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第107話 いつもはカッコいいのに

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ジムワークの後軽くシャワーを浴び、愛翔はステラスポーツセンターのテラスでくつろいでいる。光野高校は文化祭開けの代休のため休みだけれど、本来平日なため人も少なく周囲は比較的空いている。そのテラス席の向こうに2人のとても目立つ少女が歩いてきた。
「桜、楓。こっちだ」
愛翔が立ち上がり手を振ると、2人は嬉しそうに駆け寄ってくる。
「あいとー、おまたせ」
桜がいつものように右腕に抱きつく。
「ふふ、私も来ちゃった」
そう言いながら楓も左腕にだきついた。そして愛翔を上目使いに見ながら、
「私も一緒にプール、いいわよね。愛翔の会員証でビジター3人までは入れるんでしょ」
その様子に愛翔はクスリと笑い。
「いいよ、3人でプール入ろう。ただし、桜にはいってあるけど、俺は水中トレーニングを目的にプールに行くんだからな。遊ぶのはその後だぞ」
愛翔が釘をさすけれど、そこにはとても嬉しそうに笑う楓がいた。拒否ではなく受け入れてくれる愛翔。愛翔にとって楓を受け入れるのは当たり前なのは楓にもわかっている。それでも一見デートを邪魔しに来たような形の楓でさえ何のこだわりもなく受け入れてくれる愛翔が嬉しく愛おしく感じていた。
「とりあえず、お弁当食べましょ。桜と私の合作よ」

「じゃぁとりあえず、中に入って更衣室の出口で待ち合わせな」
愛翔はそう言うと男子更衣室に入っていく。愛翔を見送った楓は桜に声をかけた。
「いこっか」
「うん」

着替えを終えた愛翔は女子更衣室出口そばで壁にもたれて桜と楓を待っていた。そこにキャイキャイとはしゃぐ声が響き愛翔が目を向けると
「あーいと、おまたせー」
白いスポーティなセパレートタイプの水着を着た桜が愛翔を見つけた途端にパタパタと駆け寄り愛翔の右腕に抱きつく。そして一旦愛翔の腕を離し照れるように両手を体の前で合わせ
「どう?」
愛翔に見せるようにクルリと1回転してみせる。
「ああ、可愛いよ、スポーティで桜に似合ってる」
愛翔が感想を口にすると桜は嬉しそうに再び愛翔の右腕に抱きつく。
そこに、桜に少し遅れて楓が歩み寄った。
「私はどうかしら?」
楓が着ているのは赤とグリーンのリーフ柄のハイネックビキニ。
「大人っぽくて楓に似合ってる」
愛翔が言うと楓もスッと左腕につかまるように抱きつく。
「あ、あのさ。2人とも水着で抱きつかれるとちょっと」
普段と変わらないスキンシップではあるけれど水着ではやはり違う。そのため愛翔のちょっと困ったような照れたような言葉に
「あ、何か感じちゃった?中学時代と比べたらあたしたちも成長したから?」
桜が嬉しそうに愛翔を揶揄いさらにぎゅっと抱きつく。楓もあえて強調するような抱きつき方をしながら
「普段と変わらないわよ。どうしたの?」
照れる愛翔が珍しいためか、楓も容赦がない。
「あぁ、もう。俺も男なんだよ。2人とも可愛くて魅力的な女の子なんだからな。服着てるときは慣れてるけど水着では少し手加減してくれ」
桜も楓もクスクスと笑うだけで愛翔の腕を離すけはいはない。
「と、とにかく、俺はトレーニングに行くから」
少々強引に腕をほどいてトレーニングプールに向かう愛翔に
「いつもはカッコいいのに、こういうとこだけはヘタレるのね」
楓が頬を膨らませ、桜が唇を尖らせ拗ねた。
「なんとでも言っとけ」
愛翔は逃げるようにプールに飛び込んだ。
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