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7:学園祭は銀幕に乗っ取られている!

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 開会式でアレクシス王子以下五名が姿を消した後、舞台の袖からススス……と黒子の恰好をした生徒会役員補佐――と書いて手下と読む――たちが現れ、大きなスクリーンの準備をしはじめた。

 講堂全体では、いったん椅子が全部片づけられて、長いテーブルが何本も搬入される。そこに椅子もセットし直して、学園生たちを着席させる。
 テーブルの上には、ソフトドリンクとクッキーなどの手軽なスイーツ、そして妙に庶民臭い乾きもののつまみなどが並べられた。

 学園生全員の準備が整うと、壇上に一人の女子学園生が颯爽と現れた。
 葡萄酒色の髪を軽やかになびかせる女子にしては背が高い彼女こそ、ユーフェミア・エイダス。アレクシス王子の元婚約者であり、生徒会の会計担当であり、学園祭の主催者である。

 ユーフェミアは侯爵家の令嬢だが、魔導拡声器を片手に仁王立ちする姿は、騎士のように雄々しい。
 そんな彼女は、ニヤリと笑って拡声器を構える。

「よぉーし、みんな! これから『ドキドキ☆憧れのあの人はどうする!? リアルタイムレポート!』が始まるよ! 様々な壁(物理)を乗り越えて、彼らが行き着く先は一体どこになる!? 刮目して見よ!」

 ユーフェミアが拳を突き上げれば、学園生もそろって「おおおお!」と雄叫びを上げる。物凄い一体感である。

 アレクシス王子たちが学園祭の準備期間中、ユーフェミアに会わなかったのは、彼女自身がこの準備で忙しかったからだ。
 他の役員らはそろいもそろってフローラに夢中で、まともに生徒会役員としての仕事などしていなかったから、彼らの仕事も並行してやらなくてはならなかった。おかげで、ユーフェミアの肌は寝不足で少し荒れている。
 疲れすぎて鼻血を出しながらも、ユーフェミアが執念を燃やせたのは、「あのアホアホファイブを色々な意味で血祭りにあげる!」と決めていたからだ。
 あと、他の学園生たちの後押しもあった。いずれ国のトップにならんとするはずの人間の醜態に、自分たちも貴族である学園生たちも色々と思うところがあったのだ。

 入学したての頃はそれなりに優秀だった王子一派も、今やグダグダの色ボケ集団と化してしまった。そんな彼らがどうやって苦難(笑)を乗り越えるのかも注目するところだ。
 魔導映写機が動き出し、講堂はつかのま静寂に包まれた。

 上映が始まり、学園生たちは大盛り上がりだ。
 まずはダグラスがリンジーにボコられるところで、盛り上がりの最高潮がきた。

「やれー! 潰せー!」
「女の敵は蹂躙せよ!」

 特に一部の女子学園生たちが大いに気炎を吐き、そんな彼女らの婚約者らしき男子学園生たちがガクブルと震えている。

 次はセドリックの刻印魔術の盗作が発覚したところで、憤る学園生たちが拳を振り回している。魔術に関して真摯に向き合っている者がほとんどだから、セドリックのような奴は唾棄すべき人間なのだ。ブーイングが講堂に響き渡る。
 そんな学園生たちは、セドリックの婚約者クレアが出てきたとたんに静まり返った。
 肝心のセドリックは知らなかったようだが、クレアのドSっぷりは同級生たちの間では有名だった。以前、セドリックに水浸しにされた時も、狂気の光でギラギラした目を、婚約者に向けていた。たまたま目撃した同級生は次の日寝込んでしまったという。

 しかし、ここら辺まではまだ笑えたのだが。
 ベネディクトやアレクシス王子に至っては、犯罪の暴露なのだ。ベネディクトの婚約者イザベルに対してだけは、「その手にした帳簿で叩いて欲しい」と一部の学園生は盛り上がっていたけれど。
 ふたたび講堂内が静まり返る。



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