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10 これで最後です
しおりを挟む屋敷に到着し、フィリップ様にエスコートされ馬車から降りたその時、二人は現れた。
「ガーネット!!」
「フィリップ様!!」
声の方向に振り向くと、アベール様とマリア様がいた。
フィリップ様は眉を顰め、繋いでいた手を外し守るように私を抱きしめる。
二人がこっちに向かって走ってくるが、騎士が私たちの前に立ちはだかり二人は近寄れない。
「何の用だ」
フィリップ様の低い声にびくっと私は肩を震わせる。そんな私を見てフィリップ様は大丈夫だと言うように優しく私の髪を撫でた。
「ガーネットを返せ!!それは俺のものだ!!」
「フィリップ様、貴方はその女に騙されているのです!!」
フィリップ様はため息を吐く。
「ガーネットは、ものではない。私は騙されてないし、彼女を一人の女性として愛してる」
「な、何だと!ガーネットが好きなのは俺だけなんだよ!!そんな不細工と結婚できるのは俺だけだ!!」
「不細工?ガーネットが?君は一度眼科で見てもらった方が良さそうだ。彼女以上に美しい女性はこの世に居ないのに」
「……フィ、フィリップ様!!」
私は恥ずかしくてフィリップ様をちらりと見るが、彼は真剣な表情をしていた。
マリア様はフィリップ様の言葉に髪を振り乱し、嘘よ、嘘よ……とぶつぶつ呟いている。正常な状態ではなさそうだった。
騎士が二人を拘束しようとするが、アベール様は暴れる。だが騎士の力の方が圧倒的に強いため、すぐに拘束された。
「ガーネット!!お前は俺が好きだろう!!何故こんなことをするんだ!!」
アベール様は騎士に押さえつけられながら叫ぶ。
私はフィリップ様の腕から抜け出し、アベール様の近くに歩いていく。フィリップ様は私の手を握り、傍で守るように立ってくれていた。
「アベール様、私あなたが大っ嫌いです」
「なっ」
「出会ったときから、好意を持ったことなんて一度もありません。ずっとずっと大嫌いでした」
「う、嘘だろう……?」
アベール様は信じられない。という目で私を見る。
どうしてここまで勘違い出来るのだろうか。
「本当です。婚約破棄できたとき、本当に嬉しかったのです。もう関わらなくて済むと」
「そ、ん、な……」
アベールは暴れるのをやめ、へなへなと地べたに座り込んだ。
「もう二度と会わないことを願います」
そう言い終わると、ガーネットはフィリップの手を握りしめ屋敷に入っていく。
マリアとアベールは現実逃避しているのか、愕然とした表情でずっとぶつぶつと何かを呟いていた。
二人に会ったのは、それで最後だった。
◇
その後、両親の反対もなくフィリップ様と婚約できた。
お父様だけほんの少し渋っていたけれど。
一番喜んだのはリリアナだった。「やったーーー!!」と歓喜し飛び上がったかと思えば、庭園をはしゃぎながら走り回った。
喜びを体で伝えたかったらしい。
そんなリリアナを見て私たちは笑い合った。
婚約中も結婚してからも、フィリップ様は毎日のように言葉で体で愛を伝えてくれた。
私は二男二女を産み、愛する家族に囲まれながら幸せな日々を過ごした。
アベール様たちがその後どうなったのかは、分からない。
これにて完結です。サクッと読めるライトな話を書きたいな。と思って書いたお話でした。
アベールの後悔などは番外編で数話書きたいなと思います。マリアはサクッと。こちらは不定期になりますがどうぞよろしくお願いします💦
読んでくださった方ありがとうございました…!(>_<)
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