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81.氷室羽彩は屋敷の中心で世界で一番頼れる人を叫ぶ
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「どう? 変なところはないかな?」
メイド服に着替えたエリカさんはスカートを翻しながらアタシたちに確認する。
メイド服越しでもエリカさんの形の良いおっぱいが確認できる。青髪に白いヘッドドレスは似合っているし。おっとりとした印象は、逆にメイド業を余裕でこなせるような雰囲気を感じさせた。
「エリカさん百点満点です! 超可愛い~。むっはぁ……は、鼻血出そう……」
「うん、落ち着こうね氷室ちゃん。似合っているかじゃなくてね、ちゃんと変装できているのかなって聞いたんだよー」
これは晃生が夢中になるのもわかる。だって何を着ても美人さが際立つんだもん。エリカさんの壁は高いなぁ……。一緒にがんばろうぜひまりん。
「とくに問題はなさそうだ。顔さえ見られなければなんとかなると思いたいところだが」
「それで充分だよ。まずはここから出ていく。後のことはあの人たちと顔を合わせない方法で解決すればいいんだから」
アタシが鼻血を止めている間に、エリカさんと音無先輩は話を済ませていた。
詳しい作戦とかはよくわかんないけど、とりあえずエリカさんを隠しながら屋敷を脱出する。そういうことになった。
◇ ◇ ◇
最初に結果から言えば、アタシたちはエリカさんの両親に見つかった。
「なぜエリカが部屋の外に……? こ、これは一体どういうことだーーっ!!」
おっさんが大きな声を上げたせいで、屋敷の執事とメイドがぞろぞろ集まってきてしまった。
「まいったね。あともう少しだったのに……」
音無先輩が失敗したとばかりに小さく零す。
もうすぐ出口というところでエリカさんの両親と鉢合わせた。アタシと音無先輩と運転手さんでエリカさんを隠していたんだけど、娘の気配でも感じ取ったのかばれてしまったのだ。
「貴様ら……。誰の許可を得てエリカを連れ出そうとしている? 私はそのようなことを指示した覚えはないぞっ!」
「パパ。この人たちは関係ない。私が出ていくために無理やり協力して──」
「うるさいぞエリカ! 私に口答えするな! そもそも親に逆らうお前が悪いんだろうがっ!!」
エリカさんのお父さ……いや、エリカさんをあんな目に遭わせる親なんておっさんでいいか。おっさんは聞く耳を持ってないって感じだ。話を聞いてはいたけど、こんな親ならアタシは耐えられないね。
「ですが旦那様。あのようなところにいてはエリカ様も気を病まれてしまいます。少しだけでも外の空気を吸った方がよろしいのではないかと思いまして」
「メイド風情が勝手なことをするな! それにエリカにこんな格好をさせて……。私にはエリカを逃がすつもりがあったようにしか見えないがな」
「……ごもっとも」
言い訳できるとは思ってなかったんだろうけど、音無先輩はため息をつく。ていうかエリカさんは気づいたのに、おっさんは音無先輩が知り合いだって気づいていないのかな? 完全に雇っているメイドの一人だと思っているって感じだ。
「エリカ……。あなた、これ以上親に逆らってどうするつもりなのよ? 私たちに恥をかかせるなら、アンタなんかもう娘でもなんでもないわっ!」
おばさんがヒステリックに叫ぶ。
アタシは耳がキンキンしただけだったけど、エリカさんにとっては実の母親からの言葉だ。横目で見るだけでもショックを受けた様子がわかった。
こいつら……。好き勝手なことをしているのは自分たちの方なのに何言ってんだ!
「まあまあまあ。いいじゃないかいいじゃないか。迎えに行く手間が省けただけのことだ」
アタシが何か言ってやろうと口を開きかけた時だった。
エリカさんの両親と一緒にいた男の一人が口を開いた。おっさんよりも年上のおじさんに見える。立場もこの中で誰よりも高いといった態度が隠し切れていない。
その男の口調は柔らかいのに、隠し切れないいやらしさがあった。全然知らない人なのに「エロジジイ」という言葉が頭に浮かぶ。
「彼は西園寺タケルの父だよ」
音無先輩が小声で教えてくれた。って、エリカさんの婚約者とかいう最低男だった西園寺の父親なの!?
「エリカくんの意思なんてどうでもいいじゃないか。ここで捕まえてしまえば何も変わりがない。それどころか、私の性奴隷にする大義名分ができたではないかね?」
「は、はい。西園寺さんのおっしゃる通りです」
え、ちょっと? 何かやばそうな単語が聞こえた気がしたんですけど?
「パ、パパ……? 今の話、どういうこと?」
エリカさんの声が震えている。だって「性奴隷にする」とかトチ狂ったこと言ってんのに、父親が頭を下げて肯定しているんだ。他人のアタシだって恐怖しか感じなかった。
「もう決まったことだ。お前はタケルさんの婚約者に相応しくない。だが、容姿だけはいいからな。エリカを性奴隷として差し出せば、西園寺さんは今後も私との付き合いを続けてくださるとおっしゃってくれたんだ。出来損ないの娘だったが、最後くらいは親の役に立ってくれ」
エリカさんは言葉を失った。アタシも本当にこんな親が存在するのかと目を疑った。
「そういうことだ。小山くんは実に良い提案をしてくれた。親の言うことには従うべきだよエリカくん? まあそのあたりも私がこれから教育してやるつもりだがね。私は息子のように甘くはない。逆らおうと考えるだけ無駄なのだよ」
エロジジイが舌なめずりをする。西園寺も最低男だと思ってたけど、父親はそれ以上のクズ男だ。
「君がタケルにした行いは到底許されるものではない。これは罰なのだよ。ちょうど面白い新薬を手に入れてね。秘書に試そうと思っていたが、せっかくの性奴隷だ。エリカくんが私の身体なしでは生きていられなくなるのか実験してみようじゃないか──」
「ふざけんなっ!! エリカさんをテメーみたいなクズに渡すわけがねえだろうがっ!!」
アタシは思わず怒声を上げていた。
これ以上エロジジイの声を聞いていられない。エリカさんに聞かせたくない。その一心だった。
「……誰だね? メイドのくせに私に対する口の利き方がなっていないように思えるのだが?」
「も、申し訳ございません! おい貴様っ、西園寺さんに謝罪しろ!」
おっさんはアタシを雇ったメイドだと思っているらしい。自分で言うのもなんだけど、アタシみたいなのがお屋敷で働くメイドなわけないでしょうが。ほら、周りのメイドさんと全然違うし。
「アタシはここのメイドじゃねえっ。エリカさんを助けに来たんだ!」
「ほう? もしや君はあれか。タケルの不祥事の動画を撮影したという女のうちの一人か?」
エロジジイが興味を見せる。アタシは負けてやるものかと睨みつけた。
「だったらどうなんだ。エリカさんはアタシらの仲間だ。友達だ! 絶対に守る! お前らみたいなクソジジイの食いものになんか、絶対にさせないからっ!」
「氷室ちゃん……」
親だろうがお偉いさんだろうが関係ない。エリカさんを守りたいって気持ちがアタシを突き動かした。
「なら丁度良い。ここで捕まえて他の連中のことを吐いてもらおうじゃないか。それに──」
エロジジイがアタシの身体を舐めるように目線を走らせた。寒気を感じて自分の身体を抱き締める。
「くくく、なかなかに楽しめそうだ。エリカくんだけではなく、こんな上玉まで手に入れられるとは思わなかったよ。タケルのせいで不運に見舞われたと思ったが、どうやら逆だったらしい」
エロジジイがとんでもないことを言っているのだけはわかる。だってキモいんだもん。
「ちょっ、そんなの犯罪だろっ」
「不法侵入しているくせによく言う。それに小山くんが『知らない』と言いさえすれば、ここに君の存在はなかったことになるのだよ。存在しない者をどうしようが、誰が私を裁けるというのだね?」
エロジジイの目はマジだった。理屈じゃない。本気になれば理由なんて関係なく、思い通りになると信じている目だ。
こいつに何を言っても無駄だ。そう直感できるだけのやばさがある。
「さて、私は忙しいんだ。さっさと所有物になったエリカくんを持ち帰らせてもらおうか。ついでに金髪ギャルもな。ふひひ、たまらんね」
エロジジイの背後から二人の黒服の男が前に出る。ものすごくマッチョな欧米人っぽい。
対抗しようと音無先輩と運転手さんが構えをとる。だけど、体格を比べるだけでも勝ち目がないように見えてしまう。
周りは執事とメイドに囲まれている。逃げることもできなさそうで、でもなんとかしなきゃって考えでいっぱいだった。
エリカさんがアタシの手を握る。不安にさせないように、強く握り返した。
「やれ」
エロジジイが命令する。二人の黒服が動いたのを見て、アタシは迫ってくる危機に世界で一番頼れる人に助けを求めずにはいられなかった。
「助けて! 晃生ぉぉぉぉぉぉーーっ!!」
メイド服に着替えたエリカさんはスカートを翻しながらアタシたちに確認する。
メイド服越しでもエリカさんの形の良いおっぱいが確認できる。青髪に白いヘッドドレスは似合っているし。おっとりとした印象は、逆にメイド業を余裕でこなせるような雰囲気を感じさせた。
「エリカさん百点満点です! 超可愛い~。むっはぁ……は、鼻血出そう……」
「うん、落ち着こうね氷室ちゃん。似合っているかじゃなくてね、ちゃんと変装できているのかなって聞いたんだよー」
これは晃生が夢中になるのもわかる。だって何を着ても美人さが際立つんだもん。エリカさんの壁は高いなぁ……。一緒にがんばろうぜひまりん。
「とくに問題はなさそうだ。顔さえ見られなければなんとかなると思いたいところだが」
「それで充分だよ。まずはここから出ていく。後のことはあの人たちと顔を合わせない方法で解決すればいいんだから」
アタシが鼻血を止めている間に、エリカさんと音無先輩は話を済ませていた。
詳しい作戦とかはよくわかんないけど、とりあえずエリカさんを隠しながら屋敷を脱出する。そういうことになった。
◇ ◇ ◇
最初に結果から言えば、アタシたちはエリカさんの両親に見つかった。
「なぜエリカが部屋の外に……? こ、これは一体どういうことだーーっ!!」
おっさんが大きな声を上げたせいで、屋敷の執事とメイドがぞろぞろ集まってきてしまった。
「まいったね。あともう少しだったのに……」
音無先輩が失敗したとばかりに小さく零す。
もうすぐ出口というところでエリカさんの両親と鉢合わせた。アタシと音無先輩と運転手さんでエリカさんを隠していたんだけど、娘の気配でも感じ取ったのかばれてしまったのだ。
「貴様ら……。誰の許可を得てエリカを連れ出そうとしている? 私はそのようなことを指示した覚えはないぞっ!」
「パパ。この人たちは関係ない。私が出ていくために無理やり協力して──」
「うるさいぞエリカ! 私に口答えするな! そもそも親に逆らうお前が悪いんだろうがっ!!」
エリカさんのお父さ……いや、エリカさんをあんな目に遭わせる親なんておっさんでいいか。おっさんは聞く耳を持ってないって感じだ。話を聞いてはいたけど、こんな親ならアタシは耐えられないね。
「ですが旦那様。あのようなところにいてはエリカ様も気を病まれてしまいます。少しだけでも外の空気を吸った方がよろしいのではないかと思いまして」
「メイド風情が勝手なことをするな! それにエリカにこんな格好をさせて……。私にはエリカを逃がすつもりがあったようにしか見えないがな」
「……ごもっとも」
言い訳できるとは思ってなかったんだろうけど、音無先輩はため息をつく。ていうかエリカさんは気づいたのに、おっさんは音無先輩が知り合いだって気づいていないのかな? 完全に雇っているメイドの一人だと思っているって感じだ。
「エリカ……。あなた、これ以上親に逆らってどうするつもりなのよ? 私たちに恥をかかせるなら、アンタなんかもう娘でもなんでもないわっ!」
おばさんがヒステリックに叫ぶ。
アタシは耳がキンキンしただけだったけど、エリカさんにとっては実の母親からの言葉だ。横目で見るだけでもショックを受けた様子がわかった。
こいつら……。好き勝手なことをしているのは自分たちの方なのに何言ってんだ!
「まあまあまあ。いいじゃないかいいじゃないか。迎えに行く手間が省けただけのことだ」
アタシが何か言ってやろうと口を開きかけた時だった。
エリカさんの両親と一緒にいた男の一人が口を開いた。おっさんよりも年上のおじさんに見える。立場もこの中で誰よりも高いといった態度が隠し切れていない。
その男の口調は柔らかいのに、隠し切れないいやらしさがあった。全然知らない人なのに「エロジジイ」という言葉が頭に浮かぶ。
「彼は西園寺タケルの父だよ」
音無先輩が小声で教えてくれた。って、エリカさんの婚約者とかいう最低男だった西園寺の父親なの!?
「エリカくんの意思なんてどうでもいいじゃないか。ここで捕まえてしまえば何も変わりがない。それどころか、私の性奴隷にする大義名分ができたではないかね?」
「は、はい。西園寺さんのおっしゃる通りです」
え、ちょっと? 何かやばそうな単語が聞こえた気がしたんですけど?
「パ、パパ……? 今の話、どういうこと?」
エリカさんの声が震えている。だって「性奴隷にする」とかトチ狂ったこと言ってんのに、父親が頭を下げて肯定しているんだ。他人のアタシだって恐怖しか感じなかった。
「もう決まったことだ。お前はタケルさんの婚約者に相応しくない。だが、容姿だけはいいからな。エリカを性奴隷として差し出せば、西園寺さんは今後も私との付き合いを続けてくださるとおっしゃってくれたんだ。出来損ないの娘だったが、最後くらいは親の役に立ってくれ」
エリカさんは言葉を失った。アタシも本当にこんな親が存在するのかと目を疑った。
「そういうことだ。小山くんは実に良い提案をしてくれた。親の言うことには従うべきだよエリカくん? まあそのあたりも私がこれから教育してやるつもりだがね。私は息子のように甘くはない。逆らおうと考えるだけ無駄なのだよ」
エロジジイが舌なめずりをする。西園寺も最低男だと思ってたけど、父親はそれ以上のクズ男だ。
「君がタケルにした行いは到底許されるものではない。これは罰なのだよ。ちょうど面白い新薬を手に入れてね。秘書に試そうと思っていたが、せっかくの性奴隷だ。エリカくんが私の身体なしでは生きていられなくなるのか実験してみようじゃないか──」
「ふざけんなっ!! エリカさんをテメーみたいなクズに渡すわけがねえだろうがっ!!」
アタシは思わず怒声を上げていた。
これ以上エロジジイの声を聞いていられない。エリカさんに聞かせたくない。その一心だった。
「……誰だね? メイドのくせに私に対する口の利き方がなっていないように思えるのだが?」
「も、申し訳ございません! おい貴様っ、西園寺さんに謝罪しろ!」
おっさんはアタシを雇ったメイドだと思っているらしい。自分で言うのもなんだけど、アタシみたいなのがお屋敷で働くメイドなわけないでしょうが。ほら、周りのメイドさんと全然違うし。
「アタシはここのメイドじゃねえっ。エリカさんを助けに来たんだ!」
「ほう? もしや君はあれか。タケルの不祥事の動画を撮影したという女のうちの一人か?」
エロジジイが興味を見せる。アタシは負けてやるものかと睨みつけた。
「だったらどうなんだ。エリカさんはアタシらの仲間だ。友達だ! 絶対に守る! お前らみたいなクソジジイの食いものになんか、絶対にさせないからっ!」
「氷室ちゃん……」
親だろうがお偉いさんだろうが関係ない。エリカさんを守りたいって気持ちがアタシを突き動かした。
「なら丁度良い。ここで捕まえて他の連中のことを吐いてもらおうじゃないか。それに──」
エロジジイがアタシの身体を舐めるように目線を走らせた。寒気を感じて自分の身体を抱き締める。
「くくく、なかなかに楽しめそうだ。エリカくんだけではなく、こんな上玉まで手に入れられるとは思わなかったよ。タケルのせいで不運に見舞われたと思ったが、どうやら逆だったらしい」
エロジジイがとんでもないことを言っているのだけはわかる。だってキモいんだもん。
「ちょっ、そんなの犯罪だろっ」
「不法侵入しているくせによく言う。それに小山くんが『知らない』と言いさえすれば、ここに君の存在はなかったことになるのだよ。存在しない者をどうしようが、誰が私を裁けるというのだね?」
エロジジイの目はマジだった。理屈じゃない。本気になれば理由なんて関係なく、思い通りになると信じている目だ。
こいつに何を言っても無駄だ。そう直感できるだけのやばさがある。
「さて、私は忙しいんだ。さっさと所有物になったエリカくんを持ち帰らせてもらおうか。ついでに金髪ギャルもな。ふひひ、たまらんね」
エロジジイの背後から二人の黒服の男が前に出る。ものすごくマッチョな欧米人っぽい。
対抗しようと音無先輩と運転手さんが構えをとる。だけど、体格を比べるだけでも勝ち目がないように見えてしまう。
周りは執事とメイドに囲まれている。逃げることもできなさそうで、でもなんとかしなきゃって考えでいっぱいだった。
エリカさんがアタシの手を握る。不安にさせないように、強く握り返した。
「やれ」
エロジジイが命令する。二人の黒服が動いたのを見て、アタシは迫ってくる危機に世界で一番頼れる人に助けを求めずにはいられなかった。
「助けて! 晃生ぉぉぉぉぉぉーーっ!!」
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