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星空の誓い 編

第64話 ほしぞら

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2人はゆっくりとラグル族の男に向かって歩き始める。ラグル族の男は拳銃を構えるも引き金を引けないでいた。

「なっなんで!身体が言う事を...............」

「貴方.....特別な能力とか持ってないの?もしかしてラグル族でも下の方なの?」

「うっうるさい!アライブ様が能力を付与してくださらなかった.....あの方が...アイツが悪い!僕を評価してくださらなかったアイツが!!」

アライブ.....サファイアはその名を知っている。数千年前に神を裏切った罪で処刑されたかつてのラグル族の長の名前だ。ラグル族の男は狂ったように拳銃の引き金を引こうとするが引けないでいた。あと数十秒はそのままだろう。

「すぐ終わらせてあげます」

そう言うとサファイアはベルトの天面のボタンを押す。すると彼女の腕がクリスタルに包まれそれが大きな爪になった。

「クリスタルクロー.........うおおぉぉぉぉぉお!!」

ズバァァァァァァ!!!

サファイアはラグル族の男に向かって勢いよく走り出し怯えた表情をする彼をクリスタルの爪で思いっきり引き裂いた。

「あぁぁああぁぁあ!あっあぁ..........血....血だぁぁ僕の腹から!」

「貴方がやってきた事は決して許される事ではない!命をおもちゃにした貴方には死を持って償ってもらう!」

「僕はまだ死にたくない!これが僕の最後の足掻きだよ。」

彼は血で濡れた白衣のポケットから何かスイッチのようなものを取り出すとそのスイッチの赤いボタンを押した。施設の方から何かがやってくる音がする。

「ガルルッ!!」

「グァゥア!!」

檻から解放された数匹の実験体が外にやってきた。周りを見渡してサファイアとイバラを見つけると思いっきり駆け出した。右前足だけがひどく肥大化した獣や足が6本ある獣、目が10個ある獣もいる。

「実験体を呼んだのね.....サファイアちゃん!この実験体は私に任せて♪」

「分かりました。任せます」

お互い背を向けて会話をしている。世に言う「背中を任せた状態」瞬間に2人で一斉に違う方向へ駆け出す。サファイアはラグル族の男の方へイバラは実験体達の方へ

「あ、ちょっと待ってサファイアちゃん!私武器持ってない.......」

それを聞いてサファイアは少しため息をつくと両腕に装備している青色のクリスタルの爪の左の方を取り外しイバラに向かって投げる。

「それ外せるのね......ありがと♪これで存分に戦えるわ....再構築!」

彼女はサファイアから投げ渡されたクリスタル爪を持つと彼女の腕の中でそれは少しずつ形を変えクリスタルの剣に姿を変えた。色も青からピンクになっている。

「さぁ、かかってきなさい♪私が遊んで~あ・げ・る♪」

彼女の挑発に乗るかのように1匹の実験体が彼女に喰らいつこうとするも彼女の剣で思いっきり叩き切られ「くぅ~ん」と情けない鳴き声を出しながら地面に転がってしまう。

「1匹目~他の子もおいで~♪(この子達表情からするに本当はしたくないのね。とっても苦しそうで怯えた顔......脳にチップでも付けられて私達を攻撃するよう設定されてるって感じね。)」

数秒後1匹の実験体がイバラに向かって走り出す。それに勇気づけられたかのように他の実験体達も走り出し彼女に攻撃をしようとするも一瞬で全員切り裂かれてしまった。

「ヘブンストラッシュ........じゃあね。生まれ変わって幸せになるのよ」

先ほどまで生きていた実験体達は血を流しながら辺りに転がっている。モンスターの身体は完全に死んだと同時に灰化が始まっていく。






一方その頃サファイアは右手にクリスタルの爪、左手に剣という状態で彼と戦っていた。運命眼の呪縛が完全に解け拳銃を使って銃弾を乱発している。しかしそれは一向に当たらない。

「死んでたまるかぁぁぁあ!!僕はまだ遊んでいたい!」

「命を弄んで貴方は楽しいんですか!」

「あぁ楽しいね!楽しくなかったらやってねぇよ!これが僕の生きる意味....他のラグル族達から僕は出来損ないじゃないって事を知らしめてるやるんだ!」

「そんな理由で?他の人に構って欲しいから?それじゃまるで子供じゃないですか.........」

「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさい!」

彼女に拳銃を向け銃弾を打ち込もうとするもどれも当たっていない。彼女は呆れたようにため息をつくとベルトの天面のボタンを長押しした。

「あ、そうだ。いい事を教えてあげるよ。あのさっき死んだギャラクシーファブニスは君達が流星祭で倒したギャラクシーファブニスの細胞の一部を元にして作ったんだ。人工的に生き物を作るには元となるものが必要なんだよ?」

「それがどうかしたんですか?」

「別にーただそれだけ」

彼女は呆れたようにため息を吐くとベルトの天面のボタンを長押しした。彼女の剣の刀身が青いオーラを纏い始める。

「ガーデンクォーツ・エターナルエンド!」

剣を構え狂ったように笑うラグル族の男に向かって斬撃を放つ。青い斬撃は彼にぶつかった瞬間に衝撃と共にクリスタルのようなものを作り出す。彼の身体がゆっくりと「それ」に侵食されていった。

「あっあぁ........はははははは......まだラグル族はいる...きっとモーゼ様達がお前達を酷い目に遭わせてくれるはずさ!計画は順調.....あとは任せましたよ。モーゼ様、ジンブ様、ノア様ぁぁあ!!」

彼がそう言い終わった瞬間に彼の身体の全てが綺麗な青いクリスタルに包まれた。そこにイバラがやってきて持っていたピンク色のクリスタルの剣で彼を叩き割る。

バキ!

「さぁ帰りましょう。」

サファイアはベルトを取り外して元の人の姿に戻った。

「ちょっと待ってください。ファブニスの元へ行かせてください」

それを聞いたイバラはこくりと頷きファブニスが殺された場所に向かった。そこには遺体は残っていない。

「分かっていましたよ。彼女の人工的に作られたとはいえモンスターですからね。何も残っていない事くらい.......」

「これ見て」

イバラが暗い地面の中から何かを拾い上げる。彼女が拾い上げたものはファブニスの青いクリスタルだった。モンスターは素材だけ残して灰になる。

「綺麗なクリスタルね~まるで星空をぎゅっ!と詰め込んだみたい。どうする?遺骨の代わりにお墓作って地面に埋めてあげる?」

「それは.........」

サファイアが悩んでいる間にイバラがクリスタルを手の中でコネコネと触っている。数十秒後に悩んでいるサファイアの肩をポンポンと叩いた。

「イヤリングにしちゃった♪貴方にあげるわ」

彼女の手の中にあったのは青いクリスタルでできたイヤリングが2つ。それをサファイアに手渡した。

「いいんでしょうか。こんな事をして......」

「別にいいんじゃない。冒険者の装備とかもモンスターから手に入れた素材で出来ているんだし~それに......そっちの方が彼女も嬉しいと思うわ。貴方と一緒にいろんな場所を見ることができるから...」

「分かりました...それで納得しましょう。それじゃ私は帰ります。」

彼女はそう言うと立ち上がり辺りを見渡し始める。

「ここはどこなんでしょう?」

「オリオンの街からだいぶ離れた場所よー歩いて帰ったら1週間はかかるわ。私が送ってあげる?」

「え?」

イバラは魔法陣のようなものを出現させるとサファイアの手を握ると半ば強引に彼女を連れて中へ入っていってしまった。次の瞬間サファイアが見たのは見覚えのある街並みだった。

「ここはオリオンの街.........」

「良かったわねー私の移動能力は私が今まで行ったことしかない場所しかワープできないの。結構前にオリオンの街に来たことあったんだけど~やっぱりだいぶ街並みが変わってるわね。あそこを曲がれば貴方達が住むギルドでしょ?」

「なんでそんな事まで知ってるんですか?」

「サナちゃんの身体に憑依してた時にちょっと記憶を覗かせてもらったの。あ、今度ここに遊びに来るから案内よろしくね~

彼女はてへぺろ♪って感じの表情をするとサファイアに手を振って魔法陣の中に姿を消してしまった。

「案内って..........はぁーー家に帰りましょう。みんなが待っています」

彼女は歩き出す。夜もだいぶ深い、誰もいない道をただ1人歩いていた。帰ったらみんなにどう説明しよう。もしかしたらみんなもう寝てるかもしれない。そう考えていたらギルドに着いていた。彼女はゆっくりとドアを開ける。

しーーーーん

「やっぱり寝てますよね........」

ドタバタ!!

廊下の方から3人が走ってくる音がする。玄関に着いた瞬間にサナはサファイアに抱きついた。

「ちょっ!サナ!」

「心配したんだよぉぉお!!ズララァァアア!!」

彼女は顔がぐちゃぐちゃになるくらい泣いていた。後ろのほうでメガネくんやリオがいた。

「やばいめっちゃ眠い......お腹空いた~」

「リオ先輩がサファイアが帰ってくるまでご飯は食べないでおこうって言ったんですよ~」

「あれ?そうだっけ」

「あはは....サナ離れてください。このままではコートについたモンスターの匂いが貴方にまで付いてしまいます。」

サファイアは優しい声で彼女に忠告するが彼女はそれを気にせずサファイアをずーーーっと抱きしめる。その後やっと泣き止んだサナは目をこすると泣きそうな笑顔でこう言った。

「ぐすっ....うぅ.....スララ..おかえりなさい!」

「.........はい!ただいまです!」

サファイアも彼女につられて笑顔で答える。ここにある幸せを噛み締めるかのように..........








その頃どこかの街では鎧を纏った騎士達が何人も街を徘徊していた。

「そっちの方はどうだ見つかったか?」

「いえ!こちらにはそれらしい人物は見当たりませんでした!」

「いいか、右腕に白い鉄のようなものでできたものを付けている奴らが冒険者だ。アイツらを捕まえ牢にぶち込む。そうすればこの街に平和が訪れる......奴らは危険だ!いいか!」

「「「はい!!!!!!」」」

再び騎士達が街中を走り回る。その様子を路地裏でひょこっと顔を覗かせる黄色い髪の少女が怯えたような表情で見ていた。彼女の身体はプルプルと震えている。ボロボロのローブを羽織り目立たないようにしている

「うぅ~なんで私こんな街に来ちゃったんだろ~いいや...そもそもあのゲームを起動しなかったらこんな場所に飛ばされなかったんだよぉ~もう嫌ぁ~。こんな街早くでないと~」

「おい!そこでお前何をしている!」

1人の騎士が彼女を見つけた。目と目が合った瞬間に彼女の顔が一気に青ざめる。

「ひっ!ひぃぃい~~!!ごめんなさぁぁあい!やっぱり私ダメな子だよ~!」

「みんな集まってくれ!こっちだ!こっちに右腕に何かを取り付けたやつがいるきっと冒険者だ!捕まえろぉおおお!!」

彼女の災難は続くのであった。


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