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第153話 観光

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ゲームの翌日ホテルで朝食をとりながら愛翔たちは雑談をしていた。
「ね、愛翔。愛翔が住んでいた場所ってここから遠いの?」
桜が何気なく尋ねたのには理由がある。日本チーム、日本チームのサポーターが宿泊しているのは愛翔がアメリカでの3年を過ごした同じ州内にあったからだ。
桜の素朴な疑問に愛翔は少し考え
「アメリカ人の感覚ならそこそこ近い。でも日本人の感覚だとかなり遠いよ」
「ちょっと見に行くってわけにはいかない感じ?」
「それはさすがに無理だよ」
「でも同じ州内よね」
「日本の県と同じように言われることが多いけどデカいからね。ちょっとお出かけってわけにはいかないよ。それに日本と違ってアメリカって大都市以外は公共交通機関があまり細かくないんだよ。だから車を運転できない未成年者は保護者と一緒じゃないとあまり移動できないんだ」
「ちぇぇ、愛翔の通ってた学校とか見たかった、友達とかも会ってみたかったなぁ」
「ま、仕方ないだろ。この街の市内観光くらいなら付き合うから我慢してくれ。とは言ってもあまり外出に向いた季節じゃないけどな。あ、あと市内観光は昼間な。夕方以降は治安があまり良くないから。地元の人間なら行って良いところとダメなところも分かるんだろうけど、俺はさすがそこまでは分からないから」
「むう、仕方ない。市内観光で手を打つことにするわ。楓も行くでしょ?」
「うん、行きたいな。で、愛翔もそんなに詳しくはないみたいだけど。私たちよりは流石に知ってるのよね。おもしろそうなところってある?」
「そうだなぁ、街の樹木園・植物園てのがあってそこそこ評判がいいかな。あと博物館と、高層タワーで街を一望できる展望室があるな。あとはショッピングモールか。これだけでも1日で全部回るのは多分無理。午前に1ヶ所、午後に1ヶ所くらいにしておいた方がいい」
桜と楓はゴショゴショと相談をはじめた。
「じゃ、午前中に樹木園・植物園と午後にショッピングモールにしましょう」
「ああ、自分でリストに挙げておいてなんなんだが、樹木園・植物園はこの季節お勧めできない。寒くてキツイ」
「じゃあ博物館でいいわね」

「このアベニュートロリーである程度移動して、最寄の駅から歩きな」
「ほーい」
「路面電車?」
「まあ、そうだな」
ちょうど来たアベニュートロリーに乗り込む3人。
「あら?アイト」
そこに乗り合わせたのはクリスとケイトだった。
「何よあなた達」
桜と楓が警戒心を隠そうともしないで愛翔との間に立ちふさがる。
「アメリカチームのサポーターもこの街のホテルに泊まっているのよ。で、あたし達は観光に出て来たところ。見たところあなた達もじゃないの?」
「だから何かしら?」
「一緒に回らない?大勢で周った方が楽しいと思うわよ」

結局一緒に街を回ることにした5人は、最初に博物館に訪れていた。
「ここの博物館は昔は普通のアパートだったそうよ」
ケイトが嬉しそうに説明を始めた。
「へえ、だからこいう作りなんだ」
「それで当時の大統領がパレード中に撃たれて死んだんだけど、どんなに詳しく調べてもつじつまが合わなくて。で、撃った犯人がいたことになっているここを博物館にしたって話」
「あなた詳しいのね」
楓が見直したとばかりに感心している。
「これが暗殺に使われたことになっているのと同じ型の銃」
博物館に居る間中ケイトは嬉しそうに説明をしていた。

「これが?」
「ああ、ネットで調べただけだけど、結構人気らしいラムバーガー」
コテンと首を傾げて尋ねる桜に愛翔が応えている。
「結構なボリュームね」
セットされていたナイフとフォークで切り取りながら楓が珍しそうにしている。
桜は既に気にするのをやめてハグハグと食べていた。
「アメリカの普通のバーガーってのはこういうものよ。フォストフードのバーガーはちょっと別物ね」
クリスも今のところ攻撃的な発言はない。愛翔はやや警戒心をさげつつ4人が多少なりと仲良くしているのを見てホッとしてた。
「アイト。それで午後の予定は?」
ケイトは愛翔たち3人の予定に完全に合わせるつもりのようだ。
「ん、午後はショッピングの予定。南部は危ないって聞いているから北部のショッピングパークが良さそうかなって思ってる。」
「南って危ないの?」
「まあネット情報だし普通に住んでる人もいるし商店もあるから全部が全部じゃないんだろうけど、その危ないとこを把握できていない観光客は近づかないほうが良いらしい。特別そこに行きたい場所があるわけでもないから余計なリスクとる必要もないだろ。特に今回のメンバーだと変な奴らが絡んできそうだからな。俺が守るっても限界あるしさ」
ケイトは愛翔の説明に頬を染め
「もう、そういうところよ。そうだからアイトを諦められないのよ」
愛翔は首を傾げる。
「そんなたいそうな内容があったか?」
そんな愛翔の様子にケイトだけでなく、桜も楓もそしてクリスも盛大にため息をついた。
「そんな風にサラリとナチュラルに守ってくれるって言ってくれる、しかも言葉だけじゃなく本当に守ってくれるって信じられる男の子はそうそういないわ」
楓が愛翔の左腕に抱きつきながら囁いた。愛翔としては特別な事を言ったつもりもないため更に首を傾げることになったけれど、
「まあ、そういうものだと思っておくよ」
その後ショッピングモールに移動し、土産物や、個人的に興味のあるものをいくつか買ってその日は帰りのアベニュートロリーの駅に向かった。
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