漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど？

９３．海といえば水着だろ！

　道中さなえさんの危険運転に振り回されながらも、俺たちは無事に海水浴場に到着した。

「わぁっ！　海よ海！　広くて青ーい！」

　最初に声を上げたのは日葵だった。普段の優等生でも淫乱ピンクでもない。純粋に海に喜ぶ少女の姿がそこにはあった。

「ひまりんテンション高いねー。あんまし海に行ったことなかったの？」
「小学生以来なのよ。小さい頃から海は純平くんの家族ぐるみで行っていたのだけれど、彼が泳ぐのが苦手だから行きたくないって駄々をこねてね。それから私まで海に行かなくなったわ」

　日葵はそう言いながら表情を曇らせる。
　久しぶりに原作主人公を思い出す。原作の夏休みはひたすら白鳥日葵の調教に紙幅を費やしていたので、そういうエピソードがあるとは知らなかった。別に野坂に興味ないからどうでもいいけど。

「本当は行きたかったのに……。彼に悪いと思ってしまって、わがままを言えなかったわ」
「だったら俺の前では我慢すんな」
「晃生くん？」

　きょとんと俺を見つめる日葵。俺はニヤリと笑ってピンク頭を撫でた。

「わがままくらいいくらでも聞いてやる。やりたいこと好きなこと、日葵がしたいことなら聞いてやるさ。それくらい可愛いもんだぜ」
「……うん♪」

　過去を思い出しては後悔する。たとえそれが小さなことだとしても、何度も繰り返すのであればバカにはできない。
　俺の女にはそんな思いをさせたくなかった。これも自分勝手な欲なんだろうが。

「それってアタシのお願いも聞いてくれるってこと？」
「ん？　ああ、そうだな。俺は自分の女には寛大なんだ」
「じゃあさ、かき氷おごってよ！　いやぁー、海でかき氷って組み合わせが憧れだったんだよねー」

　羽彩が前のめりになってお願いを口にする。なんとも小さな願望である。

「ふふっ、羽彩ちゃんってかき氷を食べたことなかったの？」
「バカにすんなし。かき氷くらい食べたことあるよ。でも、海でかき氷を食べるとお腹壊すからって親に禁止されてたんだよー」

　羽彩は唇を尖らせる。彼女の親は娘が幼いままだと思っているのかもな。あながち間違っていない気もするけど。

「ねえねえ晃生くん」
「ん、どうしたエリカ？」

　背中を突っつかれて振り向くと、エリカが好奇心を隠し切れないとばかりの表情を浮かべていた。

「かき氷って何？　氷なのに食べ物なの？」
「……」

　かき氷を知らないお嬢様が約一名。そうか……知らない人っているんだなぁ。

「実際に食べてみればわかりますよ。そういうわけでアキくん。あたしにもかき氷おごってくださいね？」
「梨乃ったら。急に冷たいものを食べてお腹壊さないようにね。暑いと思って冷たいものばかりをお腹に入れたら身体に悪いんだから」
「もーっ、わかってるよお母さん」

　海に入る前からきゃっきゃと盛り上がる。女性比率が多いとこうなることも必然か。
　そんなわけで、俺たちは水着に着替えて海へと繰り出すのであった。


　　◇　◇　◇


　ビーチには多くの家族連れが溢れていた。沖の方ではサーフィンを楽しむ集団もいる。
　まさに海日和といった天気もあってか、海水浴場はとても賑やかだった。

「日差しが強いな。紫外線が心配だぜ」

　そんなことを呟きながらパラソルを立てる。荷物を置いて一息ついていたら、水着に着替えた女性陣が現れた。

「お待たせ晃生ー♪」

　圧巻の一言だった。
　羽彩はビキニ姿でそのスタイルの良さを強調していた。夏らしいカラフルな水着で、彼女の明るさを強調している。

「ふふっ、私の水着姿に悩殺されるといいわ♪」

　テンションが上がったままなのだろう。日葵は得意げに胸を張っていた。ビキニではその零れんばかりの巨乳を収めるのが大変そうに見える。

「先に準備してくれてありがとうね晃生くん」

　エリカはセクシーな黒ビキニだった。可愛らしくフリルがついているが、思春期男子には目の毒になってしまうほどの色気を振りまいていた。

「みんなスタイル良すぎですよぅ……」

　みんなの陰に隠れようとしている梨乃だが、彼女自身の色気もすごかった。ロリ巨乳にビキニという組み合わせは、俺ですらドキドキさせられる輝きを放っている。

「みんな忘れ物はないわね？　車に忘れ物がある人は言いなさい。ついて行ってあげるから」

　何度もみんなに確認を呼びかけるさなえさん。梨乃に似ているが、違う印象を抱かせてくれる。この中で唯一の控えめな水着姿が、大人っぽさを表しているようだった。
　ずらりと並ぶ美少女たち。しかも全員巨乳ときたもんだ。エロ漫画のヒロインとはいえ、圧巻の光景だ。

「どしたん晃生？　もしかして、アタシらの水着姿に見惚れちゃってんの？」

　にししっ、とおかしそうに笑う金髪ギャルが俺の顔を覗き込む。
　あまりの光景に目を奪われていたようだ。羽彩に言われて自分が呆けていたことに気づく。

「ああ、あまりにも最高の光景だったからな。みんな水着がよく似合っているぜ。エロ可愛くてたまらねえ」
「えっ。う、うん……えへへ。晃生に喜んでもらえると嬉しいな」

　ちょっと照れながらはにかむ羽彩。他の女たちも同じように喜びを見せる。

「エロ可愛いって……。もっと他に言い方はなかったの？　欲望に満ちた顔しちゃって……心配だわ」

　さなえさんは一人俺を警戒していた。
　男の欲をオブラートに包まなかったことは反省します。でも仕方がねえじゃねえか。こんな魅力的な女たちが俺にアピールしているんだからよ。男として反応するのが礼儀ってもんだろう。