21 / 30
幼児期
遙(仮)脱出する。No.5
しおりを挟む
「…………」
タクシーというものに乗り込み、目的地に着く少し前にワタクシの話が終わりました。
始めこそバカにしたように聞いていたフライツ様も今はワタクシの横顔を食い入るように見つめています。
信じろという方が難しいですわね。
むしろ、あの親たちが おかしいのですわ。
コンコン。
沈黙を破るように窓ガラスが叩かれる。
「金はらったから早く降りろ」
そこにはフライツさまを だいぶ年上にしたような方が立っていました。
「俺は お前の召し使いじゃねぇぞ?しかもなに?女なんか連れてきて。生意気にデートかよ」
「ちがうし」
同じ遺伝子を持つ二人が面倒くさそうに話し合っています。
それを横目に見ながら出されたお茶を飲みます。
「あら、美味しい……」
ほんのりフルーティな甘さの優しい味。
「俺ブレンドだからな」
ワタクシの言葉に気を良くしたのかパソコンと呼ばれるものの前に座りだした。
「本社に入り込む」
「まじで?」
「あそこの客なら、それが一番 てっとり早い」
カタカタカタと慣れた手つきで操作する姿をフライツさまと二人で見つめます。
「……次はないって言われてなかったっけ?」
「毎回な」
「……」
「お前だって、それ見越して俺んとこ来たんだろ?」
「まぁね」
「と、出てきた」
二人が食い入るように画面を見ています。
ワタクシも見た方が良いのでしょうか?
少し腰を浮かしたところで二人がワタクシを見ていることに気づきました。
「「まじか……」」
パソコンの画面には黒地に金糸で書かれたような神々しい文字が並んでいました。
竜王崎グループ。
世界各地に支店をもち、経済を回している大企業の一つ。
その華々しい経歴や実績などが細やかに書かれています。
そして画面が切り替わり、その影の支配者として まことしやかに噂されている龍巻家の屋敷が写し出されました。
竜、龍、と その名が刻まれているには訳があり、遠い昔 先祖が龍を倒し配下に置いたことからだと記されています。
その恩恵は本家の長子に色濃く出、たぐいまれなる能力を発揮するとの噂も。
「が、しょせん噂は噂。どこまでホントで どこまで……」
「ほぼホントなんじゃない?」
「おいおい。いつも竜が出てきてる時点で作り話でしょ?て言ってる お前が どうしたんだよ」
フライツ様の言葉に苦笑する妙齢のフライツ様。
「まぁ色々思い当たることがあったからね」
「ふぅん」
「で、なにか分かったの?」
「そのチビと関係あるか分からんが、その龍巻家で今日 後継者が決まるらしい」
「「え!?」」
思わずワタクシも声を出してしまいました。
「後継者が決まるって おかしくね?代々長子に決まるんでしょ?」
「それは家督の話だ。今日決まるのは龍巻家 当主」
「違いがよく分からないけど、ようは話し合いで子供を放っといたら迷子が一匹出たってことだね」
「迷子ではありませんわ!!ワタクシは本当に!!」
「分かってるよ。元服の義に参加してたんでしょ?」
え!?
「子供に試練を与えて素質を問う、みたいな行事が毎年ひらかれてるね。たぶん、その時に何かトラブルがあったんじゃないかな?現に何年か前にも誘拐事件が その時に起きてる」
「そうなの?」
「ああ。まぁしかし、でもビックリだな。あの龍巻の人間に こんな のっぺりした顔が生まれるなんてな」
ニヤッと笑ってワタクシを見る。
むっ。
「これはこれで愛嬌があって可愛らしいのですわ!!」
「……自分で言う?」
フライツ様が呆れたように おっしゃいました。
「さて、身元も分かったし、お嬢様を送っていきますかな」
妙齢のフライツ様が立ち上がる。
「え?修斗が行くの!?」
フライツ様が初めて大きな声を出されました。
「こんな面白いこと、人に任せられるかよ」
妙齢のフライツ様こと修斗さまが それはそれは黒い笑顔をされました。
タクシーというものに乗り込み、目的地に着く少し前にワタクシの話が終わりました。
始めこそバカにしたように聞いていたフライツ様も今はワタクシの横顔を食い入るように見つめています。
信じろという方が難しいですわね。
むしろ、あの親たちが おかしいのですわ。
コンコン。
沈黙を破るように窓ガラスが叩かれる。
「金はらったから早く降りろ」
そこにはフライツさまを だいぶ年上にしたような方が立っていました。
「俺は お前の召し使いじゃねぇぞ?しかもなに?女なんか連れてきて。生意気にデートかよ」
「ちがうし」
同じ遺伝子を持つ二人が面倒くさそうに話し合っています。
それを横目に見ながら出されたお茶を飲みます。
「あら、美味しい……」
ほんのりフルーティな甘さの優しい味。
「俺ブレンドだからな」
ワタクシの言葉に気を良くしたのかパソコンと呼ばれるものの前に座りだした。
「本社に入り込む」
「まじで?」
「あそこの客なら、それが一番 てっとり早い」
カタカタカタと慣れた手つきで操作する姿をフライツさまと二人で見つめます。
「……次はないって言われてなかったっけ?」
「毎回な」
「……」
「お前だって、それ見越して俺んとこ来たんだろ?」
「まぁね」
「と、出てきた」
二人が食い入るように画面を見ています。
ワタクシも見た方が良いのでしょうか?
少し腰を浮かしたところで二人がワタクシを見ていることに気づきました。
「「まじか……」」
パソコンの画面には黒地に金糸で書かれたような神々しい文字が並んでいました。
竜王崎グループ。
世界各地に支店をもち、経済を回している大企業の一つ。
その華々しい経歴や実績などが細やかに書かれています。
そして画面が切り替わり、その影の支配者として まことしやかに噂されている龍巻家の屋敷が写し出されました。
竜、龍、と その名が刻まれているには訳があり、遠い昔 先祖が龍を倒し配下に置いたことからだと記されています。
その恩恵は本家の長子に色濃く出、たぐいまれなる能力を発揮するとの噂も。
「が、しょせん噂は噂。どこまでホントで どこまで……」
「ほぼホントなんじゃない?」
「おいおい。いつも竜が出てきてる時点で作り話でしょ?て言ってる お前が どうしたんだよ」
フライツ様の言葉に苦笑する妙齢のフライツ様。
「まぁ色々思い当たることがあったからね」
「ふぅん」
「で、なにか分かったの?」
「そのチビと関係あるか分からんが、その龍巻家で今日 後継者が決まるらしい」
「「え!?」」
思わずワタクシも声を出してしまいました。
「後継者が決まるって おかしくね?代々長子に決まるんでしょ?」
「それは家督の話だ。今日決まるのは龍巻家 当主」
「違いがよく分からないけど、ようは話し合いで子供を放っといたら迷子が一匹出たってことだね」
「迷子ではありませんわ!!ワタクシは本当に!!」
「分かってるよ。元服の義に参加してたんでしょ?」
え!?
「子供に試練を与えて素質を問う、みたいな行事が毎年ひらかれてるね。たぶん、その時に何かトラブルがあったんじゃないかな?現に何年か前にも誘拐事件が その時に起きてる」
「そうなの?」
「ああ。まぁしかし、でもビックリだな。あの龍巻の人間に こんな のっぺりした顔が生まれるなんてな」
ニヤッと笑ってワタクシを見る。
むっ。
「これはこれで愛嬌があって可愛らしいのですわ!!」
「……自分で言う?」
フライツ様が呆れたように おっしゃいました。
「さて、身元も分かったし、お嬢様を送っていきますかな」
妙齢のフライツ様が立ち上がる。
「え?修斗が行くの!?」
フライツ様が初めて大きな声を出されました。
「こんな面白いこと、人に任せられるかよ」
妙齢のフライツ様こと修斗さまが それはそれは黒い笑顔をされました。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる