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プロローグ「曇り空の過去」
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【9年前・1月29日】
東京のある街の住宅街にある一軒の家、そこで少女は両親と共に暮らしていた。両親は共働きで日曜日以外はほとんど家にいない。そのため両親が一日中、家にいる日曜日だけが少女の数少ない楽しみであった。少女は休日であるにも関わらず少し早起きして8時までにはテレビの前に座り夢中になってテレビを見つめていた。
「こ~ら!ユイア!またそんな近いところでテレビ見て!ソファに座ってみなさい!」
キッチンから母の声がする。しかし、テレビに夢中になっている少女には全く聞こえなかった。母は何度も朝食を作りながら注意をするが叱っているとは思えないようなおっとりとした優しい声では少女は言うことを聞いてくれない。
「も~あなたからも何か言ってください!」
母の目線は椅子に座ってコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる父の方へ向いた。
「夢中になれるものがあることは素晴らしいことだと僕は思うよ?」
「またそう言ってユイアを甘やかして~!」
「あ、そういえばユイア。明日の誕生日は父さんと母さん有給取ったから一緒にいられるぞ!」
父がそう言うと先ほどまでテレビに釘付けだった少女は父と母の方をすごい勢いで振り返り瞳を輝かせて喜んだ。少女の名前は日代唯愛(ニチダイ ユイア)母親譲りの金髪とピンク色の瞳が可愛いらしい幼い子供である。
「ほんと!?やったやったやったーー!!」
子供らしく飛び跳ねながら全身で喜びを表現している。その様子を父と母はニコニコと微笑み見つめていた。
「誕生日プレゼントは何がいいの?」
母が尋ねるとユイアは真っ先にテレビを指差して「これ!」と言った。テレビには今放送中の変身ヒーローがベルトを巻いて戦闘員達と戦っている様子が映っている。
「そのベルトが欲しいの?」
「うん!私もかっこいいヒーローに変身するの!」
「でもそれ男の子のおもちゃよ?」
母が他の女の子らしいおもちゃを提案するが全部却下で「これがいい」の一点張り。ついに母も諦めることにした。
「じゃあ誕生日プレゼントはそれだな!」
「このベルトと変身アイテムがたくさん入ってて武器の剣も付いてくるセットね!」
「おう!父さんに任せとけ!」
「約束だよ!」
少女はそう言って父の元へやってくると小指を出し父と「ゆびきり」をして約束をする。「朝ご飯できたよー」と母に声をかけられ椅子に座った。
「今日はね!あやちゃんの家でみんなで遊ぶの!」
「そうか、あやちゃん達と仲良く遊ぶんだぞ。」
「今日はユイアが好きなものたくさん作るから早く帰ってくるのよ?」
「はーーーーい!」
朝食を食べ終えたあと少女は父と母に笑顔で手を振って「いってきまーす!」と言い家を出た。
【3時間後】
少女は友達の家で楽しく遊んでいると何か異変を感じた。周りをきょろきょろと見渡すがとくに何か変わった様子はない。
「どうしたのユイアちゃん?」
友達のあやちゃんが声をかける。
「うんうん!なんでもな........」
その時だった。
ガダガタガタガタガタガタ!!
部屋が勢いよく揺れ始め部屋に飾ってある人形やぬいぐるみが床に落ち始める。みんな怖がって少女の元へ近づいてきた。すると友達のうちの誰かが持ってきたスマートフォンから音が鳴り始め、ブーブーブーという音を鳴らしながら女性の声で「地震です!」というアナウンスが流れ続けた。
「うっ嘘!?」
「怖いよぉぉお!」
「みっみんな落ち着いて!」
少女がみんなを落ち着かせようとするがみんな混乱していて聞いてくれない。1分ほどで揺れが治るとあやちゃんのお母さんが焦りながら部屋の扉を開けて「みんな!避難所に行くよ!」と言ってみんなを連れ出し避難場所になっている少女達が通う小学校へ向かった。
「お母さんとお父さん....大丈夫かな?」
少女はそれだけが心残りだった。小学校に向かう最中、少女が見たのは変わり果てた住宅街の姿だった。新しくない建物は全て壁にヒビが入り窓は割れ火事になっている建物もあった。そんな家を見るたびに父と母が心配になってくる。なぜなら少女の家は亡くなった父方の祖父母の家をもらったもので古い家だからだ。父が「そろそろ建て直して新しい家を作ろうか」とよく母に相談していたのを思い出す。
避難場所の小学校へ到着すると真っ先に少女は父と母を探し始めたがどこにも姿がない。少女の心拍数が少しずつ上がっていく。少し時間が経つと街中から消防車とパトカーの音が聞こえ始める。
少女は我慢ができなくなって避難場所から走って自宅まで戻っていってしまった。いつもの道を通って家に着くとそこで見たのは崩れて瓦礫だらけの自分の家の姿だった。瓦礫の隙間から赤い液体が少し滲んで出てくる。
「お父さん!お母さん!」
少女は泣きながら瓦礫をどかし始めた。しかし7歳の少女の持てるものには限りがあり小さい瓦礫しか持てない。途中ガラスで手を切ってしまい手から血がポタポタと流れ始める。それでも少女は瓦礫を動かす。そこに消防の隊員がやってきた。
「君!何をやっているんだ!ここは危険だ!早く避難場所へ!」
「離して!お父さんとお母さんを助けなきゃ!!」
すると瓦礫の奥に人の腕のようなものがあるのが見えてきた。母の腕だ。わずかに少し動いている。
「お母さん!!」
「ゆ.......いあ......?」
さらに奥の方から低い声が瓦礫の中から聞こえてくる、父の声だ。
「ごめんね......ゆいあ...こんなダメなお母さんとお父さんで......ごめんね...ごめんね....」
2人とも小さな声でずっと何かを言っているが泣き喚く少女には聞こえなかった。消防隊員は少女を無理やり抱き抱え避難場所に向かって走り始める。この消防隊員なりの正しい判断なのだろう。
「うわぁあぁあぁぁあぁぁぁあぁぁああああ!!!!」
曇り空の中少女の泣き叫ぶ声が響き渡る。その後隊員達によって両親は救出されたが病院にて死亡が確認された。
原因不明の突如起こった小規模な大地震、人々は「東京大震災」と呼ぶ。
死者1846人
重傷者3321人
軽傷者5817人
「都市部などのビルには被害はないようですね。一部の高速道路や一般道は封鎖していますが......」
「問題は住宅街でしょうね......とくにあそこの地区は古い建物が多いですからね。火の鎮火にもかなり手こずっていましたね。一体原因はなんでしょうか?地震が起こる前兆などは......」
「今問題となっている例の「怪物」が原因の可能性は?」
「今回の震災に「メモリス」は大きく関わっているのではないのでしょうか!?」
「現在我々は警察と共に調査を進めています。」
この震災で両親を失った1人の少女の名前は「日代 唯愛(ニチダイ ユイア)」
これが彼女の物語の始まり。
東京のある街の住宅街にある一軒の家、そこで少女は両親と共に暮らしていた。両親は共働きで日曜日以外はほとんど家にいない。そのため両親が一日中、家にいる日曜日だけが少女の数少ない楽しみであった。少女は休日であるにも関わらず少し早起きして8時までにはテレビの前に座り夢中になってテレビを見つめていた。
「こ~ら!ユイア!またそんな近いところでテレビ見て!ソファに座ってみなさい!」
キッチンから母の声がする。しかし、テレビに夢中になっている少女には全く聞こえなかった。母は何度も朝食を作りながら注意をするが叱っているとは思えないようなおっとりとした優しい声では少女は言うことを聞いてくれない。
「も~あなたからも何か言ってください!」
母の目線は椅子に座ってコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる父の方へ向いた。
「夢中になれるものがあることは素晴らしいことだと僕は思うよ?」
「またそう言ってユイアを甘やかして~!」
「あ、そういえばユイア。明日の誕生日は父さんと母さん有給取ったから一緒にいられるぞ!」
父がそう言うと先ほどまでテレビに釘付けだった少女は父と母の方をすごい勢いで振り返り瞳を輝かせて喜んだ。少女の名前は日代唯愛(ニチダイ ユイア)母親譲りの金髪とピンク色の瞳が可愛いらしい幼い子供である。
「ほんと!?やったやったやったーー!!」
子供らしく飛び跳ねながら全身で喜びを表現している。その様子を父と母はニコニコと微笑み見つめていた。
「誕生日プレゼントは何がいいの?」
母が尋ねるとユイアは真っ先にテレビを指差して「これ!」と言った。テレビには今放送中の変身ヒーローがベルトを巻いて戦闘員達と戦っている様子が映っている。
「そのベルトが欲しいの?」
「うん!私もかっこいいヒーローに変身するの!」
「でもそれ男の子のおもちゃよ?」
母が他の女の子らしいおもちゃを提案するが全部却下で「これがいい」の一点張り。ついに母も諦めることにした。
「じゃあ誕生日プレゼントはそれだな!」
「このベルトと変身アイテムがたくさん入ってて武器の剣も付いてくるセットね!」
「おう!父さんに任せとけ!」
「約束だよ!」
少女はそう言って父の元へやってくると小指を出し父と「ゆびきり」をして約束をする。「朝ご飯できたよー」と母に声をかけられ椅子に座った。
「今日はね!あやちゃんの家でみんなで遊ぶの!」
「そうか、あやちゃん達と仲良く遊ぶんだぞ。」
「今日はユイアが好きなものたくさん作るから早く帰ってくるのよ?」
「はーーーーい!」
朝食を食べ終えたあと少女は父と母に笑顔で手を振って「いってきまーす!」と言い家を出た。
【3時間後】
少女は友達の家で楽しく遊んでいると何か異変を感じた。周りをきょろきょろと見渡すがとくに何か変わった様子はない。
「どうしたのユイアちゃん?」
友達のあやちゃんが声をかける。
「うんうん!なんでもな........」
その時だった。
ガダガタガタガタガタガタ!!
部屋が勢いよく揺れ始め部屋に飾ってある人形やぬいぐるみが床に落ち始める。みんな怖がって少女の元へ近づいてきた。すると友達のうちの誰かが持ってきたスマートフォンから音が鳴り始め、ブーブーブーという音を鳴らしながら女性の声で「地震です!」というアナウンスが流れ続けた。
「うっ嘘!?」
「怖いよぉぉお!」
「みっみんな落ち着いて!」
少女がみんなを落ち着かせようとするがみんな混乱していて聞いてくれない。1分ほどで揺れが治るとあやちゃんのお母さんが焦りながら部屋の扉を開けて「みんな!避難所に行くよ!」と言ってみんなを連れ出し避難場所になっている少女達が通う小学校へ向かった。
「お母さんとお父さん....大丈夫かな?」
少女はそれだけが心残りだった。小学校に向かう最中、少女が見たのは変わり果てた住宅街の姿だった。新しくない建物は全て壁にヒビが入り窓は割れ火事になっている建物もあった。そんな家を見るたびに父と母が心配になってくる。なぜなら少女の家は亡くなった父方の祖父母の家をもらったもので古い家だからだ。父が「そろそろ建て直して新しい家を作ろうか」とよく母に相談していたのを思い出す。
避難場所の小学校へ到着すると真っ先に少女は父と母を探し始めたがどこにも姿がない。少女の心拍数が少しずつ上がっていく。少し時間が経つと街中から消防車とパトカーの音が聞こえ始める。
少女は我慢ができなくなって避難場所から走って自宅まで戻っていってしまった。いつもの道を通って家に着くとそこで見たのは崩れて瓦礫だらけの自分の家の姿だった。瓦礫の隙間から赤い液体が少し滲んで出てくる。
「お父さん!お母さん!」
少女は泣きながら瓦礫をどかし始めた。しかし7歳の少女の持てるものには限りがあり小さい瓦礫しか持てない。途中ガラスで手を切ってしまい手から血がポタポタと流れ始める。それでも少女は瓦礫を動かす。そこに消防の隊員がやってきた。
「君!何をやっているんだ!ここは危険だ!早く避難場所へ!」
「離して!お父さんとお母さんを助けなきゃ!!」
すると瓦礫の奥に人の腕のようなものがあるのが見えてきた。母の腕だ。わずかに少し動いている。
「お母さん!!」
「ゆ.......いあ......?」
さらに奥の方から低い声が瓦礫の中から聞こえてくる、父の声だ。
「ごめんね......ゆいあ...こんなダメなお母さんとお父さんで......ごめんね...ごめんね....」
2人とも小さな声でずっと何かを言っているが泣き喚く少女には聞こえなかった。消防隊員は少女を無理やり抱き抱え避難場所に向かって走り始める。この消防隊員なりの正しい判断なのだろう。
「うわぁあぁあぁぁあぁぁぁあぁぁああああ!!!!」
曇り空の中少女の泣き叫ぶ声が響き渡る。その後隊員達によって両親は救出されたが病院にて死亡が確認された。
原因不明の突如起こった小規模な大地震、人々は「東京大震災」と呼ぶ。
死者1846人
重傷者3321人
軽傷者5817人
「都市部などのビルには被害はないようですね。一部の高速道路や一般道は封鎖していますが......」
「問題は住宅街でしょうね......とくにあそこの地区は古い建物が多いですからね。火の鎮火にもかなり手こずっていましたね。一体原因はなんでしょうか?地震が起こる前兆などは......」
「今問題となっている例の「怪物」が原因の可能性は?」
「今回の震災に「メモリス」は大きく関わっているのではないのでしょうか!?」
「現在我々は警察と共に調査を進めています。」
この震災で両親を失った1人の少女の名前は「日代 唯愛(ニチダイ ユイア)」
これが彼女の物語の始まり。
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