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第21話 1位と2位

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 「新入生代表橘楓さん。お願いします」
入学式の新入生代表の挨拶。壇上に立つ楓。一礼をしてマイクに向かう。
「本日は私達新入生の為にこのような盛大な式を挙げて頂き誠にありがとうございます。桜の花びらの舞い散る暖かな日差しの中、私たちは伝統ある光野高等学校への入学の日を迎えることが出来ました。……

……校長先生はじめ諸先生方、そして先輩方、まだまだ未熟な私達ではありますが、 温かいご指導下さいますようお願い申し上げます。新入生代表、橘楓」
大きな拍手の中、楓は胸を張り席に戻った。

教室に戻るとそこでは、また楓の周囲が騒がしくなっていた。
「橘さん、入試1位だったんですね」
「綺麗で、強くて、成績もいいなんてすごいです」
ここで楓は少しばかり気まずい表情をしている。
「私入試1位じゃないよ」
それを聞いたクラスメイト達は首をかしげる
「だって橘さん、新入生代表で挨拶したじゃない。あれって1位の人がやるものでしょ?」
楓は、ため息をついて桜を見やり
「1位の人が辞退したの。それで私にお鉢が回ってきたというだけよ」
「えぇ?1位の人なんで辞退したの?知ってる?」
「1位で辞退なんて勝手じゃないの?」
「人には色々事情があるもの。壇上で話すだけの事なら私は出来るけど。でもグランドで身体を動かう競技を代表でやれって言われたら私には無理。同じ壇上での発表でもダンスを踊れといわれればやっぱり無理。そういう向き不向きで1位の人は壇上での挨拶が苦手だっただけでしょう。その代わり、運動系のものは変わってもらうから大丈夫」
にっこりと笑顔で言い切る楓。それでも周囲は単なる謙遜と思い込み色々という。桜だけが苦笑いしながら頷いている。
「橘さんやさしぃ」
「運動苦手って言ってるけど、橘さんならきっと」

新入生オリエンテーションも終わり朝からの騒ぎも収まった。
桜と楓は教室の隅で
「朝は大変だったねぇ」
桜がふよふよと笑う。
「誰のせいだと思ってるのよ」
「はーい、新入生代表挨拶を辞退した誰かのせいでーす」
「そうよねぇ」
ニコニコと笑いながら桜のこめかみに拳を当ててギリギリと締め上げる楓。
「痛い。痛いよ楓」
「そりゃ痛いようにしてるからね。1位さん」
「あ。あれ?バレてた?」
「むしろあたしたちの間柄でなぜバレないと思ったのかな?」
にっこりと笑う楓に
「楓ちゃん、笑顔が怖いよぉ」
「ふふふ、人見知りの桜が代表挨拶なんてまだ無理なのはわかってるから良いけどね。一言言ってほしかったなぁ」
「うぅごめんね楓。スポーツ系の代表1回交代してあげるから許して」
「はいはい、ただし次からはちゃんと言ってよね」
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