83 / 155
新天地へ
第83話 護衛依頼
しおりを挟む
「お世話になりました」
「ああ、お前たちには、もっとここにいて欲しかったが、この状態ではな。十分に力になってやれず、すまなかったな」
今あたし達はハンターギルドでステファノスさんに別れの挨拶をしている。
あれから3カ月下級ハンターパーティのサポートを含め、他のハンター達と合同での依頼を複数回請け、予想はしていたけれど、その多くで女神の雷がそれ1回だけを見ればそうとは判断しきれない、それでも対応を間違えれば命にさえ係わる嫌がらせを受けたのよね。
だからあたし達は、それを理由にして拠点を替えることにしたの。
「アサミも、すまんな。なんなら王都ギルドに紹介状くらいなら書いても良いが」
「い、いえ。あたし達はもう少し田舎のクリフに行こうって言ってるんです」
あたしの言葉に瑶さんも優しく頷いてくれた。
王都だなんてとんでもないわ。いつ”聖女”爆弾が爆発するか分からないじゃないの。
「マルティナも、面倒な立場のままで放り出すようですまんな」
「いえ、わたしアサミ様の下にいられる今が幸運と思っていますので」
マルティナさんも笑顔でステファノスさんに答えているわね。そしてマルティナさんはいつの頃からか、あたしのことを様付けで呼ぶようになったの。何か気づいたようで、何度言っても頑なに様付けのままで、ちょっと心苦しいのよね。王族って誤解は解いたはずなんだけどなあ。
「まったく、お前たちなら、そう遠くない将来3級、いやひょっとしたら1級にもなれるかと思っていたんだがな。……残念だ」
「ま、生きていればまた来ることもあるでしょうから。その時はよろしくお願いします」
「ふう、まったく気楽に言ってくれる。……。そうそう、クリフに行くって言ったか。よかったら護衛依頼受けないか?」
「え?それに護衛は傭兵ギルドの管轄だと思ってたんですけど」
「ああ、まあ確かに通常は傭兵ギルドの取り扱う依頼なんだがな、それはあくまでも護衛が対人戦闘が多いからっていうのが理由で護衛の状況によってはハンターギルドがハンターを斡旋することもあるんだ。そして今回の目的地はクリフの少し手前のグライナーなんだが、あのあたりは魔獣が多くてな、そのせいもあって街に入ることの出来ない盗賊なんかは逆に少ないんだ」
「つまり対魔獣の護衛がメインだからハンターギルドに依頼が来たと?」
「正確には傭兵ギルドと合同で、だな。片道およそ20日で報酬も悪くないし、お前たちにとっては行き掛けの駄賃みたいなもんだろうし、どうだ?」
ハンターギルドに挨拶をした3日後、あたし達は予定を少しずらしてエルリックの南門で一緒に依頼を受けた傭兵ギルドの傭兵パーティー「貫く剣」の4人と一緒に護衛対象である行商人のマルタさんを待っている。マルタさんを含め昨日のうちに顔合わせは済ませているので後はここで合流して出発するだけなんだけど、「貫く剣」のメンバーの視線が照れくさいのよね。
「ふふ、アサミ様、昨日の顔合わせは大変でしたね」
「はあ、まさか、あそこまで名前が売れているなんて思わなかったわ」
「大人気だったよな。天使ちゃんって」
「もう、瑶さんまで。勘弁してくださいよ」
実際に昨日の顔合わせは大変だったわ。傭兵ギルドで合流して護衛同士で先に顔合わせしようってなってたんだけど、傭兵ギルドに入ったとたんに囲まれてしまったのよね。
模擬戦まで申し込まれて。依頼人との顔合わせがあるからって断ったのに、その後ででもいいからって押し切られちゃったもの。翌日護衛依頼が入っているから5人までって言ったら枠の奪い合いが凄かったし。
まさか即席のトーナメントまでやるとは思わなかったもの。
そして勝ち残った5人が物凄い勢いで天に向かって吠えたのには引いたわ。
ただ、模擬戦で1対1だと瑶さんはおろかあたしにも誰一人勝てなかったのはちょっと意外だったわね。しかも補助魔法無しだったのに。一応対人をメインにした傭兵ギルドよね。まあ当てれば勝ちの模擬戦だったからだけど。もし相手が本番のしっかりした防具を付けていたらあたしの剣は半分以上防具で弾かれたとは思うけど。もっともそんな相手にはあたしも剣で相手なんかしないけどね。瑶さん?瑶さんはきっと防具ごと切り捨てちゃうわね。オークの変異種、ハイオークの皮はその辺のプレートメイルより硬かったはずだもの。ゴブリンの変異種だってあたしのファイアーアローを弾いたもの。あれを切り裂ける時点で瑶さんが剣を振るったら生半可な防具は役に立たないわ。
そんな事を考えてボーっとしているところに護衛対象のマルタさんが馬車に乗ってやってきた。
「おはようございます。皆さんよろしくお願いします」
そしてあたし達の初めての護衛が始まった。
「ああ、お前たちには、もっとここにいて欲しかったが、この状態ではな。十分に力になってやれず、すまなかったな」
今あたし達はハンターギルドでステファノスさんに別れの挨拶をしている。
あれから3カ月下級ハンターパーティのサポートを含め、他のハンター達と合同での依頼を複数回請け、予想はしていたけれど、その多くで女神の雷がそれ1回だけを見ればそうとは判断しきれない、それでも対応を間違えれば命にさえ係わる嫌がらせを受けたのよね。
だからあたし達は、それを理由にして拠点を替えることにしたの。
「アサミも、すまんな。なんなら王都ギルドに紹介状くらいなら書いても良いが」
「い、いえ。あたし達はもう少し田舎のクリフに行こうって言ってるんです」
あたしの言葉に瑶さんも優しく頷いてくれた。
王都だなんてとんでもないわ。いつ”聖女”爆弾が爆発するか分からないじゃないの。
「マルティナも、面倒な立場のままで放り出すようですまんな」
「いえ、わたしアサミ様の下にいられる今が幸運と思っていますので」
マルティナさんも笑顔でステファノスさんに答えているわね。そしてマルティナさんはいつの頃からか、あたしのことを様付けで呼ぶようになったの。何か気づいたようで、何度言っても頑なに様付けのままで、ちょっと心苦しいのよね。王族って誤解は解いたはずなんだけどなあ。
「まったく、お前たちなら、そう遠くない将来3級、いやひょっとしたら1級にもなれるかと思っていたんだがな。……残念だ」
「ま、生きていればまた来ることもあるでしょうから。その時はよろしくお願いします」
「ふう、まったく気楽に言ってくれる。……。そうそう、クリフに行くって言ったか。よかったら護衛依頼受けないか?」
「え?それに護衛は傭兵ギルドの管轄だと思ってたんですけど」
「ああ、まあ確かに通常は傭兵ギルドの取り扱う依頼なんだがな、それはあくまでも護衛が対人戦闘が多いからっていうのが理由で護衛の状況によってはハンターギルドがハンターを斡旋することもあるんだ。そして今回の目的地はクリフの少し手前のグライナーなんだが、あのあたりは魔獣が多くてな、そのせいもあって街に入ることの出来ない盗賊なんかは逆に少ないんだ」
「つまり対魔獣の護衛がメインだからハンターギルドに依頼が来たと?」
「正確には傭兵ギルドと合同で、だな。片道およそ20日で報酬も悪くないし、お前たちにとっては行き掛けの駄賃みたいなもんだろうし、どうだ?」
ハンターギルドに挨拶をした3日後、あたし達は予定を少しずらしてエルリックの南門で一緒に依頼を受けた傭兵ギルドの傭兵パーティー「貫く剣」の4人と一緒に護衛対象である行商人のマルタさんを待っている。マルタさんを含め昨日のうちに顔合わせは済ませているので後はここで合流して出発するだけなんだけど、「貫く剣」のメンバーの視線が照れくさいのよね。
「ふふ、アサミ様、昨日の顔合わせは大変でしたね」
「はあ、まさか、あそこまで名前が売れているなんて思わなかったわ」
「大人気だったよな。天使ちゃんって」
「もう、瑶さんまで。勘弁してくださいよ」
実際に昨日の顔合わせは大変だったわ。傭兵ギルドで合流して護衛同士で先に顔合わせしようってなってたんだけど、傭兵ギルドに入ったとたんに囲まれてしまったのよね。
模擬戦まで申し込まれて。依頼人との顔合わせがあるからって断ったのに、その後ででもいいからって押し切られちゃったもの。翌日護衛依頼が入っているから5人までって言ったら枠の奪い合いが凄かったし。
まさか即席のトーナメントまでやるとは思わなかったもの。
そして勝ち残った5人が物凄い勢いで天に向かって吠えたのには引いたわ。
ただ、模擬戦で1対1だと瑶さんはおろかあたしにも誰一人勝てなかったのはちょっと意外だったわね。しかも補助魔法無しだったのに。一応対人をメインにした傭兵ギルドよね。まあ当てれば勝ちの模擬戦だったからだけど。もし相手が本番のしっかりした防具を付けていたらあたしの剣は半分以上防具で弾かれたとは思うけど。もっともそんな相手にはあたしも剣で相手なんかしないけどね。瑶さん?瑶さんはきっと防具ごと切り捨てちゃうわね。オークの変異種、ハイオークの皮はその辺のプレートメイルより硬かったはずだもの。ゴブリンの変異種だってあたしのファイアーアローを弾いたもの。あれを切り裂ける時点で瑶さんが剣を振るったら生半可な防具は役に立たないわ。
そんな事を考えてボーっとしているところに護衛対象のマルタさんが馬車に乗ってやってきた。
「おはようございます。皆さんよろしくお願いします」
そしてあたし達の初めての護衛が始まった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる