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1章

5話 召喚獣

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 目の前の魔方陣から二体の生物が俺の前に姿を現す。

 俺から見て右手前の魔法陣から出現した召喚獣は、白色の毛を全身に身に纏った体長八十センチメートル程の狼。種族名はレッサーウルフ。森等によく生息している魔物で、狼系魔物の劣化種だ。

 .....................。

 続いて、反対側の左手前の魔法陣から出現した召喚獣は、全身真っ白な見た目の全長五十センチメートル程の蛇。種族名はレッサースネーク。どこにでもおる魔物で、蛇系魔物の劣化種だ。


 ....................。


 いや、まあわかってたさ。名前にレッサーがついてる時点で劣化種だってわかってたさ。少し小さいだろうなって思ってたさ。だから何にも気にしていない。


 どっからどう見ても魔物っていうか、普通に日本でいそうな蛇と狼だからって気にしないさ。

 魔物っていうより可愛いペットみたいだなと思ったりもしていない。何これちっちゃいとかも思ってない。思ってないったら思っていない。



 そうだ!見た目なんかどうでもいいじゃないか!種族なんてどうでもいいじゃないか!こいつらはれっきとした魔物であり、俺の召喚獣であり、俺の初めての仲間なのだ。


 例えどれだけ予想より弱そうな見た目ではあっても、例えどれだけ予想より頼りなさそうに見えても、俺は気にしないさ!


 こいつらは俺が守るんだ!!!!!!!



 っと、呼び出してそうそう現実逃避してしまっている俺の頭の中に直接声が聞こえてきた!


『ますたあー。しょうかんしていただき、ありがとおございまあす』



「どうぉあっ!!!!なんだ!?!?!?!?」


 俺は突然聞こえてきた幼女ボイスにたじろいで変な大声を出しながら周りを見渡す。


 .................なんだ、幻聴か.........。


『主様。私のような劣等種を召喚して頂き誠にありがとうございます!』

 今度は先程とは打って変わって凛々しい感じの大人な女性ボイスが頭の中に直接流れてきた。


 おいおい、なんだなんだ?一体どうなってんだよこれ......。


 幽霊か何かなのか?マスターとか主様とか誰のこと呼んでんの?まさか俺のことじゃないよな?俺はこっちの世界にきてからまだ全然時間が経ってないんだから俺のことなわけねえよな?


 俺がこっちの世界にきてやったことなんてちょっと森を彷徨って、ゴブリンに出会って、ゴブリンとの死闘の末勝利して、今召喚獣を召喚しただけ..............................って、ん!?!?!?!?


 いや、まさか..................な.........。


 うん、いや?いやいやいや、これはないな。


 この考えは流石にぶっ飛んでるよな?



 ありえないありえない。うん。絶対ない。



 うん。でも一応試してみるか。うんうん。何事も挑戦っていうしね。絶対違うと思うけど一応ね!


「今の声って、もしかしてお前達の声だったり......する?」


 俺は先程の声が目の前の先程召喚した召喚獣の声だったのではないかと考えついたので、正解か否か答え合わせをするためレッサーウルフとレッサースネークに声をかけてみる。

 ..........................。


 ..............................................。


 だよねーーーーー!!やっぱ違うよねーーーーー!!!うん、わかってたよ?違うって分かってたけどさ、やっぱりあのタイミングで聞こえたもんだからもしかしてとか思っても仕方ないよね?


 いや、待てよ?


 まだだ!まだそう決めつけるには早すぎる!

 まだ慌てるような時間じゃない。


 俺は首を左右に振って、自分を落ち着かせる。


 諦めたらそこで試合終了ですよ?


 ...........あんざ..........ってふざけてる場合じゃない。



 もしも、仮に、この召喚獣たちが俺の頭の中に直接話しかけてきていたんだとしたらの話だ。

 それに応答するためには、直接話すという方法ではなく、俺自身も目の前の召喚獣達の頭の中に直接話しかければいいのではないだろうか?

 日本でいうところの念話。テレパシーを使えば、もしかしたら意思の疎通、会話が成り立つ野ではないだろうか?いや、それ以外ありえない!それが正解だ!なるほどなるほど。結局のところ真実はいつも一つ!!ということだねワト○ン君。


 さあ、答えに辿り着いたところで本当の答え合わせだ!!



 これでもしもまた何の返答も貰えずにただの独り言で終わってしまったら俺の精神も終わってしまうが、俺には一片の悔いもない。いざ参る!!!!


『はじめまして、君たちを召喚した如月零だ。よろしくな?』

 俺は目の前の召喚獣二体に笑顔を振りまいて、愛想よく脳内挨拶
を繰り出した。

 そして............................。


『よろしくおねがあいします!ますたあー!』

『主様、こちらこそよろしくお願いします。』


 お、おお!!!!!!!!!!


 返ってきたよ!!!!!返事が返ってきたよ!!!


 うんうん。可愛いやつらだ!


 俺が今日から絶対守ってやるからな!!


 俺は、自分を守る仲間という名の肉壁用に召喚獣を召喚したはずなのに、気づけば何故か逆に自分自身で必ずこの子たちを守ろうと思っていた。


 うん、だって仕方ないじゃないか!!

 声も見た目もこんなに可愛いのだから!!!!!




◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 召喚獣への深い愛情が生まれ、召喚獣を近くに呼び寄せて思う存分に頭を撫でたりして愛でているとふと思った。


 そういえば、念話とかテレパシー系のスキルとか持ってないのに、なんで俺使えてんだろう?

 いや、もしかして召喚獣たちが持ってたりするのか?それに呼応する感じで俺も取得してる?みたいな感じか?


 俺はもしかしたらと思い、もう一度自分のステータスを確認する。



如月零 レベル1

HP    49/49 4UP
MP    13/13 2UP
物攻     33 3UP
物防     20 2UP 
魔攻     26 2UP 
敏捷     24 3UP 
魔耐       8 

スキル
『闘術:レベル1』『火魔法:レベル1』『召喚魔法:レベル1』『治癒魔法:レベル1』『鑑定:レベル1』『周辺地形把握:レベル1』

 んー?念話スキルは増えてないけど..........なんかステータス上がってるな.......。


 どういうことだ?


 いや、よくよく見てみるとおかしい。

 MPは元々13で、2UPの表記が出てるから本来派15になっているはず.........ってあぁ!そうか、そういえば召喚獣を出したら最大値が減るんだったな。

 うん。まあそれはいいとしてなんでステータス上がってんの?


 なんか関係あるとしたら確実に召喚獣出したことしかないよな?


 俺はイリアスに質問して答えてもらったことを思い出そうと思考を巡らせる。


 ....................。


 ............................。


 そういえば.......。

 俺は召喚魔術の説明の時に聞いた時のことを思い出した。


『召喚術者には、召喚した召喚獣のステータスの十分の一のプラス補正がかかります。補正値の小数点以下は四捨五入で換算されます。』


 うん、そういうことだった。


 いや、うん。なんでこんな大事なことを忘れていたんだよ、俺。自分の生存率を上げる方法の一つでもあるのに......。危ないところだった。イリスに聞いたことはしっかりと覚えておかないとな。

 次のレベルアップの時に、なんで召喚獣と念話出来るのか聞くことも忘れないことにして、続いて召喚獣たちのステータスを鑑定してみる。



レッサーウルフ レベル1

HP    20/20
MP     8/8
物攻     13
物防       7 
魔攻       7 
敏捷     17 
魔耐       3

スキル
『疾走:レベル1』『噛み付き:レベル1』


レッサースネーク レベル1

HP    18/18
MP    10/10
物攻     15
物防       8
魔攻     10
敏捷       8
魔耐       2

スキル
『毒牙:レベル1』『硬化:レベル1』



 ああー。うん。やっぱ弱いのね........。



 いや、大丈夫だ!俺が守ればいいんだ!それにこれからレベルが上がれば強くなるかもしれないじゃないか!今は弱くても後々強くなるんだ!きっとそうだ!


 それに、ステータスはたしかに少し頼りない数値だけど、既にどちらの召喚獣もスキルを二つ持っているし、悲観しすぎることもない。


 これから一緒に頑張って行けばいいんだ!



『ますたあー。どうしたんですかあ?』

『主様、どこか具合が悪いのですか?』

 俺が一人で厳しい顔を浮かべながら、黙ってずっと思考の海に潜っていると、何か不安に思ったのか、二体の召喚獣たちが俺のことを心配してくれるような言葉をかけてくれた。




 あぁ!お前達は俺の心のオアシスなのか?


 全く、自分の召喚獣を心配させたままでは主としていけないな。


 ここは、一つ。自信満々に心配しなくて大丈夫だと安心させてやろう。



『大丈夫だ、問題ない。』

『ふうー。よかったですうー!』

『主様、無理はなさらないで下さいね。』




 俺の渾身のパロディーギャグを華麗にスルーして二体は優しい言葉をかけてくれた。



 うん、そもそもこっちの世界の生物で、人間でもない生物にあっちの世界のネタは通用しないのだった.........。


 それでもお前達は俺のオアシスだからな!!!



 俺は今一度、二体の頭を撫でながら、心配してくれてありがとうと感謝の念を送るのだった。



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