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聖女
第49話 受付嬢アレッシア
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「はあ?スリーテールフォックスと思って狩ったキツネの尻尾が6本だったんですか?」
ハンターギルドの奥。買い取りカウンターでいつものお姉さんに獲物の査定をしてもらっているのだけど……。
うん、そうよね。さっきナインテールフォックスの説明を聞いたから、お姉さんの気持ちは分からないでは無いわ。
「ええ、強くて苦戦しました」
「それ、ヨウ様とアサミ様の2人でということですよね」
あたし達は目をそらしながら頷くしかないのだけど……。
「アサミ様には、初日から驚かされましたが。とりあえず、査定をしてしまいましょう。このカンターに順番に出していってください」
お姉さんに促されて、あたし達はカウンターに狐を並べていくのだけど、尻尾の数が2本4本3本、最後にドンと乗せた狐の尻尾が6本。
あ、お姉さんが頭を抱えているわね。先にちゃんと説明したのに。
「間違いなくナインテールフォックスですね。尻尾が6本なのでナインテールフォックスの中では弱い個体ですが、それでも8級ハンター2人で仕留めるような魔獣じゃないんですけどね」
それでも、お姉さんは査定を進めてくれてお金をカウンターに並べたのよね。
「まずはスリーテールフォックス、尻尾が2本3本4本が各1体、綺麗に倒され毛皮にも余計な傷もありませんので12万スクルド、ナインテールフォックスの尻尾6本が1体。基本査定30万スクルドですがこちらはこことここに少し傷がありますので25万スクルド。合計37万スクルドです」
日本円にして約74万円くらいかしら。1日の稼ぎとしてはかなりね。あ、いえ、あたしはある意味死ぬところだったって事考えたらそれほどでもないのかしら?
「では、あちらでお支払いしますのでいらしてください」
「そういえば、いつもお姉さんが対応してくれてますけど。受付で担当とかあったりするんですか?」
そう、ギルドで入会も資料室への案内も、討伐依頼の選定のアドバイス、そして今回の討伐素材の受付も全部このお姉さんがやってくれているのよね。
「ふふ、普通はありませんね。普通は」
なんかその視線が意味深なんですけど。
「普通はという事は、たまにはあるって事ですよね?」
怖いもの見たさ的に一応聞いてみることにしたのだけど。
「ええ、一般的には高ランクのハンターには専属ないし優先担当がつきますね」
「でも、あたし達は別に高ランクってわけじゃないですけど」
「ランクは登録したばかりなので確かに高くは無いですが、落ち目だったとはいえ6級ハンターを手玉に取って天使と呼ばれるような女の子なら、ね」
きれーなウィンクをするお姉さん。その返事は聞きたくなかったわ。確かにやらかしたとは思ったけど、そこまでになるなんて。
「もう、それは……。ふぅ、数日前の自分を殴ってでも止めてやりたい気分ですが、今更ですね。それでひとつお聞きしてもいいですか」
「なんでしょう。答えられることなら良いのですが」
それでもあたしは、深呼吸をして心を落ち着けると、気になっていたことをひとつだけ口にしたの。
「お姉さん、お名前教えてくれませんか?」
お姉さんは、右手を頬にあて目をまん丸にしたわね。
「あらあら、失礼しました。そういえば自己紹介もしていませんでしたね。わたしはアレッシアといいます。見ての通りエルリックハンターギルドの受付を担当しております。当面、アサミ様、ヨウ様の優先担当となります。お見知りおきください。受付窓口担当の中では経験を積んでいる方だと自負しております。困りごと等ありましたら、ご相談に乗らせていただきますよ」
あら?これはひょっとして目立ったなりに得もあったという事かしらね。あたしは瑶さんに視線を向けてここからはお任せすることにした。
「ご丁寧にありがとうございます。こちらも改めて紹介させていただきますね。私は瑶。こちらの少しやんちゃな女の子が朝未です。基本的に後衛の朝未が弓で先制し、私が前衛で支えるのが私達の今のところのスタイルです。朝未も多少は近接戦闘も出来ますのでペアとしては比較的安定していると思っています。ただ人数が少ないだけに想定外の事態に弱いという弱点があるのが悩みですけどね」
瑶さんが苦笑しながら受付のお姉さん改めアレッシアさんに説明してくれたわね。
「なるほど、少人数ですとその辺りがどうしても弱くなりがちですね。信頼のおける仲間をふやすのも手ですが、ご紹介しましょうか?」
「いえ、今はまだメンバーを増やすつもりはありません。もう少し2人で地力をつけようと思いますので」
「わかりました。そうですね。メンバーを増やすのは、もう少しお2人の実力にハンターランクが追いついてからの方が良いかもしれませんね」
「はい、よろしくお願いします」
「今日は、これで?」
「ええ、さすがに疲れましたので引き上げようと思います。数日休んでそれから次の仕事をしようかと」
「そうですね。ナインテールフォックスの討伐なんてことを達成したんです。心身ともにお疲れでしょう。しっかりと休息をとられた方がいいでしょうね。ではまたのおいでをお待ちしております」
あたし達は、挨拶をするとギルドを出て、そのままヴェルマーさんの工房に向かうことにしたのよね。
ハンターギルドの奥。買い取りカウンターでいつものお姉さんに獲物の査定をしてもらっているのだけど……。
うん、そうよね。さっきナインテールフォックスの説明を聞いたから、お姉さんの気持ちは分からないでは無いわ。
「ええ、強くて苦戦しました」
「それ、ヨウ様とアサミ様の2人でということですよね」
あたし達は目をそらしながら頷くしかないのだけど……。
「アサミ様には、初日から驚かされましたが。とりあえず、査定をしてしまいましょう。このカンターに順番に出していってください」
お姉さんに促されて、あたし達はカウンターに狐を並べていくのだけど、尻尾の数が2本4本3本、最後にドンと乗せた狐の尻尾が6本。
あ、お姉さんが頭を抱えているわね。先にちゃんと説明したのに。
「間違いなくナインテールフォックスですね。尻尾が6本なのでナインテールフォックスの中では弱い個体ですが、それでも8級ハンター2人で仕留めるような魔獣じゃないんですけどね」
それでも、お姉さんは査定を進めてくれてお金をカウンターに並べたのよね。
「まずはスリーテールフォックス、尻尾が2本3本4本が各1体、綺麗に倒され毛皮にも余計な傷もありませんので12万スクルド、ナインテールフォックスの尻尾6本が1体。基本査定30万スクルドですがこちらはこことここに少し傷がありますので25万スクルド。合計37万スクルドです」
日本円にして約74万円くらいかしら。1日の稼ぎとしてはかなりね。あ、いえ、あたしはある意味死ぬところだったって事考えたらそれほどでもないのかしら?
「では、あちらでお支払いしますのでいらしてください」
「そういえば、いつもお姉さんが対応してくれてますけど。受付で担当とかあったりするんですか?」
そう、ギルドで入会も資料室への案内も、討伐依頼の選定のアドバイス、そして今回の討伐素材の受付も全部このお姉さんがやってくれているのよね。
「ふふ、普通はありませんね。普通は」
なんかその視線が意味深なんですけど。
「普通はという事は、たまにはあるって事ですよね?」
怖いもの見たさ的に一応聞いてみることにしたのだけど。
「ええ、一般的には高ランクのハンターには専属ないし優先担当がつきますね」
「でも、あたし達は別に高ランクってわけじゃないですけど」
「ランクは登録したばかりなので確かに高くは無いですが、落ち目だったとはいえ6級ハンターを手玉に取って天使と呼ばれるような女の子なら、ね」
きれーなウィンクをするお姉さん。その返事は聞きたくなかったわ。確かにやらかしたとは思ったけど、そこまでになるなんて。
「もう、それは……。ふぅ、数日前の自分を殴ってでも止めてやりたい気分ですが、今更ですね。それでひとつお聞きしてもいいですか」
「なんでしょう。答えられることなら良いのですが」
それでもあたしは、深呼吸をして心を落ち着けると、気になっていたことをひとつだけ口にしたの。
「お姉さん、お名前教えてくれませんか?」
お姉さんは、右手を頬にあて目をまん丸にしたわね。
「あらあら、失礼しました。そういえば自己紹介もしていませんでしたね。わたしはアレッシアといいます。見ての通りエルリックハンターギルドの受付を担当しております。当面、アサミ様、ヨウ様の優先担当となります。お見知りおきください。受付窓口担当の中では経験を積んでいる方だと自負しております。困りごと等ありましたら、ご相談に乗らせていただきますよ」
あら?これはひょっとして目立ったなりに得もあったという事かしらね。あたしは瑶さんに視線を向けてここからはお任せすることにした。
「ご丁寧にありがとうございます。こちらも改めて紹介させていただきますね。私は瑶。こちらの少しやんちゃな女の子が朝未です。基本的に後衛の朝未が弓で先制し、私が前衛で支えるのが私達の今のところのスタイルです。朝未も多少は近接戦闘も出来ますのでペアとしては比較的安定していると思っています。ただ人数が少ないだけに想定外の事態に弱いという弱点があるのが悩みですけどね」
瑶さんが苦笑しながら受付のお姉さん改めアレッシアさんに説明してくれたわね。
「なるほど、少人数ですとその辺りがどうしても弱くなりがちですね。信頼のおける仲間をふやすのも手ですが、ご紹介しましょうか?」
「いえ、今はまだメンバーを増やすつもりはありません。もう少し2人で地力をつけようと思いますので」
「わかりました。そうですね。メンバーを増やすのは、もう少しお2人の実力にハンターランクが追いついてからの方が良いかもしれませんね」
「はい、よろしくお願いします」
「今日は、これで?」
「ええ、さすがに疲れましたので引き上げようと思います。数日休んでそれから次の仕事をしようかと」
「そうですね。ナインテールフォックスの討伐なんてことを達成したんです。心身ともにお疲れでしょう。しっかりと休息をとられた方がいいでしょうね。ではまたのおいでをお待ちしております」
あたし達は、挨拶をするとギルドを出て、そのままヴェルマーさんの工房に向かうことにしたのよね。
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