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第212話 お風呂
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光野高校軽音楽部”春”の全国コンテスト遠征初日は、1人の精神的死亡者以外をだしつつどうにか終わった。
そして今は夕食まで終え夜のフリータイム。楓はスマホを片手にポチポチと入力をしている。
「これがここのAPだから、パスワードが257……、これで。あ、繋がった」
そこに同室の市野が何をしているのかと声を掛けてきた。
「ね、楓ちゃん。何をしてるの?」
「ん、この部屋、Wi-Fiがあったから使えるように設定してるのよ」
「あ、いいわね。あたしも……。ねえ楓ちゃん、できたらあたしのも設定お願いしていい?」
基本的に機械音痴の市野は楓にごろにゃんと気まぐれな猫が遊んで欲しいとすりよってくるように甘えていく。
「もう、紫穂ったら。そろそろこのくらいの事は出来るようにならないと進学してから困るわよ」
そう言いつつも手を楓は伸ばして市野のスマホを受け取る。
「ほら、一緒にやってあげるから覚えよ」
楓は、笑顔でそう言うと市野のベッドに並んですわり、市野のスマホの操作を始めた。
「ほらちゃんと見てね。ここ、この設定のところをタップして、次にネットワーク設定を開いて……」
スイスイと設定を進めていく楓。2年前のたどたどしい操作はさすがに鳴りを潜めていた。
「これで完了ね。今、コンビニやカフェなんかで無料Wi-Fiあるところ多いから、これは覚えておいた方が良いわよ。あ、ただしセキュリティ設定の無いフリースポットは危ないから使わないようにね」
「ふええ、楓ちゃんいつの間にそんな詳しくなったの?以前はあたしにさえ色々聞いて来てたのに」
「それは愛翔が色々詳しいから教わって、って私が紫穂に聞いてたのって1年の頃でしょう」
そんな楓の反応に市野はペロリと舌を出し嬉しそうにスマホをいじり始めた。
仕方ないと、楓は苦笑しつつトークアプリを立ち上げる。チラリと時計で時間を確認し少し悩んだうえで一旦電源スイッチを押しスリープモードにする。
「紫穂、私お風呂入ってくるね」
楓は市野が黙ってひらひらと手を振るのを見て、少し呆れながら大浴場へ向かった。
楓が浴場に入ると、そこには先に入っていた長嶺と大家がお湯につかってくつろいでいる。
「あ、楓ちゃん遅かったね。気持ちいいよ。早くきなよ」
長嶺の声に楓も笑顔で答え、身体を洗うと湯船に入っていった。
「はあ、大きなお風呂っていいわね」
「これも旅行の醍醐味のひとつよねえ」
そんな話から大家が舵を切り爆弾を投げた。
「楓ちゃん、住吉君の部屋にお泊りってどのくらいしてるの?」
「え?」
突然の話題にさすがの楓も固まる。
「ほら、以前一緒のベッドで抱きついてお泊りしてるって言ってたじゃない。あれって1回限りのことじゃないんでしょ」
愛翔が今の関係を受け入れ、先を見通す言葉を口にし始めたため最近では楓も不安をそれほど感じているわけでは無いが関係が進んでいるわけでは無いため楓的に完全に順調とも言い切れない。そんな事情もあり信頼している仲間にはつい本音が漏れる。
「お泊りは週の半分くらい。でも私はもう少し進みたいのだけど……」
「ふーん、住吉君がヘタレていると」
揶揄う口調でニマニマと生暖かい視線を向けながら大家が口にする。
「愛翔も私を大切にしてくれているのは伝わってくるし、最近は少しずつ将来の話もするの。でも……」
「まあ、住吉君の場合、身体の事もあるし慎重になるのは分からないではないけどね。楓ちゃんだけじゃないんでしょ、お泊りするの」
「え、ええ。桜も私と同じくらい」
それを聞いた大家は、少しばかり呆れた顔をした。
「女神様と天使様が日替わりで添い寝して、それでも手を出さないって住吉君、ヘタレを超えてED疑惑が出ちゃうわ。そうでなければとんでもない鋼メンタルね。話を聞いている感じだと楓ちゃんも華押さんも2人ともウェルカムなんでしょ?」
大家の直接的な物言いに楓は耳まで染めて口を閉ざす。実際には愛翔には治療の副作用による事情があり大家の言うほど単純な問題ではないが、さすがに楓としてもそこまで話すつもりはない。
そこからは大家が問い詰め楓が躱すを繰り返し
「そろそろ上がるわ。のぼせちゃいそうだから」
楓が撤退を選ぶことで終わった。
そして今は夕食まで終え夜のフリータイム。楓はスマホを片手にポチポチと入力をしている。
「これがここのAPだから、パスワードが257……、これで。あ、繋がった」
そこに同室の市野が何をしているのかと声を掛けてきた。
「ね、楓ちゃん。何をしてるの?」
「ん、この部屋、Wi-Fiがあったから使えるように設定してるのよ」
「あ、いいわね。あたしも……。ねえ楓ちゃん、できたらあたしのも設定お願いしていい?」
基本的に機械音痴の市野は楓にごろにゃんと気まぐれな猫が遊んで欲しいとすりよってくるように甘えていく。
「もう、紫穂ったら。そろそろこのくらいの事は出来るようにならないと進学してから困るわよ」
そう言いつつも手を楓は伸ばして市野のスマホを受け取る。
「ほら、一緒にやってあげるから覚えよ」
楓は、笑顔でそう言うと市野のベッドに並んですわり、市野のスマホの操作を始めた。
「ほらちゃんと見てね。ここ、この設定のところをタップして、次にネットワーク設定を開いて……」
スイスイと設定を進めていく楓。2年前のたどたどしい操作はさすがに鳴りを潜めていた。
「これで完了ね。今、コンビニやカフェなんかで無料Wi-Fiあるところ多いから、これは覚えておいた方が良いわよ。あ、ただしセキュリティ設定の無いフリースポットは危ないから使わないようにね」
「ふええ、楓ちゃんいつの間にそんな詳しくなったの?以前はあたしにさえ色々聞いて来てたのに」
「それは愛翔が色々詳しいから教わって、って私が紫穂に聞いてたのって1年の頃でしょう」
そんな楓の反応に市野はペロリと舌を出し嬉しそうにスマホをいじり始めた。
仕方ないと、楓は苦笑しつつトークアプリを立ち上げる。チラリと時計で時間を確認し少し悩んだうえで一旦電源スイッチを押しスリープモードにする。
「紫穂、私お風呂入ってくるね」
楓は市野が黙ってひらひらと手を振るのを見て、少し呆れながら大浴場へ向かった。
楓が浴場に入ると、そこには先に入っていた長嶺と大家がお湯につかってくつろいでいる。
「あ、楓ちゃん遅かったね。気持ちいいよ。早くきなよ」
長嶺の声に楓も笑顔で答え、身体を洗うと湯船に入っていった。
「はあ、大きなお風呂っていいわね」
「これも旅行の醍醐味のひとつよねえ」
そんな話から大家が舵を切り爆弾を投げた。
「楓ちゃん、住吉君の部屋にお泊りってどのくらいしてるの?」
「え?」
突然の話題にさすがの楓も固まる。
「ほら、以前一緒のベッドで抱きついてお泊りしてるって言ってたじゃない。あれって1回限りのことじゃないんでしょ」
愛翔が今の関係を受け入れ、先を見通す言葉を口にし始めたため最近では楓も不安をそれほど感じているわけでは無いが関係が進んでいるわけでは無いため楓的に完全に順調とも言い切れない。そんな事情もあり信頼している仲間にはつい本音が漏れる。
「お泊りは週の半分くらい。でも私はもう少し進みたいのだけど……」
「ふーん、住吉君がヘタレていると」
揶揄う口調でニマニマと生暖かい視線を向けながら大家が口にする。
「愛翔も私を大切にしてくれているのは伝わってくるし、最近は少しずつ将来の話もするの。でも……」
「まあ、住吉君の場合、身体の事もあるし慎重になるのは分からないではないけどね。楓ちゃんだけじゃないんでしょ、お泊りするの」
「え、ええ。桜も私と同じくらい」
それを聞いた大家は、少しばかり呆れた顔をした。
「女神様と天使様が日替わりで添い寝して、それでも手を出さないって住吉君、ヘタレを超えてED疑惑が出ちゃうわ。そうでなければとんでもない鋼メンタルね。話を聞いている感じだと楓ちゃんも華押さんも2人ともウェルカムなんでしょ?」
大家の直接的な物言いに楓は耳まで染めて口を閉ざす。実際には愛翔には治療の副作用による事情があり大家の言うほど単純な問題ではないが、さすがに楓としてもそこまで話すつもりはない。
そこからは大家が問い詰め楓が躱すを繰り返し
「そろそろ上がるわ。のぼせちゃいそうだから」
楓が撤退を選ぶことで終わった。
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