上 下
96 / 139

96 完了報告

しおりを挟む

「セレナさん、依頼の完了報告に来たよ」
「ヒナタさんお疲れ様です。あれ? カレンさんとシャーロットさんは?」
「シャルが依頼で気を失っちゃったから、家で寝かせているよ」
「え、オーク討伐でしたよね?」
「それが、オークジェネラルがいてね……」
「え!? 本当ですか!?」

 セレナがイスから立ち上がり声をあげる。
 そもそも今回の依頼は新人冒険者からの報告でオーク5体を討伐するというものだった。
 それなのにオークは20体いて、さらにはオークジェネラルもいた。
 こういう依頼は本当に困るよね。
 私たちじゃなかったら、死人が出ているよ。

「よくご無事で……。オークジェネラルはどうなりましたか?」
「カレンとシャルが討伐したよ」
「それはよかったです。追加で報酬をお渡しします」

 私はオークの魔石とオークジェネラルの死体を渡す。
 オークの死体は、コハク用に持ち帰るために魔石のみ渡した。
 でもセレナから分けて欲しいと言われたので、半分の10体を引き渡した。
 私は何もしていないので、カレンとシャルの報酬を現金でもらう。

「そういえば、ヒナタさんはクロト迷宮が攻略されたことを聞きました?」

 クロト迷宮?
 そういえば、前にソティラス王女が言っていた迷宮だな。
 噂で攻略されたっていうことは聞いたけど。

「結構前に噂で聞いたけど……」
「そうなんですね。なんでもSランク冒険者の方が踏破したみたいですよ。他国なので情報が回るのも時間がかかりましたが、3ヶ月くらい前に攻略したみたいです」

 ということはソティラス王女を助けた時期と同じだな。
 さすが王女。情報が早いもんだ。

「すごいですよね。あの迷宮は攻略不可だって言われていたのに」

 ソティラス王女もそんなことを言っていたな。
 事実だとしたら私よりも強い冒険者なのは間違いない。

「その冒険者の名前って分かるんですか?」
「えっと、確か……ケータと言う名前らしいです」
「!?」

 ケータって王都で会った冒険者だよね。
 そんなに強い人だったんだ。
 そういえば、別れ際にパレルソン帝国に行くって言っていたけど、迷宮攻略に行っていたのか。
 ソティラス王女が言っていた時に聞いたことのある国だと思っていたけど、ケータから聞いていたのか。
 あの時仲良くしていてよかった。絶対敵対したくない人だね。

「ありがとう。また何か情報があったら教えてね」
「もちろんです!」

 私は夕食の準備もあるから急いでマイホームに帰った。

「シャルの調子はどう?」
「まだ目は覚めないな……」

 マイホームに着いた私は、カレンに今日の報酬を渡して夕食の準備をする。
 コハクも頑張ったので、大好物のオークステーキを焼く。

「ママ、ご飯まだー?」

 コハクもお腹が空いているようなので、急いで4人分焼き終える。

「はい、できたよ」
「やった! いただきまーす!」

 最初は手でかぶりついていたコハクも、今ではナイフとフォークを器用に使って食べている。コハクも成長したね。
 本当は聞き分けのいい子のはずだから、教えてあげればちゃんと吸収していく。
 今後の成長が楽しみだね。

 3人で夕食を食べていると、ステーキの匂いに釣られたのかシャルが2階から降りてきた。

「シャル!」

 カレンが一番にシャルに駆け寄る。
 私とコハクも次いでシャルの元に行く。

「ごめんね。いつも迷惑をかけて……」

 シャルが涙を流しながらカレンに言う。
 カレンはシャルを抱きしめながら慰めた。

「そんなこと言うなよ……」

 この2人は私と出会う前から、ずっと一緒に行動してきた。
 私の知らない2人の過去がある。
 どんな過去があるかは分からないし、聞くこともないだろう。
 大切なのは過去ではなく今だ。
 過去の経験を乗り越えて今のカレン達がいる。
 どんな楽しいことがあったのか、どんな辛いことがあったのか。
 私にはこの2人ほどの友情に入り込む隙間はないだろう。
 でも少しでも一緒にいて近づきたいとは思う。

「シャルが後方にいるからあたしも安心して戦っていられるんだ。これからもよろしくな」
「……うん、ありがとうねカレン」

 しばらくしてシャルも泣き止み、今度こそ4人で夕食を食べた。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~

神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!! 皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました! ありがとうございます! VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。 山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・? それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい! 毎週土曜日更新(偶に休み)

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。 ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。 『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』 『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』 そんな感じ。 『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。 隔週日曜日に更新予定。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...