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本編

No.13 三ツ夫と天使

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―――まぁなんにせよ、少しの間は大人しくしていた方がイイ。
 
『ですね。打ち解けるには時間もかかりますし、信頼関係を築くことが大切ですからね!!』
 
どの口が言う……。
 
思わず突っ込みを入れてしまいそうになった。
本当に勇者一行なのか?と疑問符が尽きない。
 
―――ところでよぉ。あの黒いヤツは男なのか?女なのか?
 
三ツ夫さんが唐突に聞く。
『勇者様をお慕いする雰囲気からして男性だとは思いますが、確認のしようがありませんね。なぜ そのような事を?』
 
―――いや、女なら成長を待つとして、男なら代わりになるだろ?
 
『!?』
天使が驚く。
 
え?代わりって何?
 
私も内心 驚いてる。
『そ、それは さすがに難しいかと……』
 
―――まぁ簡単ではないだろうが、俺の魔法と あいつの剣が合わされば最強だろ?
 
『で、ですが』
言い淀む天使。
 
―――すぐにとは言ってないぜ?おいおいな……。
 
『は、はい』
不穏な空気が流れる。
三ツ夫さんと天使は一枚岩ではないのかも知れない。
 
―――まぁでも俺としては、あいつが女の方がイイけどな。
 
『え?そうなんですか?』
 
―――男にしとおくには惜しいほど可愛い顔をしてると思わないか?
 
ゾクッ
 
三ツ夫さんの言葉に鳥肌が立った。
この嫌悪感、恐怖。
 
前にも感じた事があったような……。
 
―――起きたのか?
 
私の微かな動きに気づいたのか三ツ夫さんが声をかけてきた。
「あ、はい。ちょっと寒くて……」
『暖房がかかっているとはいえ、まだまだ寒いですからね。良ければ勇者様たちと合流して防寒具など お買い求めになられては いかがでしょうか?』
「あ、ああ。イイです、ね」
『では、三ツ夫さま。ワタクシ、ユイ様を勇者様たちの所へ送り届けてまいります』
 
―――ああ。俺は ここで寝てる。
 
『はい。ではすぐ戻りますので』
 
―――いや。ゆっくりしてこい。
 
『はい』
 
 
 
 
 
 
 
『ところでユイ様は なぜ勇者さまと ご一緒に?』
「あ、それは さっき元樹お兄ちゃんが……」
『それは存じあげております。ワタクシは役割のお話をさせていただいているのです』
「役割?」
『はい。この世界には どんな方にも生きている役割があります。勇者になる者、モンスターになる者、ただ殺されてゆく者……』
 
え?やだ、なにその役割。
 
『そんな中でも勇者様一行に付き従う者には それ相応の役割がございます。失礼ながらユイ様は何かのお役に立つとは到底 思えず……』
「で、ですよねぇ。私もそれは思います」
『では何か使命でも?』
「そ、それは私の方が知りたいです!!なんで こんなことになっちゃってるのか……困ってます」
『ふむふむ』
値踏みするように天使が不躾な視線を寄越す。
 
な、なんだか嫌な感じ。
 
 
『バグですかね』
「はっ!?」
『あ、いや。ワタクシもユイ様のことは存じあげないので きっと何かしらのバグが発生したのかと思われますね』
 
バ、バグだとーーーー!!
 
『まぁ頃合いを見て離れてみると以外と あっさり解放されると思いますよ?』
「え?そうなんですか!?」
『ユイ様に そんな大層な役割があるとは思えませんし』
「で、ですよね~」
なんだかヒドイ言われようだけど希望が出てきたので気にしないことにした。
『あの角を曲がると勇者様たちがいらっしゃいますね』
「え?分かるんですか?」
『ええ。ワタクシたち天使は微量の電波のようなものを発信しておりまして、それを関知して交信しております』
「あ、じゃあ。最後の1人がどこにいるかも分かるんですか?」
『ええ。ただかなり遠いところに いらっしゃいますね』
「え!?」
『でも安心してください。近々 ご自分の住まいに戻ってらっしゃるみたいです』
 
……住まい。
 
「天使さんたちは万能なんですね」
『いえいえ!!ワタクシたちは勇者様たちあってのワタクシたちですので』
私の言葉に気を良くしたのかニコニコとしている。
『微力ながらワタクシもユイさまが ちゃんと元の生活に戻れるように お手伝いさせていただきますね!!』
「ありがとうございます!!」
 
生理的に受け付けないとか、気持ち悪いとか言って ごめんなさい!!
 
明るい未来が見えてきてホッとしてると真紀子さんたちが見えてきた。
「あ、いましたね!!」
満面の笑みで天使を振り返る。
『ただ……』
 
え?
 
『先ほど聞いた内容だけは誰にも言わないようにしてくださいね?でないと命の保証は いたしかねます』
無表情で告げる天使がいた。
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