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80 領主からの手紙
しおりを挟むみなさんおはようございます。ヒナタです。
やっぱりふかふかのベッドで寝ると目覚めも最高です。
朝食の準備をしようと1階に降りる。
キッチンで3人分のパンと目玉焼き、牛乳を用意してテーブルに置く。
こうやって朝から誰かのために朝食を用意するなんて、なんかお母さんになったみたいだ。
お父さんにもなったことないのに不思議だね。
私が先に朝食を食べていると、カレンが起きてくる。
「おはよー」
「おはよう」
まだ眠たそうにしているカレンは、イスに座り黙々とパンにかぶりつく。
半目で食べていてなんか可愛い。
「おはよう」
「「おはよう」」
するとシャルも2階から降りてきた。
カレンと違って洗面所に行き、顔を洗っているようだ。
顔を洗ってスッキリしたようで嬉しそうに朝食を食べ始めた。
もちろん、シャルも可愛い。
なんか不思議な感覚だよね。
今までは宿でも一緒に寝泊まりしていたのに、一軒家で寝食を共にしていると家族みたいに感じる。
でも2人もそのうち結婚してこの家を出て行くんだよね。
それもそう遠い話ではない。2人とも素敵な女性だからね。
「今日はどうするー?」
まだ寝ぼけているカレンが今日の予定をどうするか相談してくる。
正直特にやることはないけど、冒険者ギルドに行って依頼を受けてもいいかな。
サーシャの屋敷に遊びに行くのもありだけど、それだと2人は来ないだろうし。
「冒険者ギルドでも行きましょうかね?」
「やっぱそうしようかね。ヒナタに家を貸してもらっているから稼がないとな」
ちなみに2人はマイホームに住み込むにあたって、私に幾らかの金銭を支払う契約になった。
さすがにタダでこの家に住むわけにはいかないとのことだったので、僅かながらの金銭を毎月払うことになったのだ。
私は別に要らないんだけどね。2人がどうしてもっていうから。
ちなみお値段は宿よりもお得だよ。
「なら、私も一緒に行こうかな」
「そうだよ! ヒナタもたまには一緒に仕事しようぜ!」
ということで本日の予定も決まったので、冒険者ギルドに向かおうとマイホームを出ようとした。
「ん?」
玄関の扉を開けると一通の手紙が落ちてきた。
え? 何これ? もしかしてラブレターか?
「どうしたんだヒナタ?」
「いや、扉に手紙が挟まっていたみたいで」
内心ドキドキしながら手紙を開こうとする。
カレンとシャル、どっちへのラブレターだろうか。
「ヒナタ様へ……」
まさかの私にかよ。
こういう時ってどうやって断ればいいんだろう。
私、実は男なんです。なんて通じるわけないし。
生憎前世では女性に告白されたことはないからな。
断り方なんて知りません。
ふと、封がされた手紙の裏が見えた。
「差出人、フィリップ・ブルガルド……」
なんだよフィリップかよ。
私のさっきまでのドキドキを返せ。
頭の中でどうやって断ろうかめっちゃ考えたよ。
ってか、なんだろう。
この前会ったばかりじゃないか。
それなのにわざわざ手紙なんて。
「ごめん2人とも。領主様から私宛の手紙が来ていたからちょっと待ってて」
「お、おう」
私は封を開けて手紙を読む。
ふむふむ。
え、なんだって?
すごい丁寧な文章で長々と書かれている。
手紙の内容を要約するとこうだ。
私がサーシャに魔法を教えたことをサーシャがお父さんに話す。
無詠唱魔法を教えられるなんてヒナタさんは王宮魔術師級の魔法使いだ。
そしてそれを2日でマスターできるうちの娘は才能に溢れた天才かもしれない。
なので家庭教師としてサーシャに魔法を教えてやってほしい。
とのことだ。
正直面倒なんだけど、サーシャに頻繁に会えることを考えれば問題ないか。
とりあえずブルガルド家に行ったほうがいいのかな。
「ごめん2人とも。領主様の屋敷に行ってくるね……」
「わ、分かった……」
カレンとシャルに謝罪をしてマイホームを後にする。
せっかく久しぶりに3人での共闘戦ができると思ったのに。
「あの、フィリップ様からお手紙が届いていたんですけど」
いつも通り門番の衛兵に話しかける。
そして屋敷へと案内される。
「やあ来たかね。待っていたよ」
今日はサーシャではなくフィリップが出迎えてくれた。
私はフィリップに案内されて、執務室に入る。
「手紙にある通りヒナタさんには娘の家庭教師をしていただきたい」
「それは構いませんが、どのくらいの頻度で?」
「サーシャには他にも学業のため家庭教師を雇っているから、週に2回で半日程度お願いしたいのだが」
それなら特に問題ないかな。
でも、魔法を教えると言っても屋敷の中だけだと限界はある。
攻撃魔法も覚えるなら魔力量も上げておかないといけない。
そして効率よく魔力量を上げるなら魔物を倒してもらいたい。
「分かりました。ちなみにどこまでを目指せばいいですか」
「そうだな。欲を言えば、上級魔法を行使できるまでは、と思っている」
それなら最初は魔法をいっぱい使ってレベルを上げないといけない。
そして攻撃魔法が使えるようになったら、魔力の底上げのために魔物討伐って流れかな。
「でしたら、私がサーシャちゃんを連れて魔物の討伐に行ってもいいんですか?」
「娘の安全が第一だが、ヒナタさんなら安心して任せられる。でも、あまりにも危険な魔物は避けてくれ」
「それは当然です。やるならゴブリンとかスライムくらいにしますね」
スライムは戦ったことないけど。
いや、見たことはあるんだよ?
でもあまりに可愛いから鑑賞だけしたことがあっただけだ。
それから家庭教師は午後からやることになり、夕食もご馳走してくれることになった。
最後に給金の話になり驚くほど頂けることになった。
家庭教師なのにそんなに貰ってもいいのか疑問だったが、無詠唱魔法を扱えるのは王宮魔術師でもエリートクラスのためこれでも安いとのことだ。
そういえば前に読んだ魔法書にそんなこと書いてあったな。
「では早速だが、明日からよろしく頼む」
「はい、ではまた明日」
というわけで、私はマイホームに帰った。
夕方になってカレンたちも帰ってきたので、私がサーシャの家庭教師になったことを伝えた。
翌朝、朝早くからカレンたちは冒険者ギルドに向かった。
私は午前は特にやることもないので、ゴロゴロして過ごした。
そして昼食も食べてからブルガルド家に向かう。
屋敷に入るといつもと違ってパンツスタイルで、見るからに動きやすそうな格好をしたサーシャが待っていた。
「今日からよろしくお願いします、ヒナタ先生!」
先生と呼ばれる日が来るとは……。
なんか先生って呼ばれるのは嬉しいね。
ましてやサーシャに言ってもらえるなんて。
さあ、2人っきりのお勉強の時間だ。
「とりあえずサーシャちゃんは風魔法しか使えないんだっけ?」
「はい。そうですね」
そもそもなんでサーシャは風魔法しか使えないと思っているのか。
「自分のステータスって見たことある?」
「いえ、ありません……」
え、ないの?
なら尚更、風魔法だけ使えると思っている理由がわからない。
「じゃあ、今から教会に行ってステータスでも見に行ってみる?」
「でも、ステータスは成人してからじゃないとダメだってお父様が……」
え? そうなの?
初めて知ったよ。
「そ、そうなんだ。ならやめておこうか……」
じゃあ、どうしよう。
もう風魔法だけに集中して教えたほうがいいかもな。
正直、サーシャのステータスによってどう教えようか考えていたから、いきなり出鼻を挫かれた気分だよ。
ああ、どうしよう。
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