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思い出せば、それは苦しく、辛くて。
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(う······向き合って寝るのか···)
俯いていた顔をあげると、目が合った。
「ふふ、緊張してんの?」
「い゛やっ!?そんなことないしっ···!」
「図星ね。わかりやすすぎ。」
緊張するに決まってる。だって学校一モテる男と同じベッドで、同じ布団の中に入って寝るんだぞ。
なんか変なことしたら、またああやっていじめられる。
「そんなカチコチにならなくてもいいよ。ほら、こっちおいで?」
静かに、優しく伸ばされた腕の中に遠慮気味に入ると、くるっと腕を背中に回され、体が密着する。
(やばいっ···!近い···!)
目と鼻の先には楓の顔。
「暖かいでしょ?もう何も怖いことないから。安心して寝ていいよ。」
その言葉を全て受け止めた俺は、吸い込まれるように眠りについた。
眠りにつく直前、楓は俺の額にそっとキスをして、
「大好きだよ。もう、怖がることはないから。」
とささやくように呟いた。
辛い。
苦しい。
暖かい。
優しい。
悲しい。
死にたい。
生きたい。
生きたい······
感情が複雑に入り乱れる。
気づけば、僕は眠りから覚めようとしていた。
覚醒し、目を開こうとする。
怖い。
嫌だ。
助けて。
目を開く直前、マイナスな感情が一気に溢れ出し、自分を制御する。だめだ。開かない。
「大丈夫···奏···起きて······」
はっ、と楓の声に反応して瞼を持ち上げる。
そこには、楓の部屋の天井と、苦しそうに、心配そうに覗き込む楓の顔があった。
「え······」
『ドサッ。』
一瞬だけ、何かの記憶と今の状況が重なった。
そんな気がした。
「うう······良かった···奏···!」
「あれ······今なにが起きてる···の···?」
記憶と現世がまだ混じっている。
「······何か、夢でも見たの?」
「え、だって···さっきまで俺に話してくれてた···よね···?俺の高校入ってすぐの頃の記憶······」
「···あぁ、覚えてるんだ。じゃあ、思い出しちゃったのか···」
そうか···、と楓は呟き、椅子に腰掛けた。
「えっとね···奏は俺が話してる途中でまた過呼吸になって気絶したよ···もうあれから二週間経ってる。」
「え······でも、俺、話してくれたこと、ちょっと思い出せた···今も記憶ある···」
後から続く言葉を遮るように冷たい声が降りかかり、喉の辺りを軽く掴まれる。
「待って。これ以上話すのはだめだよ······奏が壊される。分かった?」
その瞬間、暴力を加えられた時の記憶がフラッシュバックする。
「あ゛ぁっ!?やめてっ、!たすけてっ!楓っ、!」
「奏、!」
楓に強く身体を揺すられる。
俯いていた顔をあげると、目が合った。
「ふふ、緊張してんの?」
「い゛やっ!?そんなことないしっ···!」
「図星ね。わかりやすすぎ。」
緊張するに決まってる。だって学校一モテる男と同じベッドで、同じ布団の中に入って寝るんだぞ。
なんか変なことしたら、またああやっていじめられる。
「そんなカチコチにならなくてもいいよ。ほら、こっちおいで?」
静かに、優しく伸ばされた腕の中に遠慮気味に入ると、くるっと腕を背中に回され、体が密着する。
(やばいっ···!近い···!)
目と鼻の先には楓の顔。
「暖かいでしょ?もう何も怖いことないから。安心して寝ていいよ。」
その言葉を全て受け止めた俺は、吸い込まれるように眠りについた。
眠りにつく直前、楓は俺の額にそっとキスをして、
「大好きだよ。もう、怖がることはないから。」
とささやくように呟いた。
辛い。
苦しい。
暖かい。
優しい。
悲しい。
死にたい。
生きたい。
生きたい······
感情が複雑に入り乱れる。
気づけば、僕は眠りから覚めようとしていた。
覚醒し、目を開こうとする。
怖い。
嫌だ。
助けて。
目を開く直前、マイナスな感情が一気に溢れ出し、自分を制御する。だめだ。開かない。
「大丈夫···奏···起きて······」
はっ、と楓の声に反応して瞼を持ち上げる。
そこには、楓の部屋の天井と、苦しそうに、心配そうに覗き込む楓の顔があった。
「え······」
『ドサッ。』
一瞬だけ、何かの記憶と今の状況が重なった。
そんな気がした。
「うう······良かった···奏···!」
「あれ······今なにが起きてる···の···?」
記憶と現世がまだ混じっている。
「······何か、夢でも見たの?」
「え、だって···さっきまで俺に話してくれてた···よね···?俺の高校入ってすぐの頃の記憶······」
「···あぁ、覚えてるんだ。じゃあ、思い出しちゃったのか···」
そうか···、と楓は呟き、椅子に腰掛けた。
「えっとね···奏は俺が話してる途中でまた過呼吸になって気絶したよ···もうあれから二週間経ってる。」
「え······でも、俺、話してくれたこと、ちょっと思い出せた···今も記憶ある···」
後から続く言葉を遮るように冷たい声が降りかかり、喉の辺りを軽く掴まれる。
「待って。これ以上話すのはだめだよ······奏が壊される。分かった?」
その瞬間、暴力を加えられた時の記憶がフラッシュバックする。
「あ゛ぁっ!?やめてっ、!たすけてっ!楓っ、!」
「奏、!」
楓に強く身体を揺すられる。
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