この恋に殉ずる

冷暖房完備

文字の大きさ
上 下
65 / 76
お仕事ちゅ

No.10 10年愛

しおりを挟む
『よっ』
 
 
 
 
別れた彼氏への第一声が『よっ』て~(泣)
 
「どうした?」
『あ~うん。プロジェクトが成功した』
「おお、良かったな。おめでとう」
『…ありがとう。あんたに そう言ってもらえて良かったわ』
「俺が言えた義理じゃねぇけどな」
『そうだね』
 
き、きわどい!!きわどいです~(泣)
 
『…それだけでは ないんだけどね』
「んん?」
『この前さ……取り乱して…ごめん』
 
!?
 
「いや、俺も言い方がキツかった。悪かったな」
『……なんかさ、アタシ達の10年が あんな終り方なのも どうなんだ!?て思ってね』
「…うん」
『楽しかったよ。大事にしてもらってたなって今さらながらに思ってます』
その言葉に新垣さんがチラリと私を見た。
「…俺も、楽しかったよ」
『ふふ。ありがとう』
 
……並木さんの声が震えてる、と思うのは気のせいじゃない。
 
『次に出会う人には、あんまりワガママ言わないことにする!!』
やけに元気のいい並木さんの声。
「あ~どうかな。好きな女のワガママを嫌いな男は いないだろ」
『…人によるでしょ』
指先が震えを隠すように握る。
 
聞こえてこなきゃこないで不安だろうけど、こんなに鮮明に聞こえなくてもイイのに……。
 
不安すぎて新垣さんの顔が見れない。
『ねぇ』
「ん?」
『…友達として、また会える?』
 
!!!!!!
 
『別れちゃったけどさ、たまには飲みに行こうよ』
 
人のものを取った報いだろうか……。
 
略奪愛とかで世間を騒がせた芸能人が数年後に寝とられるニュースを見たことがあった。
 
因果応報……。
 
泣きそうになりながら白く握りしめた手を見つめる。
 
 
 
ふいに その手に新垣さんの手が重なる。
「友達には ならない。俺は そ~ゆ~のは できないタイプだ。…だから、お前との電話も これが最後だ」
『そっかぁ。残念』
あっけらかんと呟く声が聞こえた。
『でも道端で ばったり会ったときは会釈くらいしてよ?』
「そのくらいは、な」
『…んじゃ切るね。長いこと付き合ってくれて ありがとう。幸せになってね』
「お前も…ちえも幸せになれよ」
『うん。さよなら、征二』
「ああ。さよなら」
 
 
 
 
 
 
 
「なぁんで お前が泣いてんのかねぇ」
何枚目かのティッシュを差し出しながら新垣さんが笑う。
「あいつが可哀想とか思ってんのか?」
 
そんなこと思ってない!!
 
ふるふると首をふる。
「なら俺と別れたいと思ってるのか?」
「そんなこと思ってないよ!!」
「んじゃなんで泣いてんの?」
「わか、わかんないけど、涙、とまんないの……」
 
この涙は、なんなんだろう。
 
答えを探しても見つからない。
でも止まることなく流れてゆく。
 
「まぁイイけどな」
そっと私を抱き締めて背中をさする。
 
 
 
 
 
 
理由の分からない涙は、しばらく止まることは なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。

藍沢咲良
恋愛
同じ中学校だった澄麗、英、碧、梨愛はあることがきっかけで再会し、定期的に集まって近況報告をしている。 集まるときには常にドリンクバーがある。飲み物とつまむ物さえあれば、私達は無限に語り合える。 器用に見えて器用じゃない、仕事や恋愛に人付き合いに苦労する私達。 転んでも擦りむいても前を向いて歩けるのは、この時間があるから。 〜main cast〜 ・如月 澄麗(Kisaragi Sumire) 表紙右から二番目 age.26 ・山吹 英(Yamabuki Hana) 表紙左から二番目 age.26 ・葉月 碧(Haduki Midori) 表紙一番右 age.26 ・早乙女 梨愛(Saotome Ria) 表紙一番左 age.26 ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載しています。

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

処理中です...