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37 パーティでの初仕事②

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「がはっ……」
「「カレン!?」」

 どこから飛んできた?
 戦闘に夢中でカレンの方を見ていなかった。するとカレンが叫んだ。

「奥にゴブリンメイジがいる!」

 ゴブリンメイジは魔法を使うゴブリンだ。
 そんな個体がいたのか、私の調査ミスだ。
 ここは私が責任を取らないと。

「カレン! 下がって!」

 カレンに向かって後方に逃げるように叫んだ。
 火球ファイヤーボールが直撃した右肩を押さえながら下がってきたカレンを確認して、私はゴブリンの動きを封じるべく魔法を放った。

「フリーズ!」

 足元に水魔法で氷結フリーズを使い、足元を凍らせてゴブリンの動きを封じる。

「シャル! ゴブリンの動きは封じたから一緒に攻撃して!」

 足が凍って動けないゴブリンに私とシャルで攻撃をして制圧をする。

「カレン! 大丈夫!?」

 カレンを心配して私とシャルが駆け寄る。
 そしてシャルがアイテム袋から小さな瓶を出してカレンに飲ませる。
 するとカレンの火傷が治っていく。

「え、なにそれ……」
「何って回復薬ポーションだよ。知らないのか?」
「……知らない」

 そうか、異世界なんだからそういうのもあるよね。完全に失念していた。

「まじかよ……。ギルドにも売っているぜ。回復薬ポーション魔力回復薬マナポーションが」

 うわー。今までの私って結構やっちゃってるな。
 魔力回復薬マナポーションがあるなら結構無理して魔法も使えたじゃん……。
 依頼を受けるなら、その際にたくさん買っておこう。

「と、とりあえず! あとはゴブリンキングです!」

 私たちは奥に進み、ゴブリンキングのいる場所へと向かう。
 大剣を持ったゴブリンキングを見つけると、かなり怒った表情でこちらを見ている。

「ゴォォォオオオ!!!」

 こちらにゴブリンキングが向かってくる。
 カレンがすぐに剣で応戦するが、力負けしてこちらに吹っ飛ばされる。

「くそっ、強い……」

 私も魔力を込めて岩石弾ロックショットを放つが、ゴブリンキングの剣で弾かれる。
 シャルが弓矢を放つが同様に弾かれた。
 そしてゴブリンキングが大剣を振りかぶり私たちに振り下ろしてきた。
 すぐに転がりながらも退避して体勢を整える。

「カレン! もう一度剣で攻撃して!」

 私の言葉でカレンがゴブリンキングに攻撃をして同様に弾かれる。
 その瞬間に私は魔法を放つ。

「ロックショット!」

 先ほどと同じように岩石弾ロックショットをゴブリンキングの胸のあたりに放つと血が吹き出した。
 しかし貫通はしなかった。
 ワイバーンとかはこれで貫けたのに結構硬いみたいだ。
 とりあえず攻撃が効くことはわかったので、今のと同じように攻撃を仕掛けよう。

 ……と思っていると、ゴブリンキングは私に向かって剣を振り下ろしてきた。

「やばい!」

 そう思ったら、カレンが横からゴブリンキングの振り下ろした大剣を受け止めてくれた。

「がっ……」

 凄まじい衝撃を受けたカレンは、足から骨が折れる音がした。
 心配になったが、今はゴブリンキングを倒さなくてはいけない。
 そう思って今度はさっきよりも魔力を込めて、岩石弾ロックショットをゴブリンキングの頭に目掛けて放った。

「ロックショット!」

 頭に岩石弾ロックショットが直撃して、ゴブリンキングはその場で倒れた。

「「カレン!」」

 カレンは足を押さえていたが、シャルが再度回復薬ポーションを飲ませる。

「骨折も回復薬ポーションで治るの?」
「多少の怪我なら治るけど、骨折となると軽減はするが、しばらく時間はかかる」

 回復薬ポーションもそう万能ではないということか。
 私の油断で、カレンには迷惑をかけてしまった。

「ごめんね、カレン。私のせいで怪我を負わせて」
「そんなこと気にすんなよ。あたしは前衛なんだから怪我なんかしょっちゅうだよ!ゴブリンキング相手にこれだけの怪我で済んだのはマシな方だよ」

 笑いながらカレンが答えてくれた。
 私は今回の戦闘を反省して、できるだけカレンの補佐もできるようになろう。
 目の前で大切な人を失うのは見たくない。
 私は倒したゴブリンキングに強奪スキルを使い、ステータスを確認する。

名前:ヒナタ
種族:人族
年齢:15歳
職業:魔法使い
HP :153/176(+8)
MP :218/322(+7)
スキル:水魔法LV7(+1)
    風魔法LV7
    火魔法LV5
    土魔法LV7
    無限収納
    威圧LV4
    毒霧LV1
    毒耐性LV3
    麻痺耐性LV2
    気配察知LV5
    気配遮断LV4(+2)
    隠密LV5(+1)
    発情LV2
    遠視LV4
    気配探知LV3
ユニークスキル:強奪

 久しぶりにステータスを見たから、気配遮断もレベルが2つ上がっている。
 それに水魔法もよく使っていたからかレベル7になっている。
 これで上級魔法も使えそうだ。
 そしてゴブリンキングから強奪したのは気配探知か。
 気配察知と何が違うんだろう。試してみるか。

「おおっ!」

 頭の中に半径300mくらいのマップが広がった。
 マップには青い点が3つあるだけだ。
 なるほど、これで敵の位置が正確にわかるのか。
 気配察知は気配を感じる程度だったが、気配探知は場所まで特定できるようだ。
 かなり便利スキルだな。

 私はゴブリンキングを無限収納にしまい、倒したゴブリンの魔石をシャルと2人で回収してから、足を怪我したカレンに肩を貸して3人で洞窟を出て村長にところへと向かう。


「洞窟にはゴブリンキングとゴブリンの群れ70匹程度がいましたが、全て討伐しましたので安心してください」

 私が、村長のクルトに報告した。

「そ、そこまで大きな群れだったんですね。依頼書にはゴブリンキングの討伐は含まれていなかったので追加で報酬を支払います」
「お願いします。それと今回はBランクの私たちが来ましたからなんとかなりましたが、今後依頼を出すときは調査費を含めた報酬を支払わないと、駆け出しの冒険者がゴブリンだけだと思って討伐に来てしまい、ゴブリンキングに殺されるという可能性も出てきます」
「おっしゃる通りです。これからはそのようにしたいと思います」

 よし、とりあえず言いたいことは言ったな。あとは帰るだけだ。

「あの、よろしければお礼もしたいので今晩は泊まっていってください」

 私は、カレンとシャルの顔を見る。2人は小さく頷いた。

「では、お言葉に甘えさせてもらいます」

 その後は、村人の人からご馳走を用意してもらって、村長の家に泊まって眠りについた。
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