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第87話 サッカー部
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「さてと、とりあえず着替えてグランドに来たものの。どこに行けば良いのかね」
愛翔は呟きながらもとりあえずサッカー部が使っている練習場に向かう。
「ここがサッカー部の練習場なんだよな?」
愛翔の目の前では進学校のサッカー部の練習場とは思えない人だかりの中でサッカー部が練習をしていた。
ざっと見まわし、愛翔は顧問と思われる教師を見つけ、そこにむかう。
「こんにちは。住吉愛翔です。こちらに来て欲しいと伝言を受け伺いました」
愛翔の挨拶に教師は顔を向け
「ああ、聞いているよ。住吉君よく来てくれたね。私はサッカー部顧問の柏崎佳恵(かしわざきよしえ)です。悪いけどとりあえずウォーミングアップだけしておいてもらっていいかな。これが終わったらみんな集めるから」
「わかりました」
愛翔はやや憮然とし”いくら生徒相手と言っても呼び立てておいてこの対応はどうなんだ”と思いはしながらも、わざわざ事を荒立てる必要も無いかとウォーミングアップを始める。
グランド脇で軽いランニングからダッシュ&ターン。空いているボールを使ってのリフティングやドリブルで身体をほぐす。
ウォーミングアップの傍ら、サッカー部の練習を観察する愛翔。どうやらミニゲームのようだ。
「一応オーソドックスな4ー3ー3システムかな。でも機能してないな」
最前線も中盤も最終ラインも入り乱れている。フォワードはディフェンダーを信頼せずやたらに戻り、ミッドフィルダーは全体を見れていない。ディフェンダーもボールを支配下においても前線にフィードせずドリブルで上がろうとばかりしている。パスを出したと思えば相手のその時にいる場所に出しているのだろう、結果相手の足元より後ろにばかり出している。かと言って個人技でどうにかなるほどの技術を持つ選手もいない。
「住吉!」
そこに愛翔を呼ぶ声が聞こえる。振り向いた愛翔の視線の先に居たのは脱色した長めの髪をワックスで固めた雰囲気イケメン上級生だった。
「こんにちわ初めまして。俺を呼んだのは先輩ですか?」
「ああ、俺が君に来てくれるよう頼んだサッカー部部長の大場達也(おおばたつや)だ。すまんな、忙しいとこ呼び出して」
一応形だけとはいえ、礼を口にする大場。
「いえ、今日はクラブの練習が休みなので大丈夫です」
「で、どうだ。うちのサッカー部は?」
大場の非常に曖昧な問いかけに愛翔はどう答えたものかと一瞬悩んだけれど
「すみません、俺中学でサッカー始めてすぐにアメリカに行って、それからずっとクラブサッカーばかりやってきたので高校とかの部活でのサッカーを知らないんです。なので、どうだと聞かれても何と言って良いのかわからないんですよ」
愛翔の曖昧な逃げに気づかず大場は相づちをうつ
「なるほどなぁ。アメリカだと学校の部活とかあまりないのか?」
「学校によるみたいですが、日本みたいには無いですね」
何気ない会話を交わし
「それで、今日俺を呼んだのは?」
愛翔が率直に聞いた。
「MLSにスポット参戦し、ステラスターFCのU18に加入した住吉のプレイを肌で感じてみたいというのが1点。それと、できればうちのサッカー部に所属してもらいたいというのが1点の2点だな」
大場の誘いに愛翔はそっと眉を顰め
「今日みたいにクラブが休みの時に偶に一緒にボールを蹴るのは構いません。ですがすみませんがクラブ1本で行きたいのでサッカー部への所属は辞退させてください」
愛翔がサッカー部への所属を辞退するという言葉に大場はピクリと反応し
「サッカー部への所属できない理由を聞いても良いかな」
「簡単な事です。今日はこのように来ていますが、クラブの練習、公式戦での遠征でとてもサッカー部にきちんと参加できないからです。ですからサッカー部への所属は辞退させていただきます」
「……か」
大場は何やら呟き
「ま、しかたない。せめて今日は君のサッカーを見せてくれよ」
愛翔は呟きながらもとりあえずサッカー部が使っている練習場に向かう。
「ここがサッカー部の練習場なんだよな?」
愛翔の目の前では進学校のサッカー部の練習場とは思えない人だかりの中でサッカー部が練習をしていた。
ざっと見まわし、愛翔は顧問と思われる教師を見つけ、そこにむかう。
「こんにちは。住吉愛翔です。こちらに来て欲しいと伝言を受け伺いました」
愛翔の挨拶に教師は顔を向け
「ああ、聞いているよ。住吉君よく来てくれたね。私はサッカー部顧問の柏崎佳恵(かしわざきよしえ)です。悪いけどとりあえずウォーミングアップだけしておいてもらっていいかな。これが終わったらみんな集めるから」
「わかりました」
愛翔はやや憮然とし”いくら生徒相手と言っても呼び立てておいてこの対応はどうなんだ”と思いはしながらも、わざわざ事を荒立てる必要も無いかとウォーミングアップを始める。
グランド脇で軽いランニングからダッシュ&ターン。空いているボールを使ってのリフティングやドリブルで身体をほぐす。
ウォーミングアップの傍ら、サッカー部の練習を観察する愛翔。どうやらミニゲームのようだ。
「一応オーソドックスな4ー3ー3システムかな。でも機能してないな」
最前線も中盤も最終ラインも入り乱れている。フォワードはディフェンダーを信頼せずやたらに戻り、ミッドフィルダーは全体を見れていない。ディフェンダーもボールを支配下においても前線にフィードせずドリブルで上がろうとばかりしている。パスを出したと思えば相手のその時にいる場所に出しているのだろう、結果相手の足元より後ろにばかり出している。かと言って個人技でどうにかなるほどの技術を持つ選手もいない。
「住吉!」
そこに愛翔を呼ぶ声が聞こえる。振り向いた愛翔の視線の先に居たのは脱色した長めの髪をワックスで固めた雰囲気イケメン上級生だった。
「こんにちわ初めまして。俺を呼んだのは先輩ですか?」
「ああ、俺が君に来てくれるよう頼んだサッカー部部長の大場達也(おおばたつや)だ。すまんな、忙しいとこ呼び出して」
一応形だけとはいえ、礼を口にする大場。
「いえ、今日はクラブの練習が休みなので大丈夫です」
「で、どうだ。うちのサッカー部は?」
大場の非常に曖昧な問いかけに愛翔はどう答えたものかと一瞬悩んだけれど
「すみません、俺中学でサッカー始めてすぐにアメリカに行って、それからずっとクラブサッカーばかりやってきたので高校とかの部活でのサッカーを知らないんです。なので、どうだと聞かれても何と言って良いのかわからないんですよ」
愛翔の曖昧な逃げに気づかず大場は相づちをうつ
「なるほどなぁ。アメリカだと学校の部活とかあまりないのか?」
「学校によるみたいですが、日本みたいには無いですね」
何気ない会話を交わし
「それで、今日俺を呼んだのは?」
愛翔が率直に聞いた。
「MLSにスポット参戦し、ステラスターFCのU18に加入した住吉のプレイを肌で感じてみたいというのが1点。それと、できればうちのサッカー部に所属してもらいたいというのが1点の2点だな」
大場の誘いに愛翔はそっと眉を顰め
「今日みたいにクラブが休みの時に偶に一緒にボールを蹴るのは構いません。ですがすみませんがクラブ1本で行きたいのでサッカー部への所属は辞退させてください」
愛翔がサッカー部への所属を辞退するという言葉に大場はピクリと反応し
「サッカー部への所属できない理由を聞いても良いかな」
「簡単な事です。今日はこのように来ていますが、クラブの練習、公式戦での遠征でとてもサッカー部にきちんと参加できないからです。ですからサッカー部への所属は辞退させていただきます」
「……か」
大場は何やら呟き
「ま、しかたない。せめて今日は君のサッカーを見せてくれよ」
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