上 下
80 / 139

80 領主からの手紙

しおりを挟む

 みなさんおはようございます。ヒナタです。

 やっぱりふかふかのベッドで寝ると目覚めも最高です。

 朝食の準備をしようと1階に降りる。
 キッチンで3人分のパンと目玉焼き、牛乳を用意してテーブルに置く。
 こうやって朝から誰かのために朝食を用意するなんて、なんかお母さんになったみたいだ。
 お父さんにもなったことないのに不思議だね。

 私が先に朝食を食べていると、カレンが起きてくる。

「おはよー」
「おはよう」

 まだ眠たそうにしているカレンは、イスに座り黙々とパンにかぶりつく。
 半目で食べていてなんか可愛い。

「おはよう」
「「おはよう」」

 するとシャルも2階から降りてきた。
 カレンと違って洗面所に行き、顔を洗っているようだ。
 顔を洗ってスッキリしたようで嬉しそうに朝食を食べ始めた。
 もちろん、シャルも可愛い。

 なんか不思議な感覚だよね。
 今までは宿でも一緒に寝泊まりしていたのに、一軒家で寝食を共にしていると家族みたいに感じる。
 でも2人もそのうち結婚してこの家を出て行くんだよね。
 それもそう遠い話ではない。2人とも素敵な女性だからね。

「今日はどうするー?」

 まだ寝ぼけているカレンが今日の予定をどうするか相談してくる。
 正直特にやることはないけど、冒険者ギルドに行って依頼を受けてもいいかな。
 サーシャの屋敷に遊びに行くのもありだけど、それだと2人は来ないだろうし。

「冒険者ギルドでも行きましょうかね?」
「やっぱそうしようかね。ヒナタに家を貸してもらっているから稼がないとな」

 ちなみに2人はマイホームに住み込むにあたって、私に幾らかの金銭を支払う契約になった。
 さすがにタダでこの家に住むわけにはいかないとのことだったので、僅かながらの金銭を毎月払うことになったのだ。
 私は別に要らないんだけどね。2人がどうしてもっていうから。
 ちなみお値段は宿よりもお得だよ。

「なら、私も一緒に行こうかな」
「そうだよ! ヒナタもたまには一緒に仕事しようぜ!」

 ということで本日の予定も決まったので、冒険者ギルドに向かおうとマイホームを出ようとした。

「ん?」

 玄関の扉を開けると一通の手紙が落ちてきた。
 え? 何これ? もしかしてラブレターか?

「どうしたんだヒナタ?」
「いや、扉に手紙が挟まっていたみたいで」

 内心ドキドキしながら手紙を開こうとする。
 カレンとシャル、どっちへのラブレターだろうか。

「ヒナタ様へ……」

 まさかの私にかよ。
 こういう時ってどうやって断ればいいんだろう。
 私、実は男なんです。なんて通じるわけないし。
 生憎前世では女性に告白されたことはないからな。
 断り方なんて知りません。

 ふと、封がされた手紙の裏が見えた。

「差出人、フィリップ・ブルガルド……」

 なんだよフィリップかよ。
 私のさっきまでのドキドキを返せ。
 頭の中でどうやって断ろうかめっちゃ考えたよ。

 ってか、なんだろう。
 この前会ったばかりじゃないか。
 それなのにわざわざ手紙なんて。

「ごめん2人とも。領主様から私宛の手紙が来ていたからちょっと待ってて」
「お、おう」

 私は封を開けて手紙を読む。
 ふむふむ。
 え、なんだって?

 すごい丁寧な文章で長々と書かれている。
 手紙の内容を要約するとこうだ。
 私がサーシャに魔法を教えたことをサーシャがお父さんに話す。
 無詠唱魔法を教えられるなんてヒナタさんは王宮魔術師級の魔法使いだ。
 そしてそれを2日でマスターできるうちの娘は才能に溢れた天才かもしれない。
 なので家庭教師としてサーシャに魔法を教えてやってほしい。
 とのことだ。

 正直面倒なんだけど、サーシャに頻繁に会えることを考えれば問題ないか。
 とりあえずブルガルド家に行ったほうがいいのかな。

「ごめん2人とも。領主様の屋敷に行ってくるね……」
「わ、分かった……」

 カレンとシャルに謝罪をしてマイホームを後にする。
 せっかく久しぶりに3人での共闘戦ができると思ったのに。


「あの、フィリップ様からお手紙が届いていたんですけど」

 いつも通り門番の衛兵に話しかける。
 そして屋敷へと案内される。

「やあ来たかね。待っていたよ」

 今日はサーシャではなくフィリップが出迎えてくれた。
 私はフィリップに案内されて、執務室に入る。

「手紙にある通りヒナタさんには娘の家庭教師をしていただきたい」
「それは構いませんが、どのくらいの頻度で?」
「サーシャには他にも学業のため家庭教師を雇っているから、週に2回で半日程度お願いしたいのだが」

 それなら特に問題ないかな。
 でも、魔法を教えると言っても屋敷の中だけだと限界はある。
 攻撃魔法も覚えるなら魔力量も上げておかないといけない。
 そして効率よく魔力量を上げるなら魔物を倒してもらいたい。
 
「分かりました。ちなみにどこまでを目指せばいいですか」
「そうだな。欲を言えば、上級魔法を行使できるまでは、と思っている」

 それなら最初は魔法をいっぱい使ってレベルを上げないといけない。
 そして攻撃魔法が使えるようになったら、魔力の底上げのために魔物討伐って流れかな。

「でしたら、私がサーシャちゃんを連れて魔物の討伐に行ってもいいんですか?」
「娘の安全が第一だが、ヒナタさんなら安心して任せられる。でも、あまりにも危険な魔物は避けてくれ」
「それは当然です。やるならゴブリンとかスライムくらいにしますね」

 スライムは戦ったことないけど。
 いや、見たことはあるんだよ?
 でもあまりに可愛いから鑑賞だけしたことがあっただけだ。

 それから家庭教師は午後からやることになり、夕食もご馳走してくれることになった。
 最後に給金の話になり驚くほど頂けることになった。
 家庭教師なのにそんなに貰ってもいいのか疑問だったが、無詠唱魔法を扱えるのは王宮魔術師でもエリートクラスのためこれでも安いとのことだ。
 そういえば前に読んだ魔法書にそんなこと書いてあったな。

「では早速だが、明日からよろしく頼む」
「はい、ではまた明日」

 というわけで、私はマイホームに帰った。
 夕方になってカレンたちも帰ってきたので、私がサーシャの家庭教師になったことを伝えた。
 



 翌朝、朝早くからカレンたちは冒険者ギルドに向かった。
 私は午前は特にやることもないので、ゴロゴロして過ごした。
 そして昼食も食べてからブルガルド家に向かう。

 屋敷に入るといつもと違ってパンツスタイルで、見るからに動きやすそうな格好をしたサーシャが待っていた。

「今日からよろしくお願いします、ヒナタ先生!」

 先生と呼ばれる日が来るとは……。
 なんか先生って呼ばれるのは嬉しいね。
 ましてやサーシャに言ってもらえるなんて。

 さあ、2人っきりのお勉強の時間だ。

「とりあえずサーシャちゃんは風魔法しか使えないんだっけ?」
「はい。そうですね」

 そもそもなんでサーシャは風魔法しか使えないと思っているのか。

「自分のステータスって見たことある?」
「いえ、ありません……」

 え、ないの?
 なら尚更、風魔法だけ使えると思っている理由がわからない。

「じゃあ、今から教会に行ってステータスでも見に行ってみる?」
「でも、ステータスは成人してからじゃないとダメだってお父様が……」

 え? そうなの?
 初めて知ったよ。

「そ、そうなんだ。ならやめておこうか……」

 じゃあ、どうしよう。
 もう風魔法だけに集中して教えたほうがいいかもな。

 正直、サーシャのステータスによってどう教えようか考えていたから、いきなり出鼻を挫かれた気分だよ。
 ああ、どうしよう。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

新人神様のまったり天界生活

源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。 「異世界で勇者をやってほしい」 「お断りします」 「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」 「・・・え?」 神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!? 新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる! ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。 果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。 一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。 まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜

Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・ 神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する? 月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc... 新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・ とにかくやりたい放題の転生者。 何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」       「俺は静かに暮らしたいのに・・・」       「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」       「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」 そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。 そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。 もういい加減にしてくれ!!! 小説家になろうでも掲載しております

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

半身転生

片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。 元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。 気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。 「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」 実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。 消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。 異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。 少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。 強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。 異世界は日本と比較して厳しい環境です。 日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。 主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。 つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。 最初の主人公は普通の青年です。 大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。 神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。 もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。 ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。 長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。 ただ必ず完結しますので安心してお読みください。 ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。 この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...