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第124話 トレーニングと晩飯

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「それじゃ、鍵借りていきます」
運動着に着替えた愛翔は体育準備室からトレーニングスペースの鍵を借り体育館に向かう。体育館ではいくつかの運動部が活動をしていた。男女バレー部、バトミントン部、そして当然バスケットボール部も。そして当然のように女子バスケットボール部の活動エリアに歩み寄りちょうどコートから出た桜に声を掛ける。
「桜、頑張ってるな」
「あ、愛翔。放課後に体育館に来るなんて珍しいじゃない。今日はどうしたの?」
タタッっと愛翔に駆け寄り抱きつこうとしたところで躊躇う桜。
「ん、どうした?」
愛翔が不思議そうな顔をする。
「えへへ、部活途中だからさ、ちょーっと汗臭いかなって」
照れくさそうな笑みを浮かべる桜に愛翔はクスリと笑って言った。
「そんなの気にする間柄じゃないだろう」
そう言いながら愛翔は桜の頭を自分の胸に抱き撫でる。
「むぅ、むぅ」
桜がポンポンと愛翔の胸を叩くけれど、愛翔は穏やかに微笑みながら撫で続ける。
愛翔はひとしきり桜を可愛がり満足すると
「昨日も言ってただろ、今日は、クラブが休みの日のトレーニングに体育館のトレーニングスペースを借りようと思ってな。今日は初日なんで道具やマシンの様子を見ながらって感じだな」
そう言ってトレーニングスペースに移動していく愛翔。桜はそれを耳まで赤くなりながら見送った。

トレーニングスペースの入り口の鍵を開け、愛翔は何気なく中に入っていく。
「へえ、進学校って言ってても私立だからかな。結構揃ってるな」
一通りマシンや道具を確認した愛翔はスクールバッグから1綴りの紙を取り出した。それはクラブのトレーナーが作成した愛翔向けのトレーニングメニュー。
「うん、フィジカルトレーニングはここで全部できるな」
そう独り言ちると、愛翔は、その場でウォーミングアップを始めた。エアロバイク・動的ストレッチ等で十分に身体をほぐす。
「さて、そろそろいいだろう」
愛翔は上に羽織っていたジャージを脱ぎトレーニングウェア姿になると、淡々とトレーニングメニューをこなしていく。時より傍らに置いたボトルから水分補給をしながら2時間あまりトレーニングを行った愛翔は
「通常メニューは、これで終わりだけど」
ふっと時計に目をやり、
「後は家でやるしかないか」
ボディーシートで身体を拭き、軽く制汗剤をスプレーすると制服に着替える。そして背伸びをひとつし、トレーニングエリアを見回し片づけ忘れの無い事を確認して、扉を閉め施錠をする。
「あーいと。終わり?」
制服に着替えた桜が愛翔の背中に飛びついてきた。
「おう、桜か。とりあえず学校ではここまでだな。あとは家に帰ってから合宿で教わったメニューを追加する感じかな。ただ少し問題があるんだよなぁ」
愛翔の呟きに、背中から降りてきた桜が声をかける。
「問題って?」
「残りのトレーニングってフォームが大事で……。ん?」
そこまで言って何かに気づいた愛翔が
「桜、ちょっと手伝ってくれないか」
「え、手伝い?良いけど何するの?」


「で、楓まで……」
「そりゃ桜が愛翔の家に行くって聞いたら私だってついてくるわよ。それとも私が邪魔になるような事するの?」
「いや、そんなわけないだろう。単にトレーニングの手伝いをしてもらうだけだぞ」
「なら私がいても良いでしょ?」
ニッコリと笑う楓に
「いや、邪魔になるからじゃなくて、多分いても退屈するだろうと思っただけだぞ」
愛翔はやれやれとばかりに首をふり
「ま、いいや。邪魔にはならないから楓は適当にくつろいでいてくれ。桜、今からプランクっていう体幹トレーニングをするんだけどさ、これフォームが大事らしいんで見ててくれるか?」

「愛翔、右にずれてる」
「こ、こうか?」
「そうそう、そのままあと20秒」

「今度は顔が上がりすぎよ。もうちょっと……。そう、そのくらいで」

「く、結構キツイな」
桜にフォームチェックしてもらいながら愛翔がトレーニングを続け、一通り終わらせると。
「ふう、一通り終わった」

「お疲れ様」
桜がタオルを手渡したところで
「あ、終わった?こっちも丁度できたところよ」
楓が声を掛けてきた。
そこにあったのは、鳥から揚げ、ほうれん草ときのこのサラダ、厚揚げの大葉味噌焼き、豆乳コーンポタージュという和風の夕飯が3人前。
「冷蔵庫の中身勝手に使わせてもらったわよ」
そう言って両手をこすり愛翔を上目使いで見る楓に
「いや、まさか晩飯作ってくれるって思わなかった。ありがとうな」
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