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91.海と聞けばテンションが上がる若者ども
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「海といえば夏の定番レジャースポットだよ! せっかくの夏休みなのにアタシらちゃんと遊んでないじゃん。思い出作らなきゃ後悔するよっ。晃生はそれで良いの? 良くないよね! だったら海に行こうぜ! 恋と水着は夏に咲くんだってさ。今ならアタシの新作水着をお披露目してあげるから!」
と、羽彩は力強く海行きたいアピールをする。とりあえず情熱は感じた。うん。
「ふわぁ~」
「あくびで返事されたっ!?」
だって寝起きなんだもん。
大きくあくびをして、寝ぼけ眼を擦る。しぱしぱと目を瞬かせて羽彩を見ると、金髪のサイドテールがへにょんと力を失っていた。
「どうした羽彩?」
「どうしたじゃねえし……。無視しなくてもいいじゃんか~……」
「別に無視してねえよ。海に行きたいんだろ? なら予定を立てねえとな」
羽彩ががばっと勢いよく顔を上げる。金髪サイドテールもフリフリと揺れて元気を取り戻したようだ。
「行く? 行くの? アタシと一緒に行ってくれるの?」
「そうだっつってんだろうが。そんなに何度も確認すんじゃねえよ」
あんまり行く行く言わないでほしい。なんか変な風に聞こえちゃうだろうが。
「やったー!」
「良かったね氷室ちゃん。イエーイ」
両手を挙げて喜びを表す羽彩。浴室から出たエリカが話を聞いていたわけでもないだろうに、ニコニコと笑いながら一緒になって喜んでいた。
「じゃあ早速みんなの予定を確認しなきゃね。ひまりんは夏期講習がどうとか言ってたし、りのちんは部活があるんだっけ? あっ、エリカさんは予定大丈夫ですか?」
海に行く予定日を決めるために、羽彩はスマホで他のメンバーにメッセージを送る。指の動きが速すぎて、こればかりは郷田晃生のチートボディでもついて行けなかった。
「私はとくに予定はないけれど……。氷室ちゃんはいいの?」
「いいって何がですか?」
「晃生くんと二人きりじゃなくて」
エリカにそう言われて、羽彩の顔がぼんっ! と一瞬で真っ赤になった。
「あああ、晃生と二人きりで海ってことですか!? 無理無理無理っ。だって、そんなの……恥ずかしいしっ」
恥じらう金髪ギャルは俺をチラチラと見る。何を想像してんのか、目が合うと全力で逸らされた。
「今更何を恥ずかしがるってんだよ? 水着よりも恥ずかしいところを何度も見てるだ──」
「晃生のバカ! デリカシーなさすぎっ!!」
「す、すんません……」
羽彩の迫力に負けて思わず謝ってしまった。あれ、今俺に悪いところあったか?
「氷室ちゃんがそう言うなら、みんなで楽しめるように計画を立てようか。ふふっ、だったら私も新しい水着を買いに行きたいな。せっかくなら晃生くんに喜んでもらいたいしね」
エリカも海に行くことにノリノリのようである。
エリカは最近とくに大変だったからな。気分転換するためにも少しくらいハメを外したっていいだろう。
そんな風に思っていたら、羽彩も優しい顔でエリカを見つめていた。
「……」
どうやら羽彩はエリカのメンタルのフォローまで考えてくれていたようだ。なんだかんだで気遣いできる奴なんだよなぁ。
手を伸ばして羽彩の頭を撫でる。染めている割に、けっこう癖になる手触りだった。
「ふぇ? な、何? 急に頭撫でたりなんかしてさ……」
「別に。俺はやりたいことをやりたい時にする。文句あるか?」
「……ない」
羽彩は俺の手つきに身を預けた。心地良さそうに目を細めながらも、時折ビクンと小さく跳ねる反応が可愛らしい。
「ラブラブだねー。いいなー」
羽彩とは逆隣から身を寄せてくるエリカ。「いいなー」と言いながら頭を撫でやすいように傾けてくるところにいじらしさを感じる。
「よしよし」
「わーい♪ 晃生くん優しいー」
空いた手でエリカの頭を撫でてやる。甘やかし上手だけど、けっこう甘えたがりでもあるよね。
まさに両手に花という状況。ドタバタしていたからこそ、こういう時間が幸せだよなぁとしみじみ思う。
「海に行くと聞いて急いで来たわ!!」
穏やかな時間を破壊せんとばかりに、玄関のドアが音を立てて開かれた。
部屋に上がり込んできたのは日葵だった。なぜか大きくて丸々としたスイカを持っている。
「ひまりん……そのスイカは何?」
「羽彩ちゃん知らないの? 海といえばスイカ割りなのよ!」
スイカ割りも海では定番の遊びかもしれないが……。なぜ今持ってきた?
「あのな日葵。海へ行きたいとは思っているが、それは今日じゃねえぞ」
「え、そうなの?」
「当たり前だ。もう夕方だし。カラオケやゲーセンじゃねえんだから、今から行くって言われる方が困るだろ」
「……それもそうね」
日葵はちょっと残念そうにスイカをテーブルに置いた。ていうかスイカだけ持って海に行くつもりだったのか? 海をなんだと思ってんだか。
「白鳥ちゃんは今日夏期講習に行ってたんじゃなかったっけ? もう終わったのかな」
「いいえ、講習中でしたけど、羽彩ちゃんから『海に行くよ!』ってメッセージをもらったので抜け出してきちゃいました」
悪戯っ子みたいに舌を出す日葵。優等生を不真面目にしてしまい責任を感じております……。つーか羽彩はもっと文面を考えてから送れよ。
ていうか羽彩といい日葵といい、どんだけ海に行きたいんだよ。子供か。
「スイカ割りって私したことないなぁ。楽しみだね晃生くん」
「ふっ、俺がスイカ割りのやり方ってやつを教えてやんよ」
俺は腕に力を込めた。まったく、みんな海にワクワクしやがってよ!
と、羽彩は力強く海行きたいアピールをする。とりあえず情熱は感じた。うん。
「ふわぁ~」
「あくびで返事されたっ!?」
だって寝起きなんだもん。
大きくあくびをして、寝ぼけ眼を擦る。しぱしぱと目を瞬かせて羽彩を見ると、金髪のサイドテールがへにょんと力を失っていた。
「どうした羽彩?」
「どうしたじゃねえし……。無視しなくてもいいじゃんか~……」
「別に無視してねえよ。海に行きたいんだろ? なら予定を立てねえとな」
羽彩ががばっと勢いよく顔を上げる。金髪サイドテールもフリフリと揺れて元気を取り戻したようだ。
「行く? 行くの? アタシと一緒に行ってくれるの?」
「そうだっつってんだろうが。そんなに何度も確認すんじゃねえよ」
あんまり行く行く言わないでほしい。なんか変な風に聞こえちゃうだろうが。
「やったー!」
「良かったね氷室ちゃん。イエーイ」
両手を挙げて喜びを表す羽彩。浴室から出たエリカが話を聞いていたわけでもないだろうに、ニコニコと笑いながら一緒になって喜んでいた。
「じゃあ早速みんなの予定を確認しなきゃね。ひまりんは夏期講習がどうとか言ってたし、りのちんは部活があるんだっけ? あっ、エリカさんは予定大丈夫ですか?」
海に行く予定日を決めるために、羽彩はスマホで他のメンバーにメッセージを送る。指の動きが速すぎて、こればかりは郷田晃生のチートボディでもついて行けなかった。
「私はとくに予定はないけれど……。氷室ちゃんはいいの?」
「いいって何がですか?」
「晃生くんと二人きりじゃなくて」
エリカにそう言われて、羽彩の顔がぼんっ! と一瞬で真っ赤になった。
「あああ、晃生と二人きりで海ってことですか!? 無理無理無理っ。だって、そんなの……恥ずかしいしっ」
恥じらう金髪ギャルは俺をチラチラと見る。何を想像してんのか、目が合うと全力で逸らされた。
「今更何を恥ずかしがるってんだよ? 水着よりも恥ずかしいところを何度も見てるだ──」
「晃生のバカ! デリカシーなさすぎっ!!」
「す、すんません……」
羽彩の迫力に負けて思わず謝ってしまった。あれ、今俺に悪いところあったか?
「氷室ちゃんがそう言うなら、みんなで楽しめるように計画を立てようか。ふふっ、だったら私も新しい水着を買いに行きたいな。せっかくなら晃生くんに喜んでもらいたいしね」
エリカも海に行くことにノリノリのようである。
エリカは最近とくに大変だったからな。気分転換するためにも少しくらいハメを外したっていいだろう。
そんな風に思っていたら、羽彩も優しい顔でエリカを見つめていた。
「……」
どうやら羽彩はエリカのメンタルのフォローまで考えてくれていたようだ。なんだかんだで気遣いできる奴なんだよなぁ。
手を伸ばして羽彩の頭を撫でる。染めている割に、けっこう癖になる手触りだった。
「ふぇ? な、何? 急に頭撫でたりなんかしてさ……」
「別に。俺はやりたいことをやりたい時にする。文句あるか?」
「……ない」
羽彩は俺の手つきに身を預けた。心地良さそうに目を細めながらも、時折ビクンと小さく跳ねる反応が可愛らしい。
「ラブラブだねー。いいなー」
羽彩とは逆隣から身を寄せてくるエリカ。「いいなー」と言いながら頭を撫でやすいように傾けてくるところにいじらしさを感じる。
「よしよし」
「わーい♪ 晃生くん優しいー」
空いた手でエリカの頭を撫でてやる。甘やかし上手だけど、けっこう甘えたがりでもあるよね。
まさに両手に花という状況。ドタバタしていたからこそ、こういう時間が幸せだよなぁとしみじみ思う。
「海に行くと聞いて急いで来たわ!!」
穏やかな時間を破壊せんとばかりに、玄関のドアが音を立てて開かれた。
部屋に上がり込んできたのは日葵だった。なぜか大きくて丸々としたスイカを持っている。
「ひまりん……そのスイカは何?」
「羽彩ちゃん知らないの? 海といえばスイカ割りなのよ!」
スイカ割りも海では定番の遊びかもしれないが……。なぜ今持ってきた?
「あのな日葵。海へ行きたいとは思っているが、それは今日じゃねえぞ」
「え、そうなの?」
「当たり前だ。もう夕方だし。カラオケやゲーセンじゃねえんだから、今から行くって言われる方が困るだろ」
「……それもそうね」
日葵はちょっと残念そうにスイカをテーブルに置いた。ていうかスイカだけ持って海に行くつもりだったのか? 海をなんだと思ってんだか。
「白鳥ちゃんは今日夏期講習に行ってたんじゃなかったっけ? もう終わったのかな」
「いいえ、講習中でしたけど、羽彩ちゃんから『海に行くよ!』ってメッセージをもらったので抜け出してきちゃいました」
悪戯っ子みたいに舌を出す日葵。優等生を不真面目にしてしまい責任を感じております……。つーか羽彩はもっと文面を考えてから送れよ。
ていうか羽彩といい日葵といい、どんだけ海に行きたいんだよ。子供か。
「スイカ割りって私したことないなぁ。楽しみだね晃生くん」
「ふっ、俺がスイカ割りのやり方ってやつを教えてやんよ」
俺は腕に力を込めた。まったく、みんな海にワクワクしやがってよ!
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