上 下
233 / 314

第233話 シュート

しおりを挟む
クラブでの状況は愛翔がトップチームへ昇格しそうだという事で大きく変わっていた。
「じゃあ住吉は近々上に上がるのか」
「まあ、あの実力と実績だからな」
「むしろ遅いくらいだろ」
「住吉が上に上がったなら、後釜は……」
そんなチームメンバーの囁きを後ろに愛翔はますます精力的にトレーニングメニューをこなす。ボールタッチ、リフティング、ドリブル、フェイント、基本テクニックの細部までチェックする。
続けてショートパス、ドリブルからのパス回し、シュート。キックもアウトサイドキック、インサイドキック、アウトサイドフロント。球筋もストレート、右カーブ、左カーブ、無回転での揺れから落ちるボールまで様々だ。仕上げに全力でインステップキック。ボールがゴール枠上限から一気に降下する。十分なフィジカルを手に入れた愛翔の強烈なドライブシュート。
それを見ていた諏訪正弘(すわ まさひろ)と射場充(いば さとる)、ステラスターFCU18チームの正副ゴールキーパー2人が囁き交わす。
「なあ、住吉の最後のドライブシュート。射場あれ止められるか?」
「ハハ、諏訪、あれをまともに止められたらきっとトップチームに呼ばれるぞ」
「だよなあ、あれキャッチしても身体ごと持っていかれるやつだろ?」
「多分角度をキッチリ決めて弾くしか防ぐのは無理じゃないかな、それにしてもかなり難易度高いと思うけど」
そんな話をしているふたりの後ろから
「フリーだからあんなふうに撃てるんだよ。きついマーク付けられたらああは出来ないぞ」
ハッとして振り返ったところには片目をつぶった愛翔が立っていた。
「あ、住吉。そうは言ってもな」
「あのなあ、射場も諏訪も良く考えてみろよ。PKを簡単に止められるか?」
そう言うと愛翔は2人の肩を軽く叩いてフォワード陣の練習に入っていった。
しおりを挟む

処理中です...