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91 コハクと森で遊ぶ
しおりを挟むコハクはサーシャとのボール遊びが気に入ったのか、1人でボールと遊ぶようになりました。
どうやらボールが友達みたいです。
私としては1人で遊んでくれていて助かります。
でも家の中なので、どうしてもボールを遠くに飛ばせないことがストレスになっていて、家の壁にボールをぶつけるようになりました。
注意してもやめてくれません。凹んだ壁を直すのも面倒だから勘弁してほしい。
なので、ボールを禁止して私が土魔法でフリスビーを作りました。
これでも一緒に遊べるからね。
完全に犬扱いだけど……。
最初は楽しそうに飛ばしたフリスビーに食いついていたけど、やはり家の中なのでそんなに遠くに飛ばせません。
簡単に追いついてしまうからコハクもすぐに飽きてしまいました。
そのせいかコハクが私の服に噛み付くようになりました。
コハクが本当は犬なんじゃないかと疑い始めています。
やっぱり竜だからこの狭い家にいるのもストレスなのかな。
でも、外に連れ出すのもな。
いや、待てよ。冷静に考えてみれば、フィリップにも絶対に外に出すなとは言われていない。
そもそも外に出さないのは住民にバレないようにするためだ。
ってことはバレなきゃいいんじゃね?
あの時は外出を控えるようにとしか言われていない。
要は解釈の問題だ。
なんで今まで気が付かなかったんだ。
「コハク。一緒に森に行かない?」
「キュッキュッ!」
コハクは私の服を噛むのをやめて喜ぶ。
コハクって言葉を理解しているからすごいよね。
まだ生まれて2週間くらいだよ。
やっぱり私の子供だから優秀なんだな。うん。
早速私はコハクを抱えたまま隠密を発動させて、飛行魔法で森に向かう。
依頼を受けている冒険者に遭遇しないように慎重に森の奥に行く。
コハクも私の胸で楽しそうにしている。
森の更地になっている場所に到着してコハクを降ろす。
「キュッキュッ!」
コハクが颯爽と走り出す。
クルクル回りながら走り回っている。
私の周りも回っている。
すごい嬉しそうだ。連れてきてよかった。
「ほら、コハクいくよ!」
私はフリスビーを遠くに飛ばした。
コハクは楽しそうに追いかけて口でキャッチする。
こうしていると犬にしか見えない。
その後もフリスビーとかボールを投げて遊ぶ。
たまにコハクが飛んでキャッチする。
最近はコハクもそれなりに飛べるようになってきた。
最初は1分くらいの飛行だったが、成長した今では10分は飛べる。
少しではあるが翼も大きくなってきて、体も成長してきている。
頭に乗ってくると首が痛くなるけどまだ耐えられる重さだ。
少し休憩していると、ゴブリン5匹が近くに来ていた。
完全に油断していた。気配探知も使っていなかったから結構近くまで来ている。
でもゴブリン程度なら簡単だ。
いつも通り岩石弾を使おうとすると……。
「キュー!」
突然コハクがゴブリンに向かって飛んで行った。
「ちょっとコハク!」
コハクが怪我をするかもと思い、止めようとするがコハクは止まらない。
私の心配も無視してコハクはゴブリンに噛み付いた。
「ギャオオォォォ!」
あれ? 意外とコハクって強いのか?
いつも犬扱いしていたから忘れていたけどコハクは竜だもんね。
本能で獲物を捕らえにいった感じかな。
これなら安心して見守れそう。
すぐにコハクがゴブリンを討伐してしまった。
討伐を終えたコハクが、口にゴブリンの血をベッタリと付けて私に近づいてくる。
私の足元に座り込み、まるで褒めてって言っている様な顔をしている。
「うん、よく頑張ったね」
頭を撫でてあげるとコハクは嬉しかったのか、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
親としては少し心配だけど、コハクだって魔物を倒したいよね。
危険なことをしない限り、親は見守るべきだ。
あ、でもお口は拭こうね。ゴブリンの血で汚いから。
「よし! コハク、魔物を倒しに行こうか!」
「キュイ!」
コハクのためにも魔物を探しに行くことにする。
それからコハクと森を進んでいく。
私も気配探知スキルで魔物の反応を探る。
「コハクあっちに行くよ!」
「キュイ!」
気配探知に2つ反応があった。
反応があるところに進んでいくと、オークがいた。
コハクでもオークは大丈夫かな。心配だ。
「キュイー!」
コハクは勝手にオークに飛びかかる。
オークとコハクじゃ、体格差に差がありすぎる。
熊にタヌキが襲いかかるみたいな感じになっている。
少し心配だから私も加勢しようとするが、コハクが優勢みたいだ。
「キュイ!」
コハクはオークのうなじを食いちぎる。
やっぱりコハクは頭がいいな。
教えてもいないのに魔物がどこを損傷すれば討伐できるか分かっている。本能なのかな。
あっという間にオークの討伐が終わる。
そしてコハクはオークをむしゃむしゃと食べている。
今食べたら夕食が食べられなくなるよ。
私はコハクに近づいて、もう1体のオークを無限収納にしまう。
「キュキュー!」
コハクが怒っている。
そんなに頭を叩かないで。
「帰ってから今日の夕飯にするから我慢してね」
「キュウ……」
コハクは納得したのか、私の頭を叩くのをやめる。
素直に言うことを聞いてえらいね。よしよし。
頭を撫でるとコハクは喜んだ。
「さて、そろそろ家に帰ろうか」
「キュイキュイ」
コハクが首を横に振る。
いや、どんだけ魔物を倒したいのよ。
そろそろ遅い時間だから帰ろうよ。
夕食の準備もしないといけないし。
お母さんは大変なんだよ?
「だーめ。また今度来よう?」
聞き分けの悪いコハクには諦めてもらわないと。
別にこれが最後じゃないからね。またすぐに来られるし。
私はコハクを抱えて家に帰る。
家に着いて、3人と1匹分の夕食を準備しておく。
今日は魔物の血でコハクが汚れたから先にお風呂に入る。
魔物の血ってなかなか落ちないんだよね。
服とかに付いたら本当に大変なんだよ。
お風呂から上がると、カレンたちが帰ってきたようだ。
「「ただいまー!」」
「おかえりー」
「キュキュイ!」
カレンたちと一緒に夕食を食べて、コハクは疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
私も久しぶりに外に出たからかちょっと疲れた。
いつもよりも早めにベッドに入ってコハクを抱き締めてそのまま眠りについた。
翌朝、目が覚めると抱き締めていたはずのコハクがいない。
「……あれ? コハク?」
ベッドにコハクじゃない小さい女の子がいた。
寝ぼけているのかな。
なんで起きたら目の前に裸の女の子がいるんだよ。
え? これ夢?
私はびっくりして起き上がる。
頬をつねってみる。やっぱり痛い。
ってことは、ここにいる女の子は……。
「だれ!?」
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