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第279話 イタリア初プレイ

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「ベッカリ。クロスを上げるからゴール前もっと突っ込め。スルーしてもイノーがフォローできるボールを上げてやるから思い切りよく行け」
後半に入りゲームに加わった愛翔はセンターフォワードのヴァスコ・デ・ベッカリにレフトウィングのニコラ・ル・イノーがフォローできるクロスをだすからと指示を出していた。他にもディフェンス時にはバイタルエリアに入りそれぞれのメンバーの理解できる言葉で指示を飛ばす。
「バックスもっと圧力をかけろ。ただし逆サイドは裏を取られないようにホセがカバー」
本来なら愛翔の位置にいるべきボランチのホセ・フェルナンデスをバックスの補強に使う。
「バックス後ろ来てるぞ。ニアをケア」
そうして、愛翔はいつものパターン。相手フォワードのパスコースを潰していく。しかし、さすがはセリエAの上位チーム。ゆるゆるとポジションを移動しパスコースを簡単には潰させない。
愛翔も焦ることなくじわりじわりと次を想定しパスコースひとつづつ潰していく。そして、いつものようにパスコースをひとつは残し、これが精いっぱいだというようにふるまった。
そうしているうちにディフェンダーがどうにかトップチームのフォワードを一旦押し返した。トップチームのフォワードも無理をするつもりは無いと愛翔が残したパスコースに軽くパスを出す。愛翔が狙っていたのはこれだった。”何度も使える手ではないけど”鋭い切り返しで身体を飛ばしパスカットをする。
「あがれ」
愛翔の指示に従い、チャレンジャーチームが一斉に攻撃にうつる。愛翔は上がり目でポジショニングしていたレフトウィングのニコラにロングパスをフィード。自身も俊足を飛ばしいつものエリア、右サイド奥を目指す。
トップチームディフェンダーも素早い対応でニコラの前をふさぐ。それを察知し愛翔が叫ぶ。
「ニコラ、センターへ、ベッカリに戻せ。ニコラはそのまま奥へ。フィリップはベッカリをフォロー」
ニコラの前が完全にふさがる前にボールがベッカリに渡る。トップチームのディフェンダー陣の動きもせわしないが、すぐにベッカリに対応してきた。ベッカリも粘ることなくフォローしてきていたミッドフィルダーのフィリップ・ファン・ヒュープナーにバックパスでボールを渡す。早め早めの対応でトップチームにボールを渡さない。そして、フィリップは両サイドの様子をチラリと確認するとゴール前にハイボールを上げた。ゴール中央に向かって上がったボールはふわりとした弾道で、途中でグイと曲がりゴールエリア右サイドに向かう。愛翔はしっかり反応しボールの落下地点に入り頭を合わせ逆サイドに送った。愛翔のシュートを予測し前に入っていたゴールキーパの手の届かない位置を通りゴールエリア左サイドに詰めていたニコラの前に落ちた。ニコラはそのままシュートシュートを放つ。ゴールキーパーは愛翔からのパスに反応し体勢を崩し戻れない。ゴール、と思われたところに足が差し出されニコラの放ったシュートは軌道を変えられゴールのサイドネットを揺らすにとどまった。
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