっ。慌ててないでちゃんとメイドさんの話を聞いていれば舌を火傷せずにすんだろうに。全く俺ときたら.....少し舞い上がりすぎていたな。1回深呼吸をして冷静になろう。
「すうーーーーーはぁーーーーーーー」
うん、これで冷静になれた。てか結構な熱さだったのか未だ火傷した舌がじんじんする。ここは治癒魔法使っておくか。ヒールでも使っておけば完璧に治るだろう。
「ヒール。」
俺はその場で自分に治癒魔法をかけるように念頭に置いて、詠唱を開始して、すぐに終える。すると数秒ほど顔の周りが暖かくて心地の良い光に包まれると、先程まで感じていた痛みが嘘のように消えてなくなった。やっぱり魔法って便利だなー。
「う.......うそ?今の....治癒魔法? え? お客様は確か.....かなり強者の武人って話じゃ........」
今の一部始終を見ていた目の前のメイドさんが、何やらブツブツと呟いている。どうしたんだ? まさか舌を火傷しただけで魔法を使うとかって非常識だったか? とメイドさんがどうしてこんなことになっているのか原因を探るように考えていると、急にメイドさんが俺の元に迫ってくる。
うぉ!?!? むむむ胸が....あたたたたたたてる!?!?
「あ!!あの!!!お、お客様!!!!」
うぉおおおおぉお!!! 柔らかいって!!てか近いって!!
「ち、ちか!!は、はい!にゃにゃんでひょうかあ!?!?」
余りに動揺しすぎて何を言っているのか自分でも分からない。とりあえず呼ばれたことは分かったので多分それに返事を返したんだろう。
「おお、お客様は、もしや治癒魔法をお使えになられるのですか?」
え? 治癒魔法を使えるかって? いやまあ、使えるけど、それがどうしたんだろうか?
「ええっと、一応使えますよ?」
「ちち、ちなみに、『グレーターハイヒール』という呪文を使えるなんてことは?」
グレーターハイヒール? なんだその二重に上位な呪文。そんな呪文あんのか? と疑問に思いながら自分の使える治癒魔法を頭の中で調べてみると、どうやら使えることが分かった。どうやら、ヒールの上位のハイヒールの上位の魔法のようだ。うん、ややこしいな?
「えっと、はい。使えますね」
「っっっ!?!? それは本当ですか!?!?!?」
いや、うん。それは本当です。
「は、はい。本当です。」
「これはまさに運命的なもの? 神様からの贈り物なのでしょうか? と、とにかくこちらへ早く来てください!」
メイドさんはいきなり神がどうたらこうたらとか言いながら天に祈り拝むようにしだしたかと思うと、急に俺の方に向き直り、俺の右手を物凄い力で握りしめると俺をどこかへと連行しだす。
いや、え? なに? どゆこと? 今の数回のやり取りで一体全体何があったんだ? なんで俺こんな美人なメイドさんに手を握られて連行されてるんだ? い、意味がわかんねえ???
そうして俺は訳が分からずにされるがままにメイドさんに連行されて、ある部屋の前に辿り着いた。
メイドさんは、未だ俺の手を握りしめたまま、空いている方の手で扉をノックする。
「お嬢様、お部屋にいらっしゃいますか?」
「......ん? はい、いますよ.....。」
中からとても綺麗で美しいく落ち着きのある声が聞こえてくる。お嬢様っていってたか? てことは、べルート公爵の娘さんかな?
「よかった.....部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
「? えぇ、構いませんよ。どうぞ、お入りください。」
中から了承の返事が返ってくると、メイドさんはゆっくりと丁寧に物音を立てないように扉を開けて中に入っていく。もちろん俺は未だ手を掴まれているので俺も続いて中に入った。
部屋の中に入ると、部屋の端っこの方で窓の外をぼうっと見つめている一人の女性がいた。
あーうん。めちゃくちゃ可愛いわ。
てかこれからどうなんのこれ?
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