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第131話 問題はそこじゃない

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「”何か不満があるのか?”か」
クラブからの帰り道、時枝に言われたことを愛翔は反芻していた。
「不満なんかあるわけないじゃないか。問題はそこじゃないんだ」
そう言いながら愛翔に想いを寄せる2人の女の子たちを思い浮かべる。2人とも愛翔にとって特別で、そして愛おしい。
「それでもいつかは選ばないといけないんだろうな」
呟き、愛おしい2人の待っているはずの家に足を向けた。

「ただいまー」
玄関を開け部屋に入ると愛翔は帰宅を告げる。
パタパタパタ、玄関に向かって駆けてくる2人の少女。
「あいとー、おかえりー」
「愛翔、お帰りなさい」
そしていつも通り愛翔の両腕に抱きつく2人。
「今日はね、和風にしてみたのよ」
和風ということは楓がメインで作ったのだろう。楓が嬉しそうに話す。
テーブルにはカジキの煮つけ、舞茸と豆腐そして油揚げの味噌汁、すりおろした梅干しをのせた大根サラダ、レタスの上にのせられた豚肉の生姜焼き。
「おお、今日もうまそうだ。ありがとうな」
和やかな食卓を囲む3人。
「へー、それじゃクラブでもこの時期だと休む人そこそこいるのね」
「まあ流石に赤点取って補習で練習に出られませんって言うわけにいかないからな。それでも何人かは必ず練習に出ているやつもいるけど、時枝とかはどうやら学校ではそこそこの成績らしい」
「時枝さんって、司令塔の人よね、やっぱりそう言う面にも出るのかしらね」
「まあ色々と計画的で洞察力もあるしそうなんだろうな。ちょっと先走るというか深読みし過ぎる感もあるけど」
「でも、他の人もサッカーで年代のトップクラスの人たちよね。もう少しなんというか学業のほうは猶予されているような感じかと思ったんだけど違うのね」
楓が感想をもらすけれど
「まあ学校の部活で活躍して学校名を売るとかじゃなくてクラブで活躍だからさ、あまり学校には関係ないからな。そこはしかたないさ」
食事を終えると、それぞれが片付けを始める。
「使った食器は水に漬けておいてくれれば俺が洗うぞ」
「いいよ、片付けまでして料理って思ってるもの。やらせて」
「そうそう、それより愛翔は勉強の準備しておいてよ。私、少しやっていきたいから」
楓の言葉通り食事の片づけを終えると3人で試験範囲の見直しを始める。
やはりほとんどシャープペンシルの動きが止まることなくしばらく勉強を進め、ふと愛翔が目を上げ
「さすがにそろそろ、終わりにしよう。遅くなり過ぎだ」
時計は23時近くを指しており愛翔としては失策だと思いながらも立ち上がる。
「送って行くよ」
最低限の身支度をすませジャケットを羽織ると愛翔は桜と楓に声を掛ける。桜も楓もちょっと残念そうな表情を見せながらも立ち上がった。
そこに愛翔が更に声を掛ける。
「楓、これ。昨日はスペアキー1個しかなかったから桜に渡したけど、楓にも渡しておく」
そう言うと楓の手に今日作ってきたスペアキーをのせる。
「それと、これをふたりにそれぞれに」
そう言うと出してきたのはふたつの財布。
「夕飯の支度をしてくれるのなら、せめて食材費は俺に出させてくれ」
「そんな気にしなくていいのに」
桜がニマニマとにやけるのが抑えきれない。財布を預けられる特別感に嬉しさが溢れている。
「私もいいのに、お母さんに話いたら出すって言ってくれてたのよ」
楓は既に親にそこまではなしていたようだけれど、愛翔としてはそれは許容できないので
「いや、さすがにそこまで甘えられないよ」
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