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第138話 ハロウィン FCにて

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「ではステラスターFC主催ハロウィンパーティを始めさせていただきます」
「ワー!!」
歓声とパチパチパチパチ拍手と共に始まったステラスターFC主催ハロウィンパーティ。所属選手は皆自前で準備したかまたはFCが準備したコスチュームを身に纏っている。定番のジャックオーランタン、吸血鬼、白い仮面の謎の怪人、アメコミヒーロー各種、それでも誰が誰なのかは所属カテゴリーとナンバー、そして名前が書かれたプレートを胸につけているため分かるようになっている。
その中で愛翔は最近人気の鬼と戦う日本のアニメの主人公のコスチューム。つまり顔がしっかり出ている。U18日米交流戦の最終メンバーに残ったこともありそこそこに人気の愛翔はファンの人たちにツーショットや握手をねだられたり、サインをしたりと忙しくホスト側として動いていた。
参加したファンは、それぞれお目当ての選手を探して歩き回り、見つけては握手をねだりツーショット写真を撮っている。選手たちも気軽にそれらに応え和気あいあいとした雰囲気だ。
ただ、現時点では一般客は小さな子供以外は普通の外出着の人たちばかり。開場後更衣室が解放されており、そちらで自前のコスチュームに着替えた来場者がそろそろ現れはじめる。入場者には一定数の年少者がいることが予想されていたことから事前にあまり露出のあるコスチュームは避けるように注意がされていたため、極端な混乱こそ無かったけれど、それなりに派手なコスチュームを身に纏った来場者も居て歓声があがる。
「住吉さん、一緒に写真お願いします」
「はい、いいですよ」
にこやかに愛翔が撮影に応じ……
そして、ひときわ大きな歓声が上がり1つのグループが会場に現れる。
先頭を歩いているのは女の子。羽の耳飾りのついたヘルメット、軽やかなワンピースの上にブレストプレートをつけ背中に大きめの白い羽、ワルキューレのコスプレをした高野だった。その後ろには丘を先頭として光野高校でのハロウィンパーティでと同じコスチュームを身に纏ったいつもの4人。レベルが違うとばかりに人だかりができる。
「はい、一般の方を取り囲まないでくださいね」
警備員が人だかりを整理しようと声を掛けた。そしてどうにか5人が移動できる程度に整理されたところで1人の少女が声を上げ手を振った。
「あ、あーいーとー」
愛翔を見つけた桜だった。その声に愛翔も振り向き笑顔を見せる。
「キャー、住吉さーん」
未だトップチームの選手ほど数は多くないが愛翔にもファンがついている。その一部の女性が愛翔の笑顔に黄色い悲鳴を上げた。
そんなものは知らないとばかりに2人の少女が駆け出し愛翔の両腕にぶら下がる。
「来てくれて嬉しいよ」
愛翔が幼馴染にだけ向ける優しい笑顔を見せる。そしてその笑顔は周りのファンの心もとらえてしまった。
「あ、あんな優しい笑顔を向けられたら」
ボーっとした顔で愛翔に見惚れるファンの女性たちの前で愛翔は自然な動作で桜と楓を抱き寄せ頬にキスを落とす。そしてそれには普通であるならば悲鳴を上げるであろうファンたちでさえ見とれてしまっていた。
そこに丘を先頭に高野、加藤もやってきた。
「住吉君、今日は鬼と戦うのね」
丘が穏やかに微笑みつつ話しかける。
「愛翔君、呼んでくれてありがとう。どうかしら私の衣装」
「高野さんも来てくれてありがとう。ワルキューレかな?カッコいいよ」
「住吉君、誘われたから僕も来ちゃったけど良いの?」
「加藤君も来てくれてありがとう。遠慮なく楽しんでいってくれ。今日はトップチームの選手たちも来てるから特に加藤君には楽しんでもらえると思うよ」
サッカーファンの加藤にとってはトップチームの選手と交流できる特に嬉しいイベントであることは間違いない。
そこから愛翔は5人を引き連れ会場を回る。愛翔のファンもその周りを取り囲んで一体になっている。そして愛翔はチームメイトに5人を紹介し、大いに飲み食べ語り笑う。
「よう、住吉。随分と大所帯を引き連れてるな」
そんな愛翔に時枝が声を掛けてきた。そう言う時枝も左腕に可愛らしい女性を抱えている。
「時枝か、その女性は彼女か?」
「ああ、ずっと俺を支えてくれている。紫雷古都美(しらい ことみ)だ。古都美、こいつが最近よく話している住吉愛翔だ。っと、そこに座ろうか。それで住吉は随分と魅力的な女性を何人も連れているようだがハーレムか?」
近くにあったテーブル席につき話題を振る時枝だけれど
「できれば触れて欲しくないんだが……」
愛翔が弱く答えると、それこそとばかりに紫雷がくちを出してきた。
「あら、裕から聞いてるわよ。住吉君ってすごいプレイヤーなんでしょ。それでいてこのイケメン。選び放題でしょうに」
どうやら恋バナが好きなのは、どこの女性でも変わらないようだ。愛翔がどう返したものかと困惑していると
「愛翔は真剣に考えてくれてるの。愛翔のチームメイトの恋人さんとは言え横から茶々を入れないでくれるかしら」
楓が氷点下の視線で紫雷を睨んだ。
「お、おい楓。そこまで言わなくても」
「古都美も初対面で言いすぎだ」
愛翔と時枝がそれぞれを諫め、目を合わせ肩をすくめた。
「ま、チームメイトお互いの大切な女性どおしできれば仲良くしてほしいけど。それはまた今度って感じか」
愛翔が時枝に告げ立ち上がろうとしたとき。愛翔がふらりと軽く体勢を崩した。
「おっと」
すぐに立て直した愛翔に
「愛翔、大丈夫?」
桜が声を掛けた。
「ああ、ちょっと立ち眩みをしただけだ。大丈夫」
「愛翔が立ち眩みなんて珍しいわね。ちゃんと睡眠とってる?」
楓も寄り添う。
「おいおい、偶に1度立ち眩みしたくらいで大げさだな。ま、最近ちょっと根を詰めてたから疲れがたまっているのかもな。今日は早めに寝ることにするよ」
愛翔も苦笑しつつこたえ、
「住吉はチームの貴重な戦力だからなしっかり体調管理してくれよ」
時枝が冗談めかし、その場は離れていった。
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