1 / 57
プロローグ
しおりを挟む俺は如月零。引きこもりだ。
俺は何もかもが嫌いだ。
この不自由な世界が嫌いだ。
こんな世界滅んでしまえばいいのに。
なんどもそんなことを思った。でも、そんな俺の願いは叶うことなく今も地球は回っているし、時間は動いている。
死にたいと思ったことも何度もある。
でも、結局死ぬのは怖くて死にたいと思うだけで終わっている。
それに、自分で自分を殺してしまったら本当の意味で俺はあいつらに屈したことになってしまう。
それだけは絶対に嫌だった。一度はあいつらに形だけではあるが屈してしまったが、まだ完全に負けた訳じゃない。
俺は俺のことをいじめてきたあいつらを絶対に許さない。いつか復讐するその時まで死ねない。そんなことを思ったのは引きこもってから半年経ってからだ。
我ながらこの間は何もせずに親にも心配をかけてただただ引きこもっていただけなのだから本当に情けない男だ。
でも、それからの俺は決意を改めて、引きこもっていながらも自分を鍛えることにした。いつか復讐するその時までに力をつけなければまたいじめられるだけだと思ったからだ。
毎日腕立て、腹筋、スクワットを百回ずつ、それとランニングを十キロ。このトレーニングを二年間続け、髪の毛を生贄にすることで、どんな敵もワンパンで倒せるくらいに進化した偉大なるハゲマ〇トを俺は尊敬して........その半分のメニューをこなした。
別に髪の毛が恋しかったとか、トレーニングメニューが自分には過酷すぎるとか言い訳するつもりは無い。
ただ、それ程に強くなってしまうと奴らへの復讐がワンパンで終わってしまう。それでは自分の気が晴れない。だから半分のメニューにしたんだ。ちなみにランニングは外に出られのでやっていない。
これは決していい訳では無い。そこの所を勘違いされてしまうと俺も本気で怒るだろう。俺が本気で怒れば..........わかるよね?そう。ワンパンで終わりだよ?
まあ、そんなことはどうでもいい。
俺はそんなメニューを一年半の間こなしながらにも、通信で色々な格闘術を学んだ。そう、通信でだ。
外に出る訳にはいかないので、通信だ。次外に出る時は奴らに復讐するその時だと決めていたので俺は外に出られないのだ。これは自分への戒めだ。決して外に出られなくなっている訳ではないのだ。
そして、そんな一年半の時間を過ごした俺は二年前の頃の俺とは全く違う。鍛え抜かれた鋼肉体は鉄をも砕くと言うわけではないがそれなりに強固だ。 どんな攻撃も全くの無傷で耐え抜くことができる訳では無いが、それなりに耐えることはできる。
そして、様々な種類の格闘術を体得した俺の戦闘スキルは、異世界に飛ばされたとしてもそれだけで生き抜いて行けるほどには成長していないのだが、割と強いくらいにはなっているはずだ。詳しいことは自分ではわからない。なにせ通信だからだ。
ともかく俺はいじめられていた頃とは全くの別人になっているのだ。そう、新しい俺。つまりはニューレイ君なのだ。
だから、大丈夫。きっと外に出られるようになっている。あの糞野郎共に復讐しなきゃいけないのだから外に出られなければ始まらない。
大丈夫。俺はやれる。
俺は深く深呼吸をして、まだ数度しか着ていなかった制服に着替えた。中学校入学当初は、身長が155cm程しかなかったが、この2年間で20cm以上伸びている。筋力も比べものにならない程増えていたため、制服はかなり小さくなっていた。ボタンすら厚い胸板が邪魔して下から三番目位までしかしまらなかった。なんだか奇妙な格好になっているが気にしない方が自分の心を傷つけなくていいだろう。
髪の毛もかなり伸びていた。自分で切ることすらしなかったので、背中の中ほどまで髪が伸びて、なんだか女の子見たくなっている。自分で切って変な髪型になるのも嫌だったのでゴムで一本縛りにして某るろ〇に剣士っぽくしてみた。
なんだか、案外似合ってるな俺。格好いいぞ俺!
こんなことなら飛天御〇流を通信で勉強しておくんだったな。通信であるのか知らないけどさ。
まあ、なにはともあれ準備は整った。後は外に出るだけだ。
ゆっくりと、ゆっくりと俺は重たい足を動かしてまずは自室から出る。そして、ゆっくりと、ゆっくりと玄関まで歩みを進める。時間は既に昼前なので共働きの親は既に家にはいない。久しぶりに顔を見せて安心させてあげたかったが、それは復讐を終えて本当の意味で過去のトラウマを克服してからの方がいいだろう。
母さんにも父さんにも本当に迷惑をかけた。これからは精一杯親孝行できるように頑張ろう。
そんなことを考えていたら、自然と先程まで重たかった身体が軽くなった気がした。二年前に履いていた靴では小さいので勝手に父親の靴を借りて、俺は玄関の扉を開け、二年ぶりの外出に赴いた。
家から出た瞬間強い風が吹いた。二年ぶりに感じる外の空気感になんだか心を洗われた気がした。
風も俺を後押ししてくれてるんだな。
大丈夫。一人だけど一人じゃない。俺にだって自然という味方がいたんだ。
「風さん、ありがとう。行ってきます。」
俺はたまたま吹いた風の名を呼び、感謝の言葉を述べてから外出の挨拶をした。傍から見たらヤバいやつだと思われるかもしれないが、俺はヤバいやつではない。自然に感謝する善良なる若き少年だ。不審者ではない。決して、決して。
数分歩くと、やがて目的地が見えてきた。俺が二年前に転入した北海道の中高一貫高の中学部の校舎だ。
高等部とは少し離れているいて、高等部よりも小さいものの、やはり他の建物と比べるとかなり大きい校舎だ。
久しぶりにその校舎を見て、思わず俺は歩みを止めてしまう。あの学校には、忌まわしい記憶しかないからだ。俺の味方なんて誰もいない。大人の教職員だって、俺のことを助けてくれなかった敵だ。俺がいじめられてるのを見て助けようとしてくれなかった同級生達も言うまでもなく全員敵だ。
でも、一番の敵はやはりあいつらだ。俺のことをいじめのターゲットにしてきた六人組グループ。やつらこそ本物の敵。過去の俺の仇だ。
殺すまではしない。ただ、もう二度と俺に逆らえなくなる位にはボコボコにしてやる。それで手打ちだ。もう二度と関わらない様にすればいい。ボコボコにした後に下僕にしてやろうかとも思ったが、あんな糞野郎共は俺の側に置いておきたくないし、ただ、胸糞悪くなるだけだ。
今は丁度、昼飯前の授業が終わる頃だろう。それぞれがどのクラスにいるかなんて分からないが、それは最初にボコったやつに案内させればいい。
「ふうー。行くか........」
俺は改めて一度深呼吸をして、歩みを進めた。
そして、校門を潜った瞬間だった。
ピカッ!!!!!
急に眩しい光が空に現れて、瞬間俺のことをその光が襲った。
「うおっ!!!!」
俺は驚きの声を上げると同時に力強く両目を瞑り、両腕で身を守るように身構えた。
それでも暫くは眩しいと感じる時間が続いた。
そして、ようやく目が治りゆっくりと瞼を開けて見ると、俺の目の前には森が広がっていた.........。
1
お気に入りに追加
1,324
あなたにおすすめの小説
神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。
突然足元に魔法陣が現れる。
そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―――
※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる
月風レイ
ファンタジー
あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。
周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。
そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。
それは突如現れた一枚の手紙だった。
その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。
どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。
突如、異世界の大草原に召喚される。
元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す
佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。
誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。
また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。
僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。
不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。
他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる