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第118話 桜の想い(横に並べるように)

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「愛翔、頑張ってるんだろうな」
学校の中庭のベンチにすわって空を見上げながら桜がつぶやいた。
「住吉君、選抜チームの強化合宿なんだって。凄いね」
そんな桜に後ろから声が掛かった。やや明るめの茶髪に170cm近い細身。桜と同じ女子バスケットボール部の1年生、末成千恵(すえなり ちえ)だった。
「え、あ、ちーちゃん」
「で、桜は住吉君を想って空を見上げてると。恋する乙女だねえ」
末成に揶揄われ頬を桜色に染める桜。
「も、もう揶揄わないでよ」
「本当に好きなのねぇ」
女子バスケットボール部では、既に桜が愛翔のことを好きなのは公然の秘密になっている。もっとも今となっては、いつもの距離感で恋愛感情が無いと言って信じる方が少数派ではあるだろうけれど。
「うん、好き。好きって言葉で言い表せないくらい好きよ。生まれてからずっと一緒だったんだもの。嬉しい事も悲しい事も楽しい事も辛い事もずっと全部一緒に経験してきた幼馴染。優しくて強くて、ずっと寄り添ってくれた。今のあたしがあるのは愛翔のおかげだもの。愛翔と一緒にいたいから勉強も運動もガンバったのよ。だから3年間は辛かったけど寂しかったけど、愛翔は約束を守ってくれた。だから……」
「あぁ、もう。ストップストップ。もう桜ってば住吉君大好きスイッチ入っちゃうと止まらなくなるんだから。毎回聞かされるこっちの身にもなってよ。砂糖吐きそうよ」
末成に止められた桜は不満そうに睨んでいる。
「何よ、先に聞いたのはちーちゃんじゃない」
「はいはい、悪かったわよ。で、そろそろ休憩時間終わりだから呼びに来たんだからね。行くわよ」
「ん、頑張ろ。そして来週の県新人戦は優勝狙っちゃおう」
「あはは、が、頑張るね」
「愛翔はU18選抜、あたしは県新人戦。レベルは違うけど、愛翔の横に並べるように頑張るんだから」
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