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第14話「なぜ出会いはいつも突然なのか」
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【東京都内・レーテ本部】
ユイアがレーテ本部の廊下を歩いていると女性隊員達が窓際に集まり、外の様子を見下ろしていた。ユイアは気になり1人の女性隊員に話しかけ尋ねてみる。
「何を見ているんですか?」
「ユイアちゃん今日はね、集合会議があるのよ!」
「集合会議?」
その女性隊員がユイアに集合会議について教えてくれた。レーテの本部は東京都にありそれぞれの県に支部がある。今日は一年に一度あるかないかの「集合会議」それぞれの県の支部長が本部に集合し報告、今年度の予算の割合、支給品の確認などを行なっている。
「なるほど....」
ユイアも気になってみんなが眺めている窓から下を見下ろした。窓の外には大勢の人がおり全員がレーテの隊員服を身につけている。女性隊員の話だとそれぞれの支部の支部長だろう。体格のいい男性や長身な女性、さまざまな人がいる。
「北海道支部の人来てるかな?」
「ねーあの人爽やか系のイケメンだからねー」
「私は大阪支部長がタイプだなー」
女性隊員達はどこの支部長がイケメンなのかという話で盛り上がっており、ユイアはそれをただ横で聞いているだけだった。すると後ろから誰かがユイアの背中をポンポン叩く。振り返るとそこにはルナがいた。
「あ、ルナ!」
「ユイア~ユキタカが呼んでるぞ。」
「呼びに来てくれたの?ありがとう!」
ルナの後ろをユイアはうきうきしながらついていく。その様子を誰かが柱の後ろから眺めていたことにユイアは気づかなかった。
「あれが日代唯愛........」
ルナについていくとユキタカが誰かと話していた。ユキタカより少し背が低い筋肉質な女性だ。茶色の長い髪が開いた窓から吹く風にたなびく。ユキタカはユイアに気づき手を振った。
「こっちだ日代!」
「ユキタカさん遅くなりました!」
「お!君が噂のルーキーだね。」
長身の女性がユイアを少し見下ろし話しかける。ニッと少年のように笑うと手を出してきた。握手だろう。ユイアも笑顔で握手した。
「初めまして!私は日代....」
「日代唯愛だね。知ってるよ、私は神奈川支部長の如月琴子(キサラギ コトコ)よろしくな!」
「はい!」
「如月、そろそろ時間だ。すまない日代、実はお前を呼んだのは俺ではないんだ。」
「え?じゃあ誰が?」
「俺だよー!!」
大きな声がする方へ振り返るとユキタカさんの入院していた同期である進助が車椅子を動かしながら笑顔で手を振っていた。
「進助さん!退院できたんですか!?」
「医者に無理言って頼んだんだ!君に見せたいものがあってね!一緒にガレージに来てくれないかい?君にプレゼントがあるんだ。」
「プレゼント!?はい!じゃあユキタカさん!如月さん!また!」
ユイアは2人に笑顔で手を振るとウキウキワクワクしながらルナと共に進助についていった。その様子を2人は眺めていた。
「礼儀正しいし無邪気でなかなかいい子じゃないか。うちの弟子も見習って欲しいね。」
「で、そのお前の弟子は?」
「うん?たぶん迷子になってる。アイツ方向音痴だから。」
「なるほど。それにしてもお前ずいぶん楽しそうだな。」
「そりゃ楽しみが増えたからね....さ、そろそろ行こうかな。」
そう言うと如月は少し笑い、集合会議を行う会議室に向かって歩き始めた。
「?」
車椅子に乗った進助についていくと一階の外にあるサーキットのような場所に隣接した大きなガレージについた。進助は車椅子を動かしガレージのシャッターの横についている赤いボタンを押す。押した瞬間にガガガガガと大きな音をたて、シャッターが開く。
「ここはね元々俺が使っていた場所なんだ。君、確か変身ヒーローが好きなんだったよね?」
「はっはい!」
「じゃあバイクは好き?」
「YES!!」
シャッターが開き切り、ガレージ内のライトが点灯する。ガレージの中央には中型のかっこいいデザインのバイクが置かれていた。真っ黒いバイクにはマゼンダとピンクのラインが塗装されておりボディにはレーテのロゴが貼られている。
「おぉかっけぇな。」
「かっこいいー!!!!!」
ユイアとルナが釘付けになってそのバイクを見つめ、その様子を笑いながら進助が眺めていた。
「かっこいいだろ。4ストローク単気筒エンジンを使っていてね。軽さと俊敏さを併せ持ち、初心者でも扱いやすい操作性!そして....」
「めちゃくちゃ喋るじゃん....ていうかユイア、バイクの免許持っ..」
「持ってるよ。」
「え!?」
「そう!君!レーテとの契約の時に一緒に提出した履歴書に普通二輪免許持ってるって書いてあったのを見つめてさ!今日から君専用のバイクだよ!」
「本当ですか!?進助さんありがとうございます!」
「他の隊員達はトレーニングルームの方にいるからここのサーキットで試しに走ってみて!」
「はい!」
ユイアは横のテーブルの上に置かれた黒いヘルメットとグローブをつけ、バイクにまたがり右足でブレーキペダルを踏む。進助から受け取ったキーをオンにしクラッチレバーを握ってエンジンをかける。
「おー!」
クラッチを切ってギヤを一速に入れアクセルを回しエンジンの回転数を上げクラッチレバーを少し離し前進し始める。前進し始めるとアクセルを回しながらクラッチを完全に離す。ユイアはサーキットを走り出した。
「ひとっ走り行ってきます!」
【数分後】
「すげぇちゃんと運転できてる。」
「いい感じだね。これも渡せそうだ。」
「?」
進助はポケットから青色のメモリカセットを取り出す。
「あんたのメモリカセットか?」
「その通り、俺の中にいた「レーサー」のメモリスを記憶したメモリカセット。これを持っている限り、俺は戦闘で攻撃に何倍も早い速度を付与できるし俺がハンドルやレバーを握っている乗り物は決して破損しない!っていうのが俺の能力。」
「いいなそれ。」
「もっともこんな脚になっちゃった以上バイクには乗れないんだけどさ。」
「...........」
ルナは言葉が詰まり黙ることしかできなかったが進助はその青色のメモリカセットを手渡してきた。
「これあげる。君に渡せば彼女が使えるようにしてくれるんでしょ?」
「いいのか?」
「もう俺は使えないし。誰かに使って貰えるほうが人の役に立つから。」
ルナが青色のメモリカセットを受けとると進助はニッコリと笑う。そこにバイクに乗ったユイアが速度を落としやってきた。
「進助さーん!ルナー!」
「おっと後輩が帰ってきたぞ、どうだったー?」
「最高です!ちょっとレーテの周り走ってきますね!」
「気をつけてな!」
【その頃レーテ本部内の大会議室】
レーテ本部内では支部長達による会議が行われていた。最初は予算や近況の話などを話していたが今の会議室はザワザワと不穏な空気が流れている。47人以上の人がそれぞれ席に座っておりその中央には司令官である佐久間誉が鎮座していた。
「お久しぶりですねーホマレたいちょー」
近くに座っていた如月がホマレに絡み始める。
「如月くん。今は会議中だ、それに隊長ではなく今は司令だ。」
「はーーい。でも話進みませんよ。だってユキタカが内通者がいるなんて話題を言っちゃうからみんなザワザワしちゃってるよー。」
「まだ可能性の話だ。」
「でもその可能性は高いんだろ?この間の病院の襲撃、それにアイスメーカーのお嬢さん達が泊まっていたホテルの場所とか犯人にバレてたんだろ?内部にいる誰かがメモリス側に伝えたで決定だ。」
バン!!!
ユキタカが強く机を叩く。
「....すまない。」
「分かってるよ。普段はクールぶってるけど仲間を疑ったりするのお前が一番嫌いなのはさ。だからさっさと調べて白黒はっきりつけようぜ。」
「調べる....?」
「同期の私に任せとけって。」
如月は口角を少し上げ、持ってきたパソコンを開いて何かを作成し始めた。
【レーテ本部近くの住宅街】
住宅街の電柱近くで女子高生が不良3人組に電柱の近くで絡まれている。
「君やっぱり可愛いね~また会えたのも運命かもしれないからさー今度こそ俺達と遊ばない?ね?ちょっと遊ぶだけだからー」
「またですか!?やっやめてください!離して!」
いかにも不良そうな男子生徒3人組が怯えた女子高生の手を掴んでいる。女子高生は必死に抵抗するが相手は離してくれない。
バチン!
怯えた女子高生が男子生徒の頬を前回と同じようにビンタする。男子生徒はチッと舌打ちをすると怒りの形相を浮かべた。
「テメェ、こっちがせっかく誘ってやってんのによぉ?その態度はやっぱないんじゃない?オラッ!!!!」
そう言って男子生徒が女子生徒を殴ろうとしたその時だ。後ろから殴ろうとした右腕を誰かが止めた。
「やめろ。男が戦う気のねぇ女に暴力を振るうんじゃねぇ。」
男子生徒達が振り返ると赤髪ポニーテール、オレンジ色の瞳の女子高生が右腕を掴んでいた。
「あ?なんだテメェ?じゃあお前が代わりに俺らと遊んでくれんの?」
「あぁいいぜ。」
そう言うとニヤッと笑いポニーテールの女子高生は指を動かして「かかってこいよ」と挑発する。
「は?なにそれw俺らに喧嘩売ってんの?」
「やっちゃんこの展開見たことある気が......」
「男ってのは喧嘩が好きだろ?かかってこいよ。」
男子生徒達はニヤニヤと笑いながら指をポキポキ鳴らしその女子高生に近づいてきた。
「今度こそ......女が男に勝てるわけねぇだろ!!!」
男子生徒のうちの1人が叫びながら女子高生に殴りかかろうとするが女子高生はその腕を避け、頭を下げた状態で両腕を使って男子生徒の顔を思いっきり押す。少し怯んだ隙を見て相手の顎に勢いよくアッパーを叩き込んだ。そしてそのまま男子生徒は倒れてしまう。
「またかよやっちゃん!テメェ.....よくもやっちゃんを!やっちゃんは前にもやられたんだぞ!」
男子生徒が2人同時に女子高生に向かって走り出してきた。2人の殴りを簡単に避けると1人の鳩尾に強いパンチを2発キックを1発叩き込むともう1人に向かって飛び上がって蹴りつけ2人の顔面を持ちバン!とシンバルのように叩き合わせた。そのまま3人共倒れ込んでしまう。
「よし!勝ったぜーー!!」
「あっありがとうございます!」
「おう!気をつけて帰れよ!」
ポニーテールの女子高生は絡まれていた女子高生を笑顔で見送る、その様子を見ていたバイクに乗ったユイアは彼女に興味を持って話しかけた。相手から見て、ユイアの顔は黒いヘルメットで中の顔が見えない状態だ。
「すごいね君!」
「見てたのか?へへ、そうだろ!横浜の龍!東城茜(トウジョウ アカネ)とはアタシのことよ!」
「何その肩書き!かっこいい!」
そう言うとユイアはヘルメットを外す。外して頭を振るいサイドテールの長い金髪をたなびかせる。その姿を見た瞬間、赤色のポニーテールの女子高生アカネの表情が一気に変わった。
「お前は......日代唯愛!」
「あれ私のことを知ってるの!?もしかしてファン!?!いやー困ったなーえへへ」
「んなわけねぇだろ!アタシはお前を倒すためにここに来たんだ!」
「え!?」
驚いたユイアはアカネの服の肩についたレーテのマークを見つけた。その下に神奈川支部と書かれている。ユイアは他の支部の人がなんで本部の周りの住宅街にいるのか少し疑問に思った。
「神奈川の支部の人....ってことは如月さんの仲間?」
「なんで師匠の事知ってるんだよ!....まぁいい。お前との喧嘩は本部に戻ってからにしてやる。覚悟しておけ!」
アカネはユイアに背を向け堂々と歩き始める。そして数メートル歩き十字路の前に立つとレーテの本部がある場所とは真逆の方角に向かって歩いていってしまったのでユイアは彼女をバイクでゆっくりと走行しついていく。
「おーい」
「なんだよ」
「そっちじゃないよ。」
「え、」
ユイアは後ろの方角を指差す。振り返ると遠くから見ても分かる大きな建物があった。
「ほら、あそこに大きな建物あるでしょ?あれがレーテだよ。」
「わっ....わっ分かってるし!?知ってるから!!?」
「もしかして住宅街歩いてたのってまい....」
「迷子じゃねぇし!?!ただコンビニ行こうと思ってコンビニ探してたら知らないとこ来ちゃってただけだ!!」
アカネは恥ずかしかったのか顔が真っ赤になっていた。ちょっとだけ泣きそうになっている。ユイアはバイクから降りるとバイクを押しながら本部の方に歩き始めた。
「喋りながら一緒に行こ?」
「...............うん。」
少し顔が赤いアカネとユイアはレーテに向かって歩き始めた。一方その頃アカネにボコボコにされた不良達は立ち上がっていた。
「いてぇ......」
「ねぇやっちゃん。」
「なんだよ。」
「もうナンパとかやめてさ大人しく家でゲームしようぜ。」
「.........そうだな。」
不良達はとぼとぼと日が落ち始めた空を背に歩き始めた。その背中は少し寂しく重なった影はお互いがお互いを慰めているように見えた。
ユイアがレーテ本部の廊下を歩いていると女性隊員達が窓際に集まり、外の様子を見下ろしていた。ユイアは気になり1人の女性隊員に話しかけ尋ねてみる。
「何を見ているんですか?」
「ユイアちゃん今日はね、集合会議があるのよ!」
「集合会議?」
その女性隊員がユイアに集合会議について教えてくれた。レーテの本部は東京都にありそれぞれの県に支部がある。今日は一年に一度あるかないかの「集合会議」それぞれの県の支部長が本部に集合し報告、今年度の予算の割合、支給品の確認などを行なっている。
「なるほど....」
ユイアも気になってみんなが眺めている窓から下を見下ろした。窓の外には大勢の人がおり全員がレーテの隊員服を身につけている。女性隊員の話だとそれぞれの支部の支部長だろう。体格のいい男性や長身な女性、さまざまな人がいる。
「北海道支部の人来てるかな?」
「ねーあの人爽やか系のイケメンだからねー」
「私は大阪支部長がタイプだなー」
女性隊員達はどこの支部長がイケメンなのかという話で盛り上がっており、ユイアはそれをただ横で聞いているだけだった。すると後ろから誰かがユイアの背中をポンポン叩く。振り返るとそこにはルナがいた。
「あ、ルナ!」
「ユイア~ユキタカが呼んでるぞ。」
「呼びに来てくれたの?ありがとう!」
ルナの後ろをユイアはうきうきしながらついていく。その様子を誰かが柱の後ろから眺めていたことにユイアは気づかなかった。
「あれが日代唯愛........」
ルナについていくとユキタカが誰かと話していた。ユキタカより少し背が低い筋肉質な女性だ。茶色の長い髪が開いた窓から吹く風にたなびく。ユキタカはユイアに気づき手を振った。
「こっちだ日代!」
「ユキタカさん遅くなりました!」
「お!君が噂のルーキーだね。」
長身の女性がユイアを少し見下ろし話しかける。ニッと少年のように笑うと手を出してきた。握手だろう。ユイアも笑顔で握手した。
「初めまして!私は日代....」
「日代唯愛だね。知ってるよ、私は神奈川支部長の如月琴子(キサラギ コトコ)よろしくな!」
「はい!」
「如月、そろそろ時間だ。すまない日代、実はお前を呼んだのは俺ではないんだ。」
「え?じゃあ誰が?」
「俺だよー!!」
大きな声がする方へ振り返るとユキタカさんの入院していた同期である進助が車椅子を動かしながら笑顔で手を振っていた。
「進助さん!退院できたんですか!?」
「医者に無理言って頼んだんだ!君に見せたいものがあってね!一緒にガレージに来てくれないかい?君にプレゼントがあるんだ。」
「プレゼント!?はい!じゃあユキタカさん!如月さん!また!」
ユイアは2人に笑顔で手を振るとウキウキワクワクしながらルナと共に進助についていった。その様子を2人は眺めていた。
「礼儀正しいし無邪気でなかなかいい子じゃないか。うちの弟子も見習って欲しいね。」
「で、そのお前の弟子は?」
「うん?たぶん迷子になってる。アイツ方向音痴だから。」
「なるほど。それにしてもお前ずいぶん楽しそうだな。」
「そりゃ楽しみが増えたからね....さ、そろそろ行こうかな。」
そう言うと如月は少し笑い、集合会議を行う会議室に向かって歩き始めた。
「?」
車椅子に乗った進助についていくと一階の外にあるサーキットのような場所に隣接した大きなガレージについた。進助は車椅子を動かしガレージのシャッターの横についている赤いボタンを押す。押した瞬間にガガガガガと大きな音をたて、シャッターが開く。
「ここはね元々俺が使っていた場所なんだ。君、確か変身ヒーローが好きなんだったよね?」
「はっはい!」
「じゃあバイクは好き?」
「YES!!」
シャッターが開き切り、ガレージ内のライトが点灯する。ガレージの中央には中型のかっこいいデザインのバイクが置かれていた。真っ黒いバイクにはマゼンダとピンクのラインが塗装されておりボディにはレーテのロゴが貼られている。
「おぉかっけぇな。」
「かっこいいー!!!!!」
ユイアとルナが釘付けになってそのバイクを見つめ、その様子を笑いながら進助が眺めていた。
「かっこいいだろ。4ストローク単気筒エンジンを使っていてね。軽さと俊敏さを併せ持ち、初心者でも扱いやすい操作性!そして....」
「めちゃくちゃ喋るじゃん....ていうかユイア、バイクの免許持っ..」
「持ってるよ。」
「え!?」
「そう!君!レーテとの契約の時に一緒に提出した履歴書に普通二輪免許持ってるって書いてあったのを見つめてさ!今日から君専用のバイクだよ!」
「本当ですか!?進助さんありがとうございます!」
「他の隊員達はトレーニングルームの方にいるからここのサーキットで試しに走ってみて!」
「はい!」
ユイアは横のテーブルの上に置かれた黒いヘルメットとグローブをつけ、バイクにまたがり右足でブレーキペダルを踏む。進助から受け取ったキーをオンにしクラッチレバーを握ってエンジンをかける。
「おー!」
クラッチを切ってギヤを一速に入れアクセルを回しエンジンの回転数を上げクラッチレバーを少し離し前進し始める。前進し始めるとアクセルを回しながらクラッチを完全に離す。ユイアはサーキットを走り出した。
「ひとっ走り行ってきます!」
【数分後】
「すげぇちゃんと運転できてる。」
「いい感じだね。これも渡せそうだ。」
「?」
進助はポケットから青色のメモリカセットを取り出す。
「あんたのメモリカセットか?」
「その通り、俺の中にいた「レーサー」のメモリスを記憶したメモリカセット。これを持っている限り、俺は戦闘で攻撃に何倍も早い速度を付与できるし俺がハンドルやレバーを握っている乗り物は決して破損しない!っていうのが俺の能力。」
「いいなそれ。」
「もっともこんな脚になっちゃった以上バイクには乗れないんだけどさ。」
「...........」
ルナは言葉が詰まり黙ることしかできなかったが進助はその青色のメモリカセットを手渡してきた。
「これあげる。君に渡せば彼女が使えるようにしてくれるんでしょ?」
「いいのか?」
「もう俺は使えないし。誰かに使って貰えるほうが人の役に立つから。」
ルナが青色のメモリカセットを受けとると進助はニッコリと笑う。そこにバイクに乗ったユイアが速度を落としやってきた。
「進助さーん!ルナー!」
「おっと後輩が帰ってきたぞ、どうだったー?」
「最高です!ちょっとレーテの周り走ってきますね!」
「気をつけてな!」
【その頃レーテ本部内の大会議室】
レーテ本部内では支部長達による会議が行われていた。最初は予算や近況の話などを話していたが今の会議室はザワザワと不穏な空気が流れている。47人以上の人がそれぞれ席に座っておりその中央には司令官である佐久間誉が鎮座していた。
「お久しぶりですねーホマレたいちょー」
近くに座っていた如月がホマレに絡み始める。
「如月くん。今は会議中だ、それに隊長ではなく今は司令だ。」
「はーーい。でも話進みませんよ。だってユキタカが内通者がいるなんて話題を言っちゃうからみんなザワザワしちゃってるよー。」
「まだ可能性の話だ。」
「でもその可能性は高いんだろ?この間の病院の襲撃、それにアイスメーカーのお嬢さん達が泊まっていたホテルの場所とか犯人にバレてたんだろ?内部にいる誰かがメモリス側に伝えたで決定だ。」
バン!!!
ユキタカが強く机を叩く。
「....すまない。」
「分かってるよ。普段はクールぶってるけど仲間を疑ったりするのお前が一番嫌いなのはさ。だからさっさと調べて白黒はっきりつけようぜ。」
「調べる....?」
「同期の私に任せとけって。」
如月は口角を少し上げ、持ってきたパソコンを開いて何かを作成し始めた。
【レーテ本部近くの住宅街】
住宅街の電柱近くで女子高生が不良3人組に電柱の近くで絡まれている。
「君やっぱり可愛いね~また会えたのも運命かもしれないからさー今度こそ俺達と遊ばない?ね?ちょっと遊ぶだけだからー」
「またですか!?やっやめてください!離して!」
いかにも不良そうな男子生徒3人組が怯えた女子高生の手を掴んでいる。女子高生は必死に抵抗するが相手は離してくれない。
バチン!
怯えた女子高生が男子生徒の頬を前回と同じようにビンタする。男子生徒はチッと舌打ちをすると怒りの形相を浮かべた。
「テメェ、こっちがせっかく誘ってやってんのによぉ?その態度はやっぱないんじゃない?オラッ!!!!」
そう言って男子生徒が女子生徒を殴ろうとしたその時だ。後ろから殴ろうとした右腕を誰かが止めた。
「やめろ。男が戦う気のねぇ女に暴力を振るうんじゃねぇ。」
男子生徒達が振り返ると赤髪ポニーテール、オレンジ色の瞳の女子高生が右腕を掴んでいた。
「あ?なんだテメェ?じゃあお前が代わりに俺らと遊んでくれんの?」
「あぁいいぜ。」
そう言うとニヤッと笑いポニーテールの女子高生は指を動かして「かかってこいよ」と挑発する。
「は?なにそれw俺らに喧嘩売ってんの?」
「やっちゃんこの展開見たことある気が......」
「男ってのは喧嘩が好きだろ?かかってこいよ。」
男子生徒達はニヤニヤと笑いながら指をポキポキ鳴らしその女子高生に近づいてきた。
「今度こそ......女が男に勝てるわけねぇだろ!!!」
男子生徒のうちの1人が叫びながら女子高生に殴りかかろうとするが女子高生はその腕を避け、頭を下げた状態で両腕を使って男子生徒の顔を思いっきり押す。少し怯んだ隙を見て相手の顎に勢いよくアッパーを叩き込んだ。そしてそのまま男子生徒は倒れてしまう。
「またかよやっちゃん!テメェ.....よくもやっちゃんを!やっちゃんは前にもやられたんだぞ!」
男子生徒が2人同時に女子高生に向かって走り出してきた。2人の殴りを簡単に避けると1人の鳩尾に強いパンチを2発キックを1発叩き込むともう1人に向かって飛び上がって蹴りつけ2人の顔面を持ちバン!とシンバルのように叩き合わせた。そのまま3人共倒れ込んでしまう。
「よし!勝ったぜーー!!」
「あっありがとうございます!」
「おう!気をつけて帰れよ!」
ポニーテールの女子高生は絡まれていた女子高生を笑顔で見送る、その様子を見ていたバイクに乗ったユイアは彼女に興味を持って話しかけた。相手から見て、ユイアの顔は黒いヘルメットで中の顔が見えない状態だ。
「すごいね君!」
「見てたのか?へへ、そうだろ!横浜の龍!東城茜(トウジョウ アカネ)とはアタシのことよ!」
「何その肩書き!かっこいい!」
そう言うとユイアはヘルメットを外す。外して頭を振るいサイドテールの長い金髪をたなびかせる。その姿を見た瞬間、赤色のポニーテールの女子高生アカネの表情が一気に変わった。
「お前は......日代唯愛!」
「あれ私のことを知ってるの!?もしかしてファン!?!いやー困ったなーえへへ」
「んなわけねぇだろ!アタシはお前を倒すためにここに来たんだ!」
「え!?」
驚いたユイアはアカネの服の肩についたレーテのマークを見つけた。その下に神奈川支部と書かれている。ユイアは他の支部の人がなんで本部の周りの住宅街にいるのか少し疑問に思った。
「神奈川の支部の人....ってことは如月さんの仲間?」
「なんで師匠の事知ってるんだよ!....まぁいい。お前との喧嘩は本部に戻ってからにしてやる。覚悟しておけ!」
アカネはユイアに背を向け堂々と歩き始める。そして数メートル歩き十字路の前に立つとレーテの本部がある場所とは真逆の方角に向かって歩いていってしまったのでユイアは彼女をバイクでゆっくりと走行しついていく。
「おーい」
「なんだよ」
「そっちじゃないよ。」
「え、」
ユイアは後ろの方角を指差す。振り返ると遠くから見ても分かる大きな建物があった。
「ほら、あそこに大きな建物あるでしょ?あれがレーテだよ。」
「わっ....わっ分かってるし!?知ってるから!!?」
「もしかして住宅街歩いてたのってまい....」
「迷子じゃねぇし!?!ただコンビニ行こうと思ってコンビニ探してたら知らないとこ来ちゃってただけだ!!」
アカネは恥ずかしかったのか顔が真っ赤になっていた。ちょっとだけ泣きそうになっている。ユイアはバイクから降りるとバイクを押しながら本部の方に歩き始めた。
「喋りながら一緒に行こ?」
「...............うん。」
少し顔が赤いアカネとユイアはレーテに向かって歩き始めた。一方その頃アカネにボコボコにされた不良達は立ち上がっていた。
「いてぇ......」
「ねぇやっちゃん。」
「なんだよ。」
「もうナンパとかやめてさ大人しく家でゲームしようぜ。」
「.........そうだな。」
不良達はとぼとぼと日が落ち始めた空を背に歩き始めた。その背中は少し寂しく重なった影はお互いがお互いを慰めているように見えた。
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