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13話 図書室で
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いくつかの事件はあったけれど、その後は平穏な時を過ごしている幼馴染3人組。
6限目、その日最後の時間のLHRが終わり、教室で5月半ばの1学期中間テストの試験結果を配られたところだった。今回3人揃って一桁順位で終えた。高野も愛翔との勉強会で理解度を上げ学年140人中38位と悪くない。
「愛翔君。ありがとう。愛翔君が勉強みてくれたおかげでいい成績とれたよ」
いつの頃からか高野は愛翔を名前で呼ぶようになっている。
「いや高野さんが頑張ったからだから。オレはそれをちょっとだけ手伝っただけだよ」
「ううん、愛翔君がいなかったら、あたしはきっと途中で嫌になってたと思う。だから、ありがとう」
「あぁ、うん。まぁどういたしましてって言えばいいのかな?」
少しばかり困惑する愛翔に、頬を少し桜色に染め高野は愛翔の横にくっついている桜と楓を気にしながら
「うん。あ、それで今日は愛翔君は部活よね」
「ああ、久しぶりに体を動かすから、今から楽しみだよ」
「その、部活終わったあとちょっとだけ時間もらえないかな」
「ん、少しくらいなら」
「じゃぁ、終わったら図書室で待ってる」
そう言うと高野はそそくさと教室を出ていった。それを見た桜と楓は目を合わせやっぱりというように頷き合った。
その日の部活時間終了後、愛翔は着替えを済ますと、人影もまばらな校舎の中を図書室に向けて歩いていた。
「あたしたちは校門で待ってるから」
そう言って少しばかり不安そうに話す幼馴染ふたりに背を押された結果だ。
図書室に足を踏み入れた愛翔が見回すと、窓際の席に座っている高野をみつけた。ゆっくりと歩を進め高野に近づく愛翔に
「いつもなら勉強会を終わって帰ってる時間ね」
高野が振り向きもせず声を掛けた。言い終わると高野は振り向き。
「愛翔君、来てくれてありがとう」
「約束したからな。友達との約束は守るよ」
愛翔の言葉に少しばかり表情を曇らせる高野。しかし、すぐその表情は元どおりの笑顔を取り戻す。
「授業が分からなくなって、焦っていた時。周りの人に声を掛けてもみんな迷惑そうな顔をしたの。あの頃、あたしは浮きまくってたから。ナツ以外にはあたしのことを見てくれる人はいないと思ってた」
「そんなことも言っていたね」
この先の言葉を予想し、少しばかり困惑する愛翔に、高野は言葉を続ける。
「女の子たちは無理だったけど、だからと言って男の子にお願いするのはちょっとって思って。でもやっぱり成績は気になって。そんなときにふっといつも華押さんや橘さんと仲良くしている愛翔君ならひょっとしたら聞いてくれるんじゃないかって、最初はそのくらいの気持ちで話しかけたのよ」
「ふふ、あの時の高野さんの緊張した感じ凄かったよ」
「もう、そこは忘れてよ」
愛翔の指摘に今更ながら耳まで赤く染める高野。
「でも愛翔君は、他の女の子にお願いしないことを不審に思って聞いてきたけど、理由を言ったら受け入れてくれた。あたしの勝手なお願いに一生懸命に応えて勉強会を続けてくれた。中間テスト前にも自分の勉強だってあったのに」
「まぁ人に教えるってのは自分にとってもいい勉強になるから、そこは気にする必要ないよ」
「それでも、今まで男の子ってあたしにとっては意地悪してくる、嫌なことを言ってくるそんな人ばかりだった。でも愛翔君は違った。褒めてくれた、叱ってくれた、あたしを見てくれた。そんな風に接してくれた。そしたらね」
そこで高野は一度言葉を切り、愛翔と目を合わせる。
「そしたらね、あたし、いつの間にか愛翔君のこと好きになっちゃってた。愛翔君が華押さんや橘さんを凄く大事にしているのは知ってる。でもお付き合いしているわけでもないよね。ふたりを大事にしているままの愛翔君でいい。だからあたしとお付き合いしてください」
6限目、その日最後の時間のLHRが終わり、教室で5月半ばの1学期中間テストの試験結果を配られたところだった。今回3人揃って一桁順位で終えた。高野も愛翔との勉強会で理解度を上げ学年140人中38位と悪くない。
「愛翔君。ありがとう。愛翔君が勉強みてくれたおかげでいい成績とれたよ」
いつの頃からか高野は愛翔を名前で呼ぶようになっている。
「いや高野さんが頑張ったからだから。オレはそれをちょっとだけ手伝っただけだよ」
「ううん、愛翔君がいなかったら、あたしはきっと途中で嫌になってたと思う。だから、ありがとう」
「あぁ、うん。まぁどういたしましてって言えばいいのかな?」
少しばかり困惑する愛翔に、頬を少し桜色に染め高野は愛翔の横にくっついている桜と楓を気にしながら
「うん。あ、それで今日は愛翔君は部活よね」
「ああ、久しぶりに体を動かすから、今から楽しみだよ」
「その、部活終わったあとちょっとだけ時間もらえないかな」
「ん、少しくらいなら」
「じゃぁ、終わったら図書室で待ってる」
そう言うと高野はそそくさと教室を出ていった。それを見た桜と楓は目を合わせやっぱりというように頷き合った。
その日の部活時間終了後、愛翔は着替えを済ますと、人影もまばらな校舎の中を図書室に向けて歩いていた。
「あたしたちは校門で待ってるから」
そう言って少しばかり不安そうに話す幼馴染ふたりに背を押された結果だ。
図書室に足を踏み入れた愛翔が見回すと、窓際の席に座っている高野をみつけた。ゆっくりと歩を進め高野に近づく愛翔に
「いつもなら勉強会を終わって帰ってる時間ね」
高野が振り向きもせず声を掛けた。言い終わると高野は振り向き。
「愛翔君、来てくれてありがとう」
「約束したからな。友達との約束は守るよ」
愛翔の言葉に少しばかり表情を曇らせる高野。しかし、すぐその表情は元どおりの笑顔を取り戻す。
「授業が分からなくなって、焦っていた時。周りの人に声を掛けてもみんな迷惑そうな顔をしたの。あの頃、あたしは浮きまくってたから。ナツ以外にはあたしのことを見てくれる人はいないと思ってた」
「そんなことも言っていたね」
この先の言葉を予想し、少しばかり困惑する愛翔に、高野は言葉を続ける。
「女の子たちは無理だったけど、だからと言って男の子にお願いするのはちょっとって思って。でもやっぱり成績は気になって。そんなときにふっといつも華押さんや橘さんと仲良くしている愛翔君ならひょっとしたら聞いてくれるんじゃないかって、最初はそのくらいの気持ちで話しかけたのよ」
「ふふ、あの時の高野さんの緊張した感じ凄かったよ」
「もう、そこは忘れてよ」
愛翔の指摘に今更ながら耳まで赤く染める高野。
「でも愛翔君は、他の女の子にお願いしないことを不審に思って聞いてきたけど、理由を言ったら受け入れてくれた。あたしの勝手なお願いに一生懸命に応えて勉強会を続けてくれた。中間テスト前にも自分の勉強だってあったのに」
「まぁ人に教えるってのは自分にとってもいい勉強になるから、そこは気にする必要ないよ」
「それでも、今まで男の子ってあたしにとっては意地悪してくる、嫌なことを言ってくるそんな人ばかりだった。でも愛翔君は違った。褒めてくれた、叱ってくれた、あたしを見てくれた。そんな風に接してくれた。そしたらね」
そこで高野は一度言葉を切り、愛翔と目を合わせる。
「そしたらね、あたし、いつの間にか愛翔君のこと好きになっちゃってた。愛翔君が華押さんや橘さんを凄く大事にしているのは知ってる。でもお付き合いしているわけでもないよね。ふたりを大事にしているままの愛翔君でいい。だからあたしとお付き合いしてください」
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