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23 領主に呼ばれる

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 翌朝、私は宿の部屋の扉をノックされて起きた。
 寝ぼけながらも扉を開けると、領主様の執事クロスが立っていた。

「おはようございます、ヒナタさま。旦那様がお呼びですので、屋敷までご案内します。外に馬車を用意していますので、準備ができたらお越しください」

 ワイバーン殲滅のお礼かな。
 着替えてから髪を溶かし、出かける準備をして外に出る。
 サーシャに会えると思うと心が躍る。

「お待ちしておりました。それでは馬車にどうぞ」

 馬車に乗り、領主の屋敷へと向かう。
 例のごとく、屋敷に入るとメイドさんが出迎えてくれた。
 なんかメイド服着てみたくなってきたよ。サーシャの専属メイドとかやってみたい。
 この世界で特にやりたいことがなくなったら専属メイドになるのもいいかもな。
 サーシャがお嫁に行っても絶対なってやる。

「ヒナタお姉ちゃん!」

 今日もサーシャは可愛い。なんか妹ができたみたいだ。
 前世では男3人兄弟の末っ子だったから姉か妹が欲しかったんだよね。
 私はサーシャを抱きしめながらそんなことを考えていると。

「きたかね、ヒナタさん」

 また、私とサーシャの逢瀬を邪魔してきたよ。この流れにはもう慣れた。

「おはようございます、フィリップ様」
「おはよう、早速だが、執務室までいいかな」

 はいはい、いつもの流れね。これも慣れましたよ。

 私は執務室に案内され、入るとそこにはカレンとシャーロットが緊張した顔で座っていた。

「え、なんで2人がいるんですか」

 私は驚きながらフィリップに尋ねた。

「そりゃ、今回の功労者を招くは当然だろう」

 そういうことか。
 それにしても2人の緊張した顔が面白い。
 普段こういう場に慣れていないんだろうな。
 冒険者だと、あまり貴族と接する機会がないんだろうな。

 フィリップは椅子に腰掛け、私たちにお礼を言った。

「今回のワイバーン討伐に尽力いただき、感謝する。君達がいなければ、この街もかなりの被害になっていただろう」

 カレンとシャーロットは頭を下げてお礼を言うフィリップに慌てふためいていた。
 なにこの2人面白すぎる。

「いえ、たまたま討伐する方法があっただけですので、気にしないでください」
「ふふ、ヒナタさんにはたくさんの恩がありすぎるな。借りた恩を返すには私の余生では足りないくらいだよ。ヒナタさんが男だったらサーシャを嫁にって思ってしま」
「一生大切にします!」

 食い気味に答えてしまった。
 やばい、顔が熱い。
 フィリップやクロス、カレンとシャーロットも目を見開いて私を見ている。
 きゃー、恥ずかしい!

「す、すいません。じょ、冗談です……」

 俯きながら私は答えた。
 だって、サーシャと結婚できるチャンスだったんだよ。
 そりゃ食い気味になっちゃうよ。

「そ、そうか……。とりあえず3人にはお礼として、謝礼金を用意した。受け取って欲しい」

 机に置かれた巾着袋を受け取る。

「本日はお礼と、謝礼金を渡したかったんだ。朝から来てもらって申し訳なかったな。あ、そうだ。ヒナタさんは少し話があるからここに残ってもらえるか」
「え、はい」

 フィリップが言うと、カレンとシャーロットは執務室を出て行く。
 それにしても2人とも緊張してて何も喋ってなかったな。
 私が来るまではどうしていたのか気になる。
 執務室に私とフィリップ、クロスのみとなったところで、フィリップが口を開く。

「冒険者のヒナタさんに頼みがあるんだ」

 え、なに。嫌な予感がするよ。
 サーシャとの婚姻だったら喜んで受けるけど。

「実は、来月サーシャの姉の誕生日なんだ。それで、サーシャが直接お祝いをしたいらしくて、王都に行くことになったんだが、私は仕事で行けそうにない。だからサーシャの護衛として行ってくれないか。前回の盗賊の件もあったし、それにサーシャもヒナタさんと約束したって言っていたからな」

 サーシャは前に約束したのを覚えていたみたいだ。サーシャたんまじ天使。

「私でよければ、ぜひお願いします」
「それならよかった。今回のは指名依頼として冒険者ギルドにお願いしておくからよろしくね。ちなみに出発は3週間後を予定している」
「はい、わかりました」

 私の王都行きが決まった。すごい楽しみだ。
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