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102 孤児院の援助をする
しおりを挟むみなさんおはようございます。ヒナタです。
昨日のサーシャとコハクのサプライズによって年甲斐もなく泣いてしまいました。
おじさんが泣いている絵面じゃなくてよかったよ。
まだ目が赤いようですが、今日は孤児院のために私の手料理を振る舞おうと思います。
「コハク、おはよう」
「キュイ……」
コハクはまだ眠たそうにしています。
昨日一日中、人間の姿になっていたからか疲れているのかな。
私はプレゼントのイヤリングを装着して、キッチンに向かいます。
このイヤリングはとても素敵なデザインです。
私のヒナタに合わせて太陽をモチーフにしているイヤリングとは……。
2人の愛が伝わるね。
たくさん悩んで買ってきてくれたのかな。
どんな顔で買ってきてくれたのかな。
私のことを思って買ってきてくれたと思うと嬉しくてたまらない。
前世でイヤリングなんて付けたことないけど違和感ないよね?
うん、可愛い。
「とりあえず朝食かな……」
私は朝食の準備をしてから孤児院のための料理を作ることにします。
コハクは定位置である私の頭の上で寝ています。
バランスを取るのが難しいけど、だんだん慣れてきたね。
朝食を作り終えた頃に、シャルが起きてくる。
「おはようございます」
「おはよう」
シャルはいつも通り、洗面所で顔を洗ってから椅子に座る。
「ヒナタさん、私も孤児院の子のためのお料理を手伝ってもいいですか?」
シャルからのまさかの提案だ。
今まで料理は私がやってきたけど、シャルもやりたいみたいだ。
花嫁修行としてもいいかもね。
シャルが料理をしているところなんて見たことないけど大丈夫かな。
「いいけど、シャルは料理はできる?」
「大丈夫ですよ! ヒナタさんがいない時は私が担当していましたから!」
それは知らなかった。
だとしたら少し楽しみだ。
「そうだったんだ。なら一緒にやろうか」
「はい! お願いします!」
カレンが起きてこないけど、急いでもいないのでシャルと2人で料理を作り始める。
「……シャル。その包丁の使い方は危ないよ」
「えっ……」
期待を見事に裏切ってくれたシャル。
剣じゃないんだから食材を叩っ斬らないで。
それに左手は猫の手にしないと左手の指を切っちゃうよ。
私はお手本を見せてシャルも実践する。
なんとかできるようになって、私が指示をしながらシャルが作る。
「これでいいんでしょうか……」
「うん。上手だよ」
コロッケを初めて作るからか、手つきがおぼつかない。
恐る恐るジャガイモを潰して握っている。
揚げる時なんか、油が跳ねちゃって火傷しているし。
でも可愛いから許す。可愛いは正義だ。
コロッケを30個くらい作り終えて、次はハンバーグを作ってみる。
容量はコロッケと似ているから大丈夫だろう。
合挽き肉は私が事前に用意していたものを使う。
「捏ねるの楽しいですね」
どうやらシャルは捏ねるのにハマったようだ。
感触がいいのかな。
コロッケと同様にハンバーグも30個作った。
これなら十分かな?
「ママ、お腹すいた」
いつの間にか人間の姿になっていたコハクが私に声を掛ける。
そういえばコハクにまだ魔力を与えていなかった。
朝とお昼は魔力、夜はオーク肉がコハクの食事のルーティーンだ。
「なんかいい匂いがするな」
コロッケとハンバーグの匂いに釣られてカレンが起きてくる。
今日はよく寝ていたみたいだ。
「早くご飯食べて。孤児院に行くからさ」
「はーい」
カレンが朝食を食べ終わり、今度はコハクも連れて孤児院に行く。
「ママ、孤児院には子供が多いの?」
「そうだよ。コハクよりも小さい子もいるから遊んであげてね」
「分かった!」
コハクは普段私たちとしか遊ばないから、自分と同い年くらいの子と遊ぶのは新鮮だろう。
年齢は孤児院の子の方が上だけど。
コハクはまだ生後数週間だけど、言葉も話せるから驚きだよね。
どうやって言葉を覚えたのか不思議だけど、親の白竜も話せていたからね。
私たちの会話を聞いて覚えたんだと思うけどすごすぎる。我が子は天才かもしれない。
「院長先生、おはようございます」
「あら、昨日の冒険者の方達ですか。おはようございます」
私たちは孤児院にやってきた。
始めに院長先生のクリシスに挨拶をしてから、調理場に案内される。
そこで一人用のお皿に、作ってきたコロッケとハンバーグを乗せる。
付け合わせにサラダにトマトをトッピングして完成だ。
「みなさん、冒険者の方がお料理を振る舞ってくれました。感謝して食べるようにしてください」
「「「お姉ちゃん達ありがとう!」」」
子供が全員入れる集会場のような場所で、子供達は笑顔で食べている。
美味しそうに食べている姿を見ると作ってきた甲斐もあるもんだ。
私はその間に孤児院の荒れていた庭の草刈りを行う。
「こんなことまで……。ヒナタさんには感謝の言葉もありません」
「いえ、これくらいのことは」
クリシスから感謝されるがこれくらいのことしかできないのが辛い。
子供達のために一生懸命に頑張っているクリシスに比べたら私なんて大したことはしていない。
私が集会場に戻ると、ご飯を食べ終わったのか子供達がシャル達と会話をしている。
「お姉ちゃんは冒険者なの?」
「そうだよ。いつも森に行って魔物と戦っているんだ」
「かっこいいね! 僕も大きくなったら冒険者になりたいんだ!」
はじめに見た時よりも子供達が生き生きしているように見える。
やっぱり孤児院に来てよかったね。
シャルも子供と触れ合えて楽しそうだ。
シャルは将来いいお母さんになるよ。
「あれ? コハクはどこ行ったの?」
そういえばコハクの姿が見えない。
辺りを見渡すがどこにもいない。
「コハクなら子供達と外で遊んでいるよ」
そういうことか。
なら私もコハクのところに行こうかな。
コハクのことが気になるし。
「ほら、こっちだよー!」
「待ってよー! コハクお姉ちゃん!」
私が外に出ると、コハクと4人の子供達が鬼ごっこをしているようだ。
鬼ごっこ懐かしいな。小学生以来やったことないよ。
それにしてもコハクも楽しそうだな。
お姉ちゃんなんて呼ばれて嬉しそうだ。
カメラがあったらぜひ撮影したい。
それにしてもコハクは竜だからか身体能力が高い。
孤児院の子供達よりも足が早いよ。少し手加減してあげて。
息を切らして頑張っているよ。かわいそう。
しばらく遊んで子供達も疲れたのか、木陰で休み始めた。
コハクも一緒に木陰で涼んでいる。
「コハク楽しかった?」
「うん!」
コハクが楽しんでくれたならよかったよ。
やっぱり子供同士で遊ぶのも大切だよね。
「ヒナタさん本日は本当にありがとうございます」
「いえいえ、私たちも楽しかったので」
私はお礼を言ってきたクリシスに頭を下げる。
コハクも楽しかったみたいだからまた来よう。
私も子供達の笑顔が見られて幸せな気持ちになれた。
これが母性本能なのか。
最近は前世が男だと忘れそうにもなるよ。
私がコハクの手を繋いで帰ろうとすると、コハクがクリシスを不思議そうな顔で見ている。
どうかしたのかな?
「コハクどうしたの?」
「いや、あの院長先生……」
何か気になるのかな?
でもすぐに私に抱きついてくる。
どうでもよくなったのかな。
コハクは首を傾げながら考え事をしているようだ。
何か思い出したらコハクから話してくるかな?
「シャルそろそろ帰ろうか」
「あ、そうですね」
「えぇー、お姉ちゃん達もう帰っちゃうのー」
「またすぐ来るからね」
駄々をこねる子供をあやすシャル。
またすぐ来るから大丈夫だよ。
私たちは孤児院を出てマイホームに帰る。
食事の提供で子供達の笑顔は見られたけど、あくまで応急処置に過ぎない。
今後のことを考えると恒久対策もしたほうがいいのは間違いない。
しかしどうすれば……。
「ねぇ、ママ。少し気になったことがあるんだけど」
「うん? どうしたの?」
あの時にコハクが考えていたことかな?
どうやら思い出したようだ。
「あの院長先生が付けていたイヤリングすごい高価なものだよ」
「え?」
そういえば昨日行った時はイヤリングを付けていなかったな。
でも今日は耳にイヤリングを付けていたような……。
髪で隠れていたからよく見ていないけど、思い出してみると確かに付けていた。
「なんで高価なものだと思うの?」
「昨日サーシャお姉ちゃんと行ったお店にあったやつだもん」
「え、本当に?」
「うん。コハクが綺麗だねってサーシャお姉ちゃんに言ったら高価なものだから買えないって言っていたもん」
それが本当なら、なぜクリシスはそんな高価なものが買えるんだ。
いや、一つしかないか。
あのいい人そうだったクリシスは補助金を横領している可能性がある。
それならフィリップに補助金の上乗せを断った理由にも説明がつく。
明日フィリップのところに行って、どのくらいの補助金が提供されているか確認した方がいいかもしれない。
予想外の展開で正直戸惑っているが、明日になれば分かるだろう。
困ったもんだ。
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