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第3章
第58話 境界線
しおりを挟む琉緒にはゼロについて秘密にしていたということをすっかり忘れていた2人。
美癒ならまだしもジンがこのような過ちをするなんで意外だった。
「ゼロは僕の知り合い、だから気にしないでいいよ。それと”担当もあと少し”っていうのは2人の今後のことなんだけど、もう少ししたら2人ともこっち側(空の世界)で任務が始まるからね。」
ゼロの件で慌てた美癒だったが、今の任務に終わりが見えたことにより瞳が輝き笑顔になる。
「新人は今の任務が1年以上続くはずだ。普通じゃ有り得ない早さでの異動だな。」
琉緒はゼロの件に触れなかった。
後者の話の方が気になったからだ。
「この大出世は、美癒ちゃんに感謝するんだね。美癒ちゃんは魂を操る練習を繰り返して欲しい。琉緒は・・・美癒ちゃんのお世話役だよ。」
「は?それは俺の無駄遣いじゃないのか?」
琉緒が呆れた顔で言い返す。
「うわーん!!今の任務にやっと終わりが見えたよぉ~!
それに琉緒も一緒だなんてすごく嬉しい!!ジン様、ありがとうございます!!!」
「うわっお前ガチ泣きじゃねーか。」
「琉緒には私の気持ちが分かんないよ。」
美癒は琉緒に近付き抱き着く。
「・・・お前なぁ。俺に鼻水をなしりつけてるだろ。」
「えへっ。」
「きったねぇー。」
そんな美癒と琉緒を見ながら微笑むジン。
「今日は時間をあげるから、ここで好きに魂達と交流して良いよ。
このゾーンは、人間に生まれる魂ばかりだ。
生まれるまで期間がかかる。
・・・向こうの川を越えると、人間以外の生き物に生まれる魂達がいる。
人間以外の生き物は、すぐ生まれるから回転が早い。
2人はあまり関わってくる事はないだろうから、川の向こうには行かないでね。
それとあくまで、交流だけだからね。
ーーーそれじゃあ僕は忙しいからまた今度。」
そう言ってジンは去っていった。
「自由にしていいだなんて!遊びに来ただけみたいで、ワクワクするね!」
「そうかー?急に交流してもいいって言われてもなぁ。」
全く乗り気で無い琉緒を睨み、歩き出す美癒。
琉緒はその後ろに続いて歩きはじめた。
「なによ、ついてこないで。」
「お前は何するか分からねーからな。お世話役させられるくらいだから見張っとくわ。」
意地悪を言う琉緒を、美癒は睨みつける。
だがその睨んだ顔は琉緒にとっては全く怖くない、むしろ愛らしい顔だった。
「今日は”交流”が目的なのー!お世話役なんてしてる場合じゃないでしょ。」
「いや、俺は交流が苦手だから。」
「・・・ぷっ。」
開き直る琉緒を見て噴き出す。
「そういえば、琉緒と昔の美癒って何で仲良くなったの?私の記憶の中になくってさ。」
「俺もあんまり覚えてない。」
「何それ?本当に覚えてないの?」
「あぁ。俺は1人でいるのが好きだったんだけどな。
中学になってすぐにある【この世】への遠足を境に、美癒がそばにいるようになった。」
「え!?【この世】に行った事あるの!?初耳なんだけど。」
「みんなある。普通はこれが【この世】へ行く最初で最後の日だ。」
「なーんだ。初めてだと思って、色々案内してあげたかったのに。」
「でも全然覚えてないんだよ。【あの世】と【この世】を行き来すると記憶は混乱しやすいらしいからな。」
「確かに、私も美癒になって暫くは菜都だった頃の事も忘れてた。」
「そーいうことだ。さ、この話はこれでおしまい。俺と美癒が交流してたら意味ないだろ。」
「ははっ、そうだね。そういえば琉緒が最近担当してここに来た魂もいるんじゃないの?」
辺りを見渡す。
「まあまあいるな。」
最近はゴ●ブリになる予定である どす黒い色をした魂のとしか関わってなかったため、多彩な色の魂に興奮する。
「あの魂、紅藤色で綺麗。菜都と、弟の大翔と同じ色なの。」
「へぇ~。あまり見かけない色だな。」
「うん、大好きな色。ちょっと話しかけちゃおー。」
美癒は紅藤色の魂に向かって駆け出した。
もちろん琉緒もその後を追う。
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