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第12話 大図書館

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「なんで僕が君達を呼んだか.........感の良い皆様ならお分かりはず.......。」

「あぁ、もちろんだ。」

「だいたいは分かっていますよ。」

どうやら他の人たちは分かっているようだが、俺にはさっぱり分からない。この街に来て日が浅いし........ただお話するだけかと思ってた。

「今この街の秩序は乱れ切っている。例えばこの世界に来たばかりのプレイヤーを騙して強制的にギルドに入会させる人達とか.......。」

「この世界に元々住んでいる人達の金品を強奪する輩もいるそうですよ。」

「ダルタンさんが言ってました........西の方にある街ではプレイヤーが町人達を支配しているって.......。」

俺が思っていた以上に深刻な問題があるらしい。ゲームの世界だから何したっていいと思っている人がいる.......そう思うとなんだか悲しくなってくる。

「だから、僕達でこの街の秩序を取り戻そう!」

「しかし.......たったギルドが5つ集まったくらいで何か変わるのでしょうか。」

マサムネさんの一言で全員が下を向く.........。確かにその通りかもしれない.....でも!

「でも!行動しないと何も変わらないですよ!」

しーーーーーーん

あれ?何も反応がない.......俺、でしゃばり過ぎた感じ?
するとソード オブ ベルサイユのギルドマスターが微笑む。

「ふっ........その通りだな.....。これを理由に行動しないのは違う........。ファンタジーモールのギルドマスターよ!」

「はっはい!!」

「僕達ソード オブ ベルサイユは積極的に参加する事にするぞ!そうだな.......よし、鍛錬の時間を半分に削ってこの街の警備をするのもいいな...........。」

「分かりました.......僕達 紅桜も参加します。同じプレイヤーの悪事は見過ごす事なんてできませんもんね。」

「私達も、何か手伝える事が遠慮なく手伝いますね!ダルタンさんもきっといいと言ってくれると思います。」

「皆さん.........ありがとうございます!そしてリオ君!ありがとうね!!」

そう言うとハンドさんは泣きながら俺の手を握ってきた。どこから涙が出ているのか分からないけど........。結果オーライって感じかな。



そして2時間後
ファンタジーモール、ソード オブ ベルサイユ、紅桜、黄昏の流星、ジェネシスの五つのギルドによって街のルールが決まった。

憲法のような難しいものではなく、誰でも分かるような簡単なルールだ。

例えばギルドの入会と退会は本人の意思を尊重すべきだ。
街の中での戦闘は非常事態でない限り避ける事など.........。

2時間に及ぶ会議ももうすぐ終わりを告げようとしたその時だった........。
6人のデバイスが一斉に鳴り響く。

「どうやらメールが来たようだな.......。」

「運営からみたい.......。」

運営から来たメール
また、ギフトのお知らせかと思っていた。しかしどうやら違うらしい。


プレイヤーの皆様へ

ゲームは楽しまれておられますでしょうか?
もうすぐ6月も終わり7月.......つまり初夏になります。
という事でイベントをご用意いたしました!存分にお楽しみにください!

イベント名はこちら!
    「星に希望を乗せて........流星祭!」


「相変わらず短い文章だな..........。」

「流星祭.....開催日は7月7日、つまり七夕ですね。」

「何がゲームを楽しまれておられますでしょうか?ですか!私達を元の世界に返してください!」

「本当.......不思議な事ばかり......どうして運営は動き続けているのだろう?」

「あ!そろそろ会議も終了の時間です......皆さまご参加いただきありがとうございました!ショコラちゃーん!シフォンちゃーん!」

ハンドさんがそう叫ぶと奥の方から女の子2人がカートを持ってやってきた。

「はいでーーす。」

「こちらファンタジーモールが手がける季節限定のスイーツとなっております。お土産にどうぞー」

カートの上にはたくさんのスイーツが入った箱が置かれていた。それにしては多すぎないか。

「まさかギルドが5つしか来ないとは思っていなくってね......。たくさん作っちゃいました!という事で捨てるのももったいないし!どんどん持って行っちゃってください!」

「うちは団員が多いからな......持てるだけ持って帰ろう。」

「一つの箱に10個入っております。和菓子もございますよー。」

俺はどうしよう.......うちは俺とサナさんとメガネ君とスララで多いってわけじゃないし.......でもサナさんスイーツが好きだからな.......2箱くらいでいいかな。俺は2箱取ると会議室のドアを開けようとした。

「ちょっと待ってください!」

「え?」

女の子2人に止められてしまった。

「その持ち方だと階段でこけてしまうかもです!」

「という事でこちらのバッグをプレゼントです!」

「あっありがとう。」

女の子達からバッグに箱を入れる、エコバッグみたいな感じだ。袋には絵が書かれている。これはなんの絵だろう。

「これって何の絵?」

「その絵は私達ファンタジーモールのロゴでございます!社長秘書のテンさんが考えました!」

「そっ....そうなんだ........。」

ハンドさんには秘書がいるのか.......その人もハンドさんみたいに明るい人なのだろうか。



一方その頃

「へくちっ!........季節はずれの風邪でしょうか。そう思ったら体調が悪く感じて来ました。今日はもう休みましょう。」

テンは自分の部屋でくしゃみをしていた。



「やっと会議室から出ることができた........あれ?サナさん達は?」

会議室のドアを開けると、サナさん達の姿を見当たらない。どこかへ行ってしまったのだろうか。近くに掃除しているおばあさんがいる、どこに行ったか知っているかもしれない。

「あのーすみません。」

「はい?」

「ここに茶髪の女の人とメガネをかけた男の人を見かけませんでしたか?」

「それは知らないけど......1時間くらい前に三階の図書庫でスライムが入っていくのは見かけたわよ。」

「ありがとうございます!」

スライム.......たぶんスララだろう。三階の図書庫にいるのか........。
俺は急いで階段を下りた。


大図書館 三階 図書庫にて

「ねぇねぇ、この本どうやって読むの?変な文字ばっかで読めないよー」

「その文字......どうやらローマ字を元に作られたらしいです。」

「ローマ字?えーーー全然違うよー」

「ほら、そこの文字はSを横にしてカクカクにしただけですよ。」

「あ!本当だ!じゃあこれはAかな?」

2人の声がしている。どうやら本を読んでいるようだが.......あれは読めているのだろうか。解読しているように見えるが.......。

「あ!リオ君だ!おかえり!」

「サナさん達は何してるの?」

「この世界についての知識を深めようと思ってですね。街の歴史コーナーを見てたんですよ。」

するとメガネ君はさっきまで読んでいた本のページを俺に見せてきた。なんと書かれているか全く分からない。まるでゲームの遺跡に書かれた古代文字のようだ.......あ、ここゲームの世界だった。

「1時間かけて、これがローマ字を元にして作られた事が分かったんです。そういえばスララも何か読んでるみたいですよ。」

目線を下に向ける......スララが本を開いて真剣に見つめていた。角を使ってページを開いているようだ。

「何を読んでいるの?」

タイトルの部分を見てみる。表紙には青い流れ星が描かれいた。

絵本のようだが、やっぱり何て書いてあるのか分からない。いちいち解読するのがめんどくさい.......。

「あ!そういえば!」

サナさんが何かを思い出したのかデバイスを動かし始めた。

「あった!翻訳機能がOFFになってる!」

「翻訳機能!?」

「なにそれ!?」

俺も画面を使ってみる、本当だ翻訳機能ってやつがOFFになっている。

翻訳機能
それはこの世界の文字を自動的に読めるようにしてくれる機能。

「すごい!読めるよ!」

「ほんとですね!」

2人で驚いていると、ふと横を見てみるとメガネ君が落ち込んでいる。

「僕の努力は一体.........。」

「メガネ君どんまい.......。」

「じゃあスララが読んでいる本を見てみよう!えーーーーっと「流星祭の記憶」?ちょっと読んでみるね。」



七千年前のラグル族による都市の全ての破壊後

希望をなくし絶望する人々
そんなある日の夜、満点の星空の中......大きな青い流れ星が流れ落ちてきた。

青く宝石のように美しく光る流れ星を見た人々は生きる勇気をもらったそうです。

そしてその伝承が今でも続き、7月7日は流星祭になったそうです。

「だってーー。」

「イベントの流星祭って昔話なんですねーー。」

「スララは何でこの本を読んでたの?流星祭が好きなの?」

「ぷにぷに!」

サナさんの質問にスララは首を横に振る

「流星祭嫌いなの?」

「ぷに!」

どうしてスララは流星祭が嫌いなんだろう..........。

「さて!そろそろ帰ろうか!ギルドに帰ったら会議のお話聞きたいし!」

「そうですね、今日は本を借りてギルドで読みたいと思います。」

「じゃあ帰りますか!」


おまけコーナー 会話だけ

リオ「今日は何しましょうかーー。」

サナ「暇だねーーーー」

リオ「メガネ君は部屋にこもって武器の調整してるみたいですよー」

サナ「そうなんだースララは私の部屋でお昼寝してるよー」



ピンポーン



リオ「誰か来たみたい、はーーい」

ガチャ

ハンド「こんにちはー!」

テン「こんにちはです。」

リオ「ハンドさん!?あと...........。」

テン「私はこのバ.....社長の秘書をしているテンと言います。」

リオ「貴方がテンさん!?俺!このバッグ買い物で使ってます!」

テン「あっあははは。」


サナ「誰が来たの?うわ!」

ハンド「ジェネシスのメンバーかな?よろしくね!」

サナ「リオ君この人なんで顔がロボットのままなの?」

ハンド「聞きたい?」

サナ「聞きたーい!」

ハンド「実はね.........ここに来てすぐの時にねー。モンスターに顔を切り裂かれちゃったんだー。」

サナとリオ「へ?」

ハンド「爪でズバーーって!!景色がうまく見えないくらいにね。でも赤色だけは見えたよ。」

テン「あの時、顔面の形留めてなかったですもんね。」

サナ「もう大丈夫なんですか?」

ハンド「もう気にしてないよ!でも人の時の顔にはもうなれないし、なれても傷跡残りまくりで商売相手の人達に怖がられても困るしーー。」

テン「..........。(気にしてないって嘘の癖に.........。)」

リオ「そういえば.......今日はなんのご用件で?」

ハンド「あ!そうそう、これを持ってきたんだ!」

リオ「これは...............。」

ハンド「お中元的な?和菓子ですよ和菓子!夏をイメージした物になっております!」

サナ「すごーい可愛い!スイカや金魚の形したやつもあるよ!」

ハンド「今後ともファンタジーモールをご贔屓にーー。」

リオ(宣伝が目的だな........この人達。)










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