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第223話 説得依頼
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表彰式も終わり、楓たち”春”のメンバーは会場の観客席にぼーっと座っている。
「私達全国コンクールで特別賞もらったのね」
ぽつりと長嶺が呟いた。
「そうよ、改めて4人で3年間頑張ってきてよかったって思ったわ」
「1年生の頃は楓ちゃん苦労してたものね」
高校生になってギターを始めた楓は想いもひとしおだった。そんな4人の邪魔をしないようにと愛翔と桜は少し離れたところから眺めていた。
「あ、いたいた。君、住吉愛翔君よね、となりにいるのは華押桜さんであってるかしら?」
そんなところに椛山が何を考えたか愛翔と桜に接触してきた。
愛翔も桜も、なんだこいつと顔を顰めるけれど、スカウトとしての押しの強さなのか椛山はグイグイくる。
「ね、そうでしょ?Jリーガー目前のサッカー選手と女子バスケットボールインターハイ3回戦出場の立役者で橘さんの幼馴染の」
愛翔は桜を自分の後ろに隠し椛山に向かい合った。
「それなりに名前は知られている自覚はあるので、なんでそれを知って言うほどではありませんが、何か用ですか?不審者さん」
「不審者?違いますよ。私はブラニーズプロダクションのスカウトで椛山早紀といいます」
そう言いながら椛山が名刺を差し出す。愛翔は一応という感じで名刺を受け取る。
「スカウト部主任椛山早紀さんですか。まあ、名刺なんていくらでも作れますからね」
愛翔としては今のところ警戒を解く理由がない。それでも一応はと名刺を確認した。
「いや、本物ですから」
「自分で偽物だという偽物はいないと思いますが?」
「先ほど橘さんに声を掛けた時にはしまってあったので見せられませんでしたが、この会場に入るのに参加者とその関係者、スタッフ以外は事前に申請してこういう入場許可証をもらってるんです。こ、これで信じてもらえませんか」
確かに椛山の首から許可証がぶら下がっている。その許可証を右手で持ち上げて愛翔に見せた。それは確かにブラニーズプロダクション所属となっていた。
「まあ、椛山さんがブラニーズプロダクションのスカウトだということは、とりあえず信じます。でも、俺たちに声を掛けてきた理由がわかりませんね」
愛翔は睨むように椛山に視線を向け不信感を隠さない。ふうと深呼吸をした椛山が改まった態度で愛翔に向かって口を開いた。
「橘さんを説得するお手伝いをしてもらいたいの。あの子には才能があるわ。それに見た目もとても整っているし、さっきのMCを聞いてもステージで足がすくむような感じもないし芸能界に向いていると思うの」
「お断りします」
即答だった。椛山は驚いた顔でたずねてきた。
「そ、その理由を教えてもらえるかしら?」
「俺たちには既に目標としているものがあります。楓自身がやりたいというのであれば別ですが、俺が説得することはありません」
「私達全国コンクールで特別賞もらったのね」
ぽつりと長嶺が呟いた。
「そうよ、改めて4人で3年間頑張ってきてよかったって思ったわ」
「1年生の頃は楓ちゃん苦労してたものね」
高校生になってギターを始めた楓は想いもひとしおだった。そんな4人の邪魔をしないようにと愛翔と桜は少し離れたところから眺めていた。
「あ、いたいた。君、住吉愛翔君よね、となりにいるのは華押桜さんであってるかしら?」
そんなところに椛山が何を考えたか愛翔と桜に接触してきた。
愛翔も桜も、なんだこいつと顔を顰めるけれど、スカウトとしての押しの強さなのか椛山はグイグイくる。
「ね、そうでしょ?Jリーガー目前のサッカー選手と女子バスケットボールインターハイ3回戦出場の立役者で橘さんの幼馴染の」
愛翔は桜を自分の後ろに隠し椛山に向かい合った。
「それなりに名前は知られている自覚はあるので、なんでそれを知って言うほどではありませんが、何か用ですか?不審者さん」
「不審者?違いますよ。私はブラニーズプロダクションのスカウトで椛山早紀といいます」
そう言いながら椛山が名刺を差し出す。愛翔は一応という感じで名刺を受け取る。
「スカウト部主任椛山早紀さんですか。まあ、名刺なんていくらでも作れますからね」
愛翔としては今のところ警戒を解く理由がない。それでも一応はと名刺を確認した。
「いや、本物ですから」
「自分で偽物だという偽物はいないと思いますが?」
「先ほど橘さんに声を掛けた時にはしまってあったので見せられませんでしたが、この会場に入るのに参加者とその関係者、スタッフ以外は事前に申請してこういう入場許可証をもらってるんです。こ、これで信じてもらえませんか」
確かに椛山の首から許可証がぶら下がっている。その許可証を右手で持ち上げて愛翔に見せた。それは確かにブラニーズプロダクション所属となっていた。
「まあ、椛山さんがブラニーズプロダクションのスカウトだということは、とりあえず信じます。でも、俺たちに声を掛けてきた理由がわかりませんね」
愛翔は睨むように椛山に視線を向け不信感を隠さない。ふうと深呼吸をした椛山が改まった態度で愛翔に向かって口を開いた。
「橘さんを説得するお手伝いをしてもらいたいの。あの子には才能があるわ。それに見た目もとても整っているし、さっきのMCを聞いてもステージで足がすくむような感じもないし芸能界に向いていると思うの」
「お断りします」
即答だった。椛山は驚いた顔でたずねてきた。
「そ、その理由を教えてもらえるかしら?」
「俺たちには既に目標としているものがあります。楓自身がやりたいというのであれば別ですが、俺が説得することはありません」
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