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第170話 幼馴染の心遣い

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愛翔は目の前の状況に困惑していた。
「何がどうしたらこういう状況になるんだ?」
愛翔の目の前にはパジャマに着替えた楓が枕を抱きしめて立っている。
「だって、桜は泊めたのでしょ?なら私も泊めてくれないと不公平だと思うの」
「不公平って、あの時は桜の勢いというか気合というかに押し込まれて、気付いたら桜は寝てたし」
愛翔がうろたえ目を泳がせながら言いつのる。それならばと楓がニッコリと笑顔で愛翔をベッドに押し倒した。
「なら、こうしてこのまま私も寝てしまえば同じよね」
そう言うと楓はベッドに入り込みそのまま愛翔に抱きついた。
「楓。そういう無茶はしないでくれ。それに俺だって男だ。いつ弾みでそういうことを考え無しにしてしまうかもわからない」
愛翔は顔を顰め楓を引き剥がそうとする。
「あら、そういう事をしてくれるならむしろ嬉しいわ。というよりむしろそうして欲しいから来ているのよ。わかって欲しいな」
そう言うと抱いていた枕の影から小さな箱を取り出し枕もとに置く。”0.01”箱の表面にはそう書かれていた。そのまま愛翔を抱きしめ愛翔の唇に自らの唇を這わした。
愛翔の胸に顔を埋め目を閉じている楓。その手は愛翔の背中に周っていて愛翔が逃げるのを妨げている。
”桜も楓も覚悟を決めて来ているのにな。それなのに俺は”愛翔はそんなことを考えながら腕の中で寝息をたてる楓の頭から背中を優しく撫でていた。

 翌朝ベーコンを焼く良い匂いとカチャカチャと食器のぶつかる小さな音に愛翔は目を覚ました。腕の中にはまどろみの中そろそろ目を覚ましそうな雰囲気の楓がいる。”そろそろ起きるか”愛翔がそんなことを考えた時、”カチャリ”寝室のドアが開いた。
「あいとー、かえでー、朝だよー。ご飯の準備も出来たからそろそろ起きてー
あ、愛翔は起きてたんだ。じゃあ楓起こしてきてね」
軽い言葉を掛ける桜に愛翔は”つまり桜も知っていた”という事に気付く。少しばかり頭痛を感じながらも桜に言われた通り楓を起こし、洗面所で顔を洗い、簡単に寝癖を直し髪を整える。
リビングに愛翔が戻ると、桜と楓がにこやかに談笑していた。
「おまえら、2人してグルだったのか?」
「グルって言い方は酷いなあ」
桜がクスクスと笑いながら返す。
「これからあたし達時々泊めてもらうから。あ、手を出していいからね。むしろ出してね」
「はあ、悩んでる暇もないな」
愛翔は苦笑しつつ2人の幼馴染の心遣いに感謝のきもちを覚えた。
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