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力をつけるために
第125話 格の違い①
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狩りを切り上げて、ハンターギルドに向かう。
中に入ると、ちょうどレアルさん達「辺境の英雄たち」が魔石の清算をしていた。あたし達に気付くとドヤ顔で魔石を示している。
「どうだ。クリフでハンターと言えるのはこういうことだ」
見れば、そこそこ大ぶりの魔石がゴロゴロと並んでいて、グール、スケルトンナイト、オーガ、トロール等、2層の魔物をかなり狩ってきているのがわかるわね。それにあそこで見た立ち回りも素晴らしかったわ。でも、比べるようなものじゃないと思うの。
そうは思うのだけど、ちょっとあの態度にはカチンとくるのよね。
「パオラさん。清算お願いします」
いつもなら、瑶さんが当たり障りのないように魔石や素材を出すのだけど、今日はあたしが「辺境の英雄たち」の隣のカウンターに今日の成果を並べていく。まずは2層の魔物・魔獣の魔石をゴロゴロと出していく。
「お、おう、な、中々やるじゃないか……」
ふふん、ちょっとは自分の発言に後悔したらいいのよ。
「今日は魔石はこのくらいですね」
「はい、査定させてもらいますね」
あたしとパオラさんのやりとりを聞いたレアルさんがニヤニヤしながら近づいてきたわね。
「それでも所詮はその程度か」
まったくよそのパーティーのやり方に文句言わないでほしいわね。
「あとは、これね」
「なっ!!!」
「……!!」
最後にワイルドティーガーの毛皮をマジックバッグから取り出すと、パオラさんだけでなくレアルさんも言葉が出ないみたい。
「ふぅ。これはワイルドティーガーですか?」
「多分ね。初めて狩ったから自信はないですけど」
「傷も無いですね。どうやって斃したんですか。まったくマルティナの言う通り、あなた達は規格外ですね」
「魔法でちょっと動きを鈍らせて、瑶さんが口に剣をズバッっとして斃しました」
チラリとレアルさんに目をやる。くふふ、悔しそうな顔してるわね。お山の大将でいるからそうなるのよ。
「ズバッっとって。このサイズのワイルドティーガーを斃すというのは、4級ハンターパーティーでも単独だと苦しいんですけどね。ましてや見たところケガも無いようですし、無傷でたった3人のパーティーがとなると4級上位、いえひょっとすると3級並でしょうか」
そう言ってパオラさんはチラリと隣のカウンターで固まっているレアルさんに意味ありげな視線を投げた。
「高い評価ありがとうございます。お世辞が入っていても嬉しいです」
「お世辞なんてそんな。アサミ様達暁影のそらのみなさんの上げられている成果はそれだけの価値のあるものです。決してお世辞などではありません。それにワイルドティーガー討伐で傷一つ負わない”暁影のそら”様はいまだ本気ではないのではないでしょうか」
うわあパオラさん、その表情はダメです。美人がしていい表情ではないです。それは悪役令嬢の顔です。
「パオラさん。本気でないとは、また言葉が過ぎるとは思いませんか?」
あ、瑶さんが引き継いでくれたわ。ちょっとこの先あたしだと辛くなってきてたのよね。
「ヨウ様、すみません。少々言葉が過ぎました。ただ、現在の立ち位置では暁影のそら様の実力に相応する場所に立っておられないように思えるのです」
「もしそうだったとしても、やむを得ないでしょう。戦闘力はともかく私と朝未はハンター登録してまだ1年にも満たない駆け出しですし、マルティナさんにしても女神の雷に飼殺しになっていたんですから。今は実力を伸ばしつつ経験を積み、ランクを上げていくっているところですからね。きっとそのうち実力と経験、実績とランク、立ち位置が釣り合うでしょう」
あああ、これ瑶さん、言外にレアルさん達よりあたし達の方が上って言っちゃってるわね。
「まあ、そんなことはどうでも良いんです。朝未も、ここまでにしておこうね」
「う、はい」
瑶さんには、あたしの気持ちが見抜かれていたみたいね。むしゃくしゃして感情的になってしまったもの。瑶さんは、そんなうなだれるあたしの頭をそっと撫でて慰めてくれた。
清算を済ませ、ギルドを出ようとしているあたし達の前にレアルさんが前を塞ぐように立った。
「おい、模擬戦に付き合え」
「レアル。いくらなんでも失礼がすぎます。そこまでいくと冗談ではすみませんよ」
「うるせぇ!冗談でこんなこと言えるか」
「大体、何の意味もないでしょうに」
「そっちに無くても、こっちにはあるんだよ。それとも逃げるのか?」
マルティナさんが止めようとしてくれてはいるけど、これ止まらない奴よね。瑶さんを見ると呆れたような顔で首を横に振ったわね。
「はあ、こっちになんの得もないのに本気で受けると思っているんですか?」
「オレに勝ったら認めてやるって言ってんだ」
「いや、そんなの欲しくありませんし。無駄に消耗する、だけ……」
いえ大した消耗もないかしらね。それならこちらから条件つけようかしら。
「いえ、そうですね、今後一切絡んでこないというのなら、お相手します」
「え、アサミ様。よろしいのですか?」
「この様子だと、ここで断っても、いつまでも絡んでくるのが目に見えてますから」
しかたないです、とマルティナさんに告げて、訓練場に移動した。
「で、ルールは?」
「は?何のことだ?」
「模擬戦である以上、勝ち負けとか戦い方の決めごとがあるでしょう?」
「そんなのは決まっている。なんでもアリアリだ。相手を殺さない程度ならなんでもあり。相手が降参するか戦闘不能になったところで終了だ」
「え?それだと、あなた何も出来ずに終わりますけど……」
中に入ると、ちょうどレアルさん達「辺境の英雄たち」が魔石の清算をしていた。あたし達に気付くとドヤ顔で魔石を示している。
「どうだ。クリフでハンターと言えるのはこういうことだ」
見れば、そこそこ大ぶりの魔石がゴロゴロと並んでいて、グール、スケルトンナイト、オーガ、トロール等、2層の魔物をかなり狩ってきているのがわかるわね。それにあそこで見た立ち回りも素晴らしかったわ。でも、比べるようなものじゃないと思うの。
そうは思うのだけど、ちょっとあの態度にはカチンとくるのよね。
「パオラさん。清算お願いします」
いつもなら、瑶さんが当たり障りのないように魔石や素材を出すのだけど、今日はあたしが「辺境の英雄たち」の隣のカウンターに今日の成果を並べていく。まずは2層の魔物・魔獣の魔石をゴロゴロと出していく。
「お、おう、な、中々やるじゃないか……」
ふふん、ちょっとは自分の発言に後悔したらいいのよ。
「今日は魔石はこのくらいですね」
「はい、査定させてもらいますね」
あたしとパオラさんのやりとりを聞いたレアルさんがニヤニヤしながら近づいてきたわね。
「それでも所詮はその程度か」
まったくよそのパーティーのやり方に文句言わないでほしいわね。
「あとは、これね」
「なっ!!!」
「……!!」
最後にワイルドティーガーの毛皮をマジックバッグから取り出すと、パオラさんだけでなくレアルさんも言葉が出ないみたい。
「ふぅ。これはワイルドティーガーですか?」
「多分ね。初めて狩ったから自信はないですけど」
「傷も無いですね。どうやって斃したんですか。まったくマルティナの言う通り、あなた達は規格外ですね」
「魔法でちょっと動きを鈍らせて、瑶さんが口に剣をズバッっとして斃しました」
チラリとレアルさんに目をやる。くふふ、悔しそうな顔してるわね。お山の大将でいるからそうなるのよ。
「ズバッっとって。このサイズのワイルドティーガーを斃すというのは、4級ハンターパーティーでも単独だと苦しいんですけどね。ましてや見たところケガも無いようですし、無傷でたった3人のパーティーがとなると4級上位、いえひょっとすると3級並でしょうか」
そう言ってパオラさんはチラリと隣のカウンターで固まっているレアルさんに意味ありげな視線を投げた。
「高い評価ありがとうございます。お世辞が入っていても嬉しいです」
「お世辞なんてそんな。アサミ様達暁影のそらのみなさんの上げられている成果はそれだけの価値のあるものです。決してお世辞などではありません。それにワイルドティーガー討伐で傷一つ負わない”暁影のそら”様はいまだ本気ではないのではないでしょうか」
うわあパオラさん、その表情はダメです。美人がしていい表情ではないです。それは悪役令嬢の顔です。
「パオラさん。本気でないとは、また言葉が過ぎるとは思いませんか?」
あ、瑶さんが引き継いでくれたわ。ちょっとこの先あたしだと辛くなってきてたのよね。
「ヨウ様、すみません。少々言葉が過ぎました。ただ、現在の立ち位置では暁影のそら様の実力に相応する場所に立っておられないように思えるのです」
「もしそうだったとしても、やむを得ないでしょう。戦闘力はともかく私と朝未はハンター登録してまだ1年にも満たない駆け出しですし、マルティナさんにしても女神の雷に飼殺しになっていたんですから。今は実力を伸ばしつつ経験を積み、ランクを上げていくっているところですからね。きっとそのうち実力と経験、実績とランク、立ち位置が釣り合うでしょう」
あああ、これ瑶さん、言外にレアルさん達よりあたし達の方が上って言っちゃってるわね。
「まあ、そんなことはどうでも良いんです。朝未も、ここまでにしておこうね」
「う、はい」
瑶さんには、あたしの気持ちが見抜かれていたみたいね。むしゃくしゃして感情的になってしまったもの。瑶さんは、そんなうなだれるあたしの頭をそっと撫でて慰めてくれた。
清算を済ませ、ギルドを出ようとしているあたし達の前にレアルさんが前を塞ぐように立った。
「おい、模擬戦に付き合え」
「レアル。いくらなんでも失礼がすぎます。そこまでいくと冗談ではすみませんよ」
「うるせぇ!冗談でこんなこと言えるか」
「大体、何の意味もないでしょうに」
「そっちに無くても、こっちにはあるんだよ。それとも逃げるのか?」
マルティナさんが止めようとしてくれてはいるけど、これ止まらない奴よね。瑶さんを見ると呆れたような顔で首を横に振ったわね。
「はあ、こっちになんの得もないのに本気で受けると思っているんですか?」
「オレに勝ったら認めてやるって言ってんだ」
「いや、そんなの欲しくありませんし。無駄に消耗する、だけ……」
いえ大した消耗もないかしらね。それならこちらから条件つけようかしら。
「いえ、そうですね、今後一切絡んでこないというのなら、お相手します」
「え、アサミ様。よろしいのですか?」
「この様子だと、ここで断っても、いつまでも絡んでくるのが目に見えてますから」
しかたないです、とマルティナさんに告げて、訓練場に移動した。
「で、ルールは?」
「は?何のことだ?」
「模擬戦である以上、勝ち負けとか戦い方の決めごとがあるでしょう?」
「そんなのは決まっている。なんでもアリアリだ。相手を殺さない程度ならなんでもあり。相手が降参するか戦闘不能になったところで終了だ」
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