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新天地へ
第85話 盗賊?
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護衛初日は、事前に聞いていた予測通りに何という事もなく無事に街道を進むことが出来た。
予定では最初の5日ほどは野営で、6日目あたりで途中の村に補給を兼ねて1泊だって聞いているので当然初日は野営ね。
昼は携帯食をモソモソと食べている貫く剣やマルタさんを横目に「エルリックの家」で最後に作ったサンドイッチを食べていたのよね。そうしたら、どうにも視線が集まってきたのよ。
「そ、その、ヨウ殿。その食べ物はいったい?」
我慢が出来なかったらしくてマルタさんが瑶さんに質問してきたのよね。
「これですか?これはサンドイッチといって、うちの朝未が作ってくれた、まあ携帯食のようなものですね」
「あ、あの、お金は払いますので分けていただくことはできませんか?」
ここでみんなの視線があたしに集まってしまったのよね。
「はあ、まったく。初日のあたし達用に作ってきただけなので数がないんですよね。それにお金をって言われても売るつもりで作ったものではないので値段だって付けようがないですし」
依頼主のマルタさん、マルタさんの使用人2人、それに貫く剣のメンバー4人。まさかマルタさんだけに渡すわけにもいかないだろうし……。かと言って、依頼主であるマルタさんの要望を無下にするのも問題よね。
あたしは手持ちの食料を思い出しながらどうしようかと考えた結果。
「ひとりひとつまで。それからマルタさん。確か荷物の中に小麦粉とリンゴがありましたよね。お金と別にそれらを少し分けてください。その条件でよければお分けします」
全員が我慢できなかったらしくて、あたしたちの夕ご飯が無くなったのよね、悲しい。
そこで、あたしは仕方なく昼休憩の間にパン種の仕込みをすることにした。午後いっぱい程度じゃ1次発酵は十分には進まないけど過発酵よりは多分マシだし、無発酵パンよりはいいんじゃないかなということで準備。
「天使ちゃん。サンドイッチ美味しかったよ」
「本当は、あれあたしたちの夕ご飯だったんですけどね」
マルタさんのお礼にちょっと嫌味を入れながら、受け取ったリンゴを右手に持ち鍋の上で握りつぶしてジュースにする。
もらった3個のリンゴをジュースにして横を見るとマルタさんの顔が引きつっているわね。何かあったのかしら。
あたしは、そのまま鍋のリンゴジュースにクリーンを掛け残り少なくなっている天然酵母に足して馬車の隅に置かしてもらっている荷物の中にしまった。相変わらずキラキラエフェクト付きのクリーンだけど、もう散々やらかしてきてるのでこのくらいは気にしないことにしたの。
「朝未、なにやってるんだ?」
「え?これからのご飯のための準備ですよ。天然酵母が残り少なくなっていたので追加しておいたんです」
「いや、私の知ってる天然酵母は使い切って別で作るものばかりだったんだけど」
「え?果汁100パーセントのジュースを入れると最短1日くらいで増やせるんですよ。知りません?」
「それは私の知ってる天然酵母の作り方使い方と大分違うな。朝未は物知りだな」
瑶さんが、不思議そうに聞いてきたけど、そんな不思議なことじゃないとおもうけどなぁ。
「なんにしても、これで明日作るパン種用の天然酵母が確保できます」
「天使ちゃん、気をつけなよ。そろそろ盗賊たちのテリトリーに入るからな」
エルリックを発って3日目の朝、貫く剣のリーダーのフアンさんがあたしに声を掛けてきた。
「はい、ありがとうございます。でもなぜあたしに?このメンバーなら瑶さんに声を掛けるものじゃないですか?それとその呼び方やめてください。」
「ああ、見た目だけならそう見えるのは確かだけど、実質天使ちゃんが色々仕切ってるだろ」
「失礼な。あたしは瑶さんにおんぶに抱っこで、すすめてもらってますよ」
「ふふ、まあ、そういう事にしておこうか。なんにしても今日明日が一番盗賊に狙われやすいから気を付けてくれ」
「そういう事にじゃなく、実際そうなんだってば」
あたしの答えに右手をひらひらと振ってフアンさんは貫く剣の方に戻っていった。
もちろん、油断をするつもりなんかないから、常時最大で探知魔法は展開している。今となっては使い慣れたからかあたしの探知魔法の有効範囲はざっくり半径200メートルくらいある。この世界でこんな範囲外から届く攻撃なんて遠距離型の魔法か、大型のバリスタくらいじゃないかしらね。そんなものが使える盗賊なんていないだろうし、そもそもそんなものを使っていたら普通の商人を襲っていたら割が合わないし、更にそんなものを使えるなら盗賊になる必要も多分ない。
「ということで、今日明日は少し気を付けてってことでした」
「うん、でも朝未の探知魔法で十分に警戒はできるよね」
「そうですけどね、クリーンくらいならともかく、半径200メートルの探知魔法とか上級聖属性魔法とかは出来れば使えることを知られたくないですね」
「まあ、そうだろうね。探知魔法に関しては話さなければたまたま気づいたってことで通るだろうから、あとは補助魔法と攻撃魔法だけでなんとかしようか」
そんな話をしていたのはフラグだったのかしらね。
「瑶さん、早速ですが探知魔法に反応がありました」
予定では最初の5日ほどは野営で、6日目あたりで途中の村に補給を兼ねて1泊だって聞いているので当然初日は野営ね。
昼は携帯食をモソモソと食べている貫く剣やマルタさんを横目に「エルリックの家」で最後に作ったサンドイッチを食べていたのよね。そうしたら、どうにも視線が集まってきたのよ。
「そ、その、ヨウ殿。その食べ物はいったい?」
我慢が出来なかったらしくてマルタさんが瑶さんに質問してきたのよね。
「これですか?これはサンドイッチといって、うちの朝未が作ってくれた、まあ携帯食のようなものですね」
「あ、あの、お金は払いますので分けていただくことはできませんか?」
ここでみんなの視線があたしに集まってしまったのよね。
「はあ、まったく。初日のあたし達用に作ってきただけなので数がないんですよね。それにお金をって言われても売るつもりで作ったものではないので値段だって付けようがないですし」
依頼主のマルタさん、マルタさんの使用人2人、それに貫く剣のメンバー4人。まさかマルタさんだけに渡すわけにもいかないだろうし……。かと言って、依頼主であるマルタさんの要望を無下にするのも問題よね。
あたしは手持ちの食料を思い出しながらどうしようかと考えた結果。
「ひとりひとつまで。それからマルタさん。確か荷物の中に小麦粉とリンゴがありましたよね。お金と別にそれらを少し分けてください。その条件でよければお分けします」
全員が我慢できなかったらしくて、あたしたちの夕ご飯が無くなったのよね、悲しい。
そこで、あたしは仕方なく昼休憩の間にパン種の仕込みをすることにした。午後いっぱい程度じゃ1次発酵は十分には進まないけど過発酵よりは多分マシだし、無発酵パンよりはいいんじゃないかなということで準備。
「天使ちゃん。サンドイッチ美味しかったよ」
「本当は、あれあたしたちの夕ご飯だったんですけどね」
マルタさんのお礼にちょっと嫌味を入れながら、受け取ったリンゴを右手に持ち鍋の上で握りつぶしてジュースにする。
もらった3個のリンゴをジュースにして横を見るとマルタさんの顔が引きつっているわね。何かあったのかしら。
あたしは、そのまま鍋のリンゴジュースにクリーンを掛け残り少なくなっている天然酵母に足して馬車の隅に置かしてもらっている荷物の中にしまった。相変わらずキラキラエフェクト付きのクリーンだけど、もう散々やらかしてきてるのでこのくらいは気にしないことにしたの。
「朝未、なにやってるんだ?」
「え?これからのご飯のための準備ですよ。天然酵母が残り少なくなっていたので追加しておいたんです」
「いや、私の知ってる天然酵母は使い切って別で作るものばかりだったんだけど」
「え?果汁100パーセントのジュースを入れると最短1日くらいで増やせるんですよ。知りません?」
「それは私の知ってる天然酵母の作り方使い方と大分違うな。朝未は物知りだな」
瑶さんが、不思議そうに聞いてきたけど、そんな不思議なことじゃないとおもうけどなぁ。
「なんにしても、これで明日作るパン種用の天然酵母が確保できます」
「天使ちゃん、気をつけなよ。そろそろ盗賊たちのテリトリーに入るからな」
エルリックを発って3日目の朝、貫く剣のリーダーのフアンさんがあたしに声を掛けてきた。
「はい、ありがとうございます。でもなぜあたしに?このメンバーなら瑶さんに声を掛けるものじゃないですか?それとその呼び方やめてください。」
「ああ、見た目だけならそう見えるのは確かだけど、実質天使ちゃんが色々仕切ってるだろ」
「失礼な。あたしは瑶さんにおんぶに抱っこで、すすめてもらってますよ」
「ふふ、まあ、そういう事にしておこうか。なんにしても今日明日が一番盗賊に狙われやすいから気を付けてくれ」
「そういう事にじゃなく、実際そうなんだってば」
あたしの答えに右手をひらひらと振ってフアンさんは貫く剣の方に戻っていった。
もちろん、油断をするつもりなんかないから、常時最大で探知魔法は展開している。今となっては使い慣れたからかあたしの探知魔法の有効範囲はざっくり半径200メートルくらいある。この世界でこんな範囲外から届く攻撃なんて遠距離型の魔法か、大型のバリスタくらいじゃないかしらね。そんなものが使える盗賊なんていないだろうし、そもそもそんなものを使っていたら普通の商人を襲っていたら割が合わないし、更にそんなものを使えるなら盗賊になる必要も多分ない。
「ということで、今日明日は少し気を付けてってことでした」
「うん、でも朝未の探知魔法で十分に警戒はできるよね」
「そうですけどね、クリーンくらいならともかく、半径200メートルの探知魔法とか上級聖属性魔法とかは出来れば使えることを知られたくないですね」
「まあ、そうだろうね。探知魔法に関しては話さなければたまたま気づいたってことで通るだろうから、あとは補助魔法と攻撃魔法だけでなんとかしようか」
そんな話をしていたのはフラグだったのかしらね。
「瑶さん、早速ですが探知魔法に反応がありました」
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