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第158話 お姉さん

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”住吉愛翔急性白血病”、”再起は絶望的か?”、”白血病の治癒率は”、そんなタイトルの記事がスポーツ誌を賑わせた2カ月後。愛翔は病院の屋上で街を眺めていた。
「愛翔君、こんなところにいたんだ。探しちゃったよ」
「え、お……、姉さん。まだこの呼び方には慣れないな」
愛翔は後ろから呼びかけた丘に照れくさそうな顔で返事をする。
「明日退院だって?」
「ああ、姉さんにも桜や楓にも世話になったけど、どうにか日常生活に支障のないレベルまで数値が戻ったそうだから」
「よかった。サッカーへの復帰は?」
穏やかな笑顔を見せる2人は紛れもなく姉弟の姿だった。
「そっちは徐々に。身体への負担を掛け過ぎないように基礎トレからゆっくりとだね。俺はまだ16歳。雑誌に書かれていたように諦める必要は無いしね。せっかく姉さんが助けてくれた命だしね、わずか3カ月のブランクでダメになるほどヤワじゃないさ。そういえばこんな昼間から来て学校は?」
「ふふふ、何言ってるのよ。もう春休みよ」
「春休みか。退院したらまずは進級試験だな。問答無用で留年もあり得たから助かったよ」
「愛翔君の場合は元々2年への編入も可能だったてのも大きいと思うわよ」
「そうかな」
「ええ、だからこれは愛翔君の今までの努力が今の愛翔君を助けてくれているって事よ。胸を張って受け入れなさいな。Heaven helps those who help themselvesよ」
それは奇しくも初詣で愛翔自身が口にした言葉。愛翔はふっと頬を緩めた。
「ああ、ありがとう」

「ああ、あいとー、こんなとこに居たあ」
屋上の出入口ドアが勢い良く開き、桜が駆け込んできた。その後ろには穏やかに微笑む楓が続いている。
「愛翔、明日退院だって?」
桜がいつもの定位置に抱きつきながら嬉しそうに笑顔でたずねる。
「ああ、今も姉さんとその事を話していたところだ」
「ふふ、丘先輩が愛翔の実のお姉さんだったなんてね。丘先輩は最初から気づいていたんですか?」
楓も愛翔の腕に腕を絡ませ笑顔でたずねる。
「そうね、私は分かってたわね。実際幼いころに何度か愛翔君に会ったことはあるのよ。愛翔君は覚えてなさそうだけど」
愛翔は丘の言葉に、眉間にしわを寄せ考え始める。
「ふふ、思い出せるかな?動物園とか公園とか遊園地とか行ったわよ」
愛翔の瞳に理解の光がともった。
「あ、時々遊んでくれてた、どっかのお姉さん?」
「どっかのお姉さんは酷いなあ。でも正解。ま、こういう時1年の年の差が出るわね。私は分かってて覚えてるけど、愛翔君は記憶がぼんやりしてるのね。当時”おねーちゃん、おねーちゃん”って懐いてたのにね」
丘の揶揄うような言葉に愛翔も苦笑いをしつつも当時を懐かしむ顔を見せた。
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