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第119話 弱点

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合宿1日目、紅白戦。紅白戦と言ってもビブスチームとユニフォームチームに分かれている。愛翔はビブスチームだ。
「小塚」
右サイド奥、愛翔にとっていつものエリアから鋭く蹴りだされたボールはビブスチームセンターフォワード小塚真司(こづかしんじ)の目の前にふわりと着地した。小塚は、そのまま即座に右足を蹴り抜きシュートを放つ。小塚の足元から放たれたシュートはボール左隅を急襲。決まると見えたシュートだったけれど、ユニフォームチームのゴールキーパー谷中邦夫(やなかくにお)が、その大きな体躯を生かし横っ飛びにファインセーブを見せた。
「あっぶねえ、いつもの小塚のシュートじゃねぇぞ」
谷中と小塚は何度か対戦経験がありお互いの実力をある程度把握しているようだ。
「おう、住吉。今のセンタリングはなんだ?足元でふわりと止まったぞ。あまりの絶好球に力んで失敗しちまった」
「バックスピンです。あまり混戦中には使えませんがフリーに近い状態のフォワードへのセンタリングでは効果的ですね」
16歳の愛翔は、この合宿では最年少ということもあり敬語までは行かないもの目上向けの言葉使いになっている。
「しかし、ここに呼ばれた中で16歳っておまえだけだろ。実は実力がどうかって疑問に思ってたんだが、十分にU18代表レベルだわ。驚いたよ」
そしてディフェンスに戻るビブスチーム。愛翔もいつも通り相手のマークにつきタイミングを見て罠を仕掛けるが、さすがにこの合宿に呼ばれるレベル、簡単には掛からない。ビブスチームのディフェンダーがプレスに行く。とっさにパスを回すユニフォームチームフォワード陣。一進一退の攻防の中、愛翔のマークしている選手にパスを通してしまった。愛翔と比べると一回りは体躯が大きい18歳の光田正(ひかりだただし)。愛翔もすぐにディフェンスに入る。テクニックでは愛翔に軍配が上がる。ほどなくしてボールの支配権が愛翔に移ろうとした、その時、”グイッ”強引に力任せのチャージ。愛翔がたたらを踏む。”ピーッ”ホイッスルがなり光田にファールが宣告された。しかし、ファールではあったけれどそれは愛翔の数少ない弱点のひとつが露呈した瞬間だった。
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