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第261話 容赦ない

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「はい、では先生。よろしくお願いします」
「うん、後は私に任せて、君たちは安心して日常生活に戻ってください」
ステラスターFCとの契約保留、盗撮犯についての興信所の報告、そんな話を聞いた週末土曜日。愛翔たちは渡邊美咲(わたなべ みさき)弁護士事務所に来ていた。
「前回の時といい、お世話になります」
愛翔たち3人はペコリと頭を下げオートロックの玄関から外に出る。
「これで、あとは結果待ちか」
「ねえ、これからはどんな感じになっていくの?」
桜が愛翔に尋ねる。
「ん、まあそのあたりは楓の専門分野だろ」
愛翔が楓に水を向ける。
「う、うん。今日の打ち合わせをもとに渡邊先生が訴状を作って裁判所に提出するんだけど、これが早ければ1週間、遅くても1か月ってところかしら。そこから大体10日くらいで相手に特別送達で届くわね。裁判自体は提起から30日以内に第1回口頭弁論があるわね。基本的に私たちがすることはこの時点では無いというか、もう第1回口頭弁論が終わるまでは先生にお任せで良いんじゃないかしら」
「ふーん、その口頭弁論?の日程ってどうやって決まるの?先着順?」
「えと、確か原告側と裁判所が打ち合わせて決めるんじゃなかったかしら」
桜のなんということもない疑問にも律儀に楓が答える。そして愛翔がふっと気づいたように付け加えた。
「そうか、打ち合わせて決めるんだ。そうするとひょっとして先生の都合の良い日が相手にとって抜けられない用事のある日かもしれないな」
「でも、向こうも弁護士立ててくるんじゃないのかしら?」
「まあな。でも自分が訴えられて裁判中に別の大事な用事に集中できるかな?」
「あ、ひょっとしてさっき渡邊先生がお金か相手にダメージ与えるのを優先するかって質問にダメージって言ってたのって」
桜の言葉に愛翔が黒い笑顔で応えた。
「正直言って盗撮の損賠賠償とかってたかが知れてるんだよ。となればってとこだね」
愛翔の返事に今度は楓が首を傾げる。
「でも、その辺りは民事よね。実際のところ屋外の盗撮で刑事罰は難しいと思うのだけど」
「お、さすが楓。法律関係は詳しいね。そう、実際のところ今回の場合適用できそうな法律は県の迷惑防止条例と器物損壊罪くらいなんだよな。それでも一応は告訴して前科持ちになってもらう。まあひょっとしたら軽微とされて不起訴になる可能性もあるけど、これはどうしようもない」
愛翔がそこまで話すと、桜と楓が苦笑しつつ寄り添う。
「愛翔って、本当にこういう時容赦ないわね」
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