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第190話 進路(不安)

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「では、事前に連絡調整してあるように明日から3日間事前に渡した予定表に従って進路指導の3者面談を行うからな。保護者の方にもう一度確認しておくように」
朝のSHRで愛翔たち3人の所属する3年A組担任村井圭介(むらい けいすけ)が話している。1年時の事件、愛翔の病気等を学校側が考慮し愛翔たち3人は2年3年と同じクラスとなっていた。
「進路かあ。桜も楓も、もう決めてるんだよな」
愛翔自身はサッカーと大学進学の間で未だに揺れている。
「ええ、あたしは経済ね。第一志望はT大、第二志望はKO」
「私も、やっぱり法学目指すわ。第一志望は、桜と同じT大、ただ第二志望が決まらないのよね」
桜も楓も既に決めているのを聞いて、しかも志望動機も分かっている愛翔はどうしたものかと悩みを深くした。
「愛翔は、まだ決め切れてない感じかしら?」
「ああ、身体もだいぶ戻ってきているけど、万全じゃないし、万全になったからって上に上がれる保証は無いしな。やっぱり勉強も頑張りながらサッカーも。でもこれからの時期サッカーやりながらの勉強で足りるかどうかっていう不安もあるんだよな」
愛翔は楓の言葉に不安を口にする。強がらず自然に不安を口にできる、その程度までは近しい関係なのだけれど、楓はもう少し寄りかかって欲しいと愛翔に視線を向けていた。

その夜愛翔がクラブの練習から帰り、食事を摂ったあとの勉強会。
「ね、愛翔こんなの持ってきてみたのよ」
楓がバッグから出したのは分厚い赤い本。
「これは、T大の過去問題集か。存在は知ってたけど初めて見たな」
愛翔が興味深そうにペラペラとページをめくる。
「楓が、夕方本屋に寄るって言ってたのはそれだったのね」
桜も愛翔の横から覗き込んだ。
「過去6年分の入試問題か。すごいな」
楓はそんな愛翔と桜に微笑みながら提案があると言い出した。
「愛翔は、今の勉強で試験に対応できるか不安に思ってるのよね」
頷く愛翔に楓が説明をする。
「だったら、これを本番の時間通りに解いてみるというのはどうかなって思って買ってきたの。幸いなことに光野の授業は2年時までで通常の高校の範囲は終わっているから。それでいい結果が出れば普通に安心でしょ。もし不本意な結果でも今からならまだ間に合うと思うし。どうかしら?」
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