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55.何度でも言おう、ここはエロ漫画の世界である
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朝目が覚めると、眼前にエリカの寝顔があった。
「……そういえば、エリカの寝顔を見るのは初めてだな」
俺よりも先に眠っているところを見たことがないし、彼女の方が早起きなので、こうやって無防備な寝顔を見せてくれたことがなかったのだ。
「気を許せると思ってくれているのなら嬉しいぜ」
エリカの髪をすきながらそんなことを呟く。
小さな寝息がくすぐったい。顔が綻んでいるのを自覚しながら、エリカの寝顔を眺めていた。
「ん……晃生、くん?」
「おはようエリカ」
「おはよー……」
エリカは寝ぼけ眼のまま俺に抱きついた。それからすぐに寝息が聞こえてきたので、どうやら二度寝をするつもりらしい。
「って、そのまま寝られると困るんだが。今日はバイトがあるんだからよ」
無自覚な誘惑ほどタチが悪いものはない。魅力的な肢体の感触に、いろいろと困ってしまう。
「んー……そっかぁ。じゃあ朝ごはん作るねー……」
エリカは眠たそうに呟きながら、起きようとして……倒れてしまった。相当眠いらしい。
ここまで無防備なところを見せてくれるとは。面倒だと思うよりも、なんだか嬉しくなってしまった。
「いいよ。今日はお寝坊さんになっとけ」
「やだー……。晃生くんのお世話がしたいのー……」
とか言いつつも、また寝息が聞こえてきた。こんな子供っぽい一面があるなんて初めて知ったな。
エリカを寝かしつけてベッドから起き上がる。床に布団を敷いて眠っている日葵と羽彩が目に入った。二人は仲良さそうに抱き合って眠っている。ちなみに裸だ。
「まるで事後だな。……事後ではあるんだけども」
起きる気配はない。昨晩は激しかったからなぁ。
それでもスッキリ目覚められたのは、やはり郷田晃生のチートボディのおかげだろう。三人がかりだったのに、これほど元気でいられる自分にびっくりだ。
◇ ◇ ◇
エリカのことを日葵と羽彩に任せて、俺はバイトに繰り出していた。
今回は道路の交通量調査だ。一日だけで済ませられるし、給料もそれなりに良い。
「今回の調査は道路の計画や建設、維持修繕その他の管理についての基礎資料を得るために必要です。暑い時期で大変だとは思いますが、真面目に取り組んでください」
と、係の人が仕事の目的を説明してくれる。「真面目に」と言ったところで俺を見ないでほしかったぜ。
「郷田くんとまた一緒になりましたね」
「黒羽と何か縁でもあるのかもな」
今回のバイトも黒羽が参加していた。まさか連続で被るとは思っていなかっただけに驚いた。
でも、前回のイベント設営よりは彼女に合っているのかもしれない。座ってカウントするだけだから力仕事はないしな。
二人一組に分かれて交通量調査を行う。俺と黒羽はペアに選ばれた。……これも世界の修正力か?
俺たちはただのクラスメイトで友達だ。しかし原作では寝取る側と寝取られる側である。役割的に引き寄せる何かがあるのかもしれない。
「まっ、すでに原作通りじゃないし、関係ないか」
原作主人公がいなくなったことで、俺が知っている展開になりようがない。変わったからこそ、西園寺タケルなんていう原作未登場の人物が現れたのかもしれないが。
「何か言いましたか?」
「いや、独り言だ」
俺を見上げる黒羽。小柄で大人しそうな印象というのもあってか、庇護欲をかき立てる。
その一方で泣かせてみたいという欲求もあった。これは郷田晃生の性癖なんだろうな。こいつ、女に対して甘えたいのかいじめたいのかわかんないんだよ。
道路の端っこで椅子に座って、車の流れをカウントする。車が通る方向で、数える役割分担をした。
カチカチとカウントしているだけってのも暇だ。視線を前に向けたまま黒羽に雑談を振ってみる。
「黒羽は夏休みの課題進んでいるか?」
「あははっ。郷田くんは真面目なことを言うんですね」
笑われてしまった。俺が真面目で悪いかよ。
「ごめんなさい。郷田くんが以前に比べて変わったなと思いまして。体育祭の実行委員を一緒にやったから、わかっているつもりではいるんですけどね」
「別にいいけどよ」
「夏休みの課題は手をつけ始めたばかりですね。郷田くんはどうですか?」
「それなりにな。できれば七月中に済ませておきたいからがんばっているところだ。遅くても盆が来るまでには終わらせたいとは思っているぞ」
黒羽は黙り込んだ。何か変なことを言ったかと疑問に思いながらも、カチカチと車が通る度にカウントしていく。
「どうした?」
「いえ、郷田くんがちゃんと計画を立てているようでびっくりしました。あたしは二学期が始まるまでに終わらせればいいかなーっと思っていたので……」
黒羽の声が小さくなっていく。別に悪いことでもないんだから、萎縮しなくてもいいだろ。
「それこそ、課題なんて夏休みが終わる前までに終わらせれば問題ないだろ。俺はできるだけバイトしたり遊びたいって理由だしな。そんな真面目でもねえよ」
「そこまで含めての計画を立てているのがすごいですよ。日葵ちゃんのことも考えているってことですから」
友達として心配だったところなのだろう。黒羽は安心したかのように息をつく。
「ほら、世のお父さんは自分のことばかりで家族サービスをおろそかにすると聞くじゃないですか。ちゃんと相手と楽しもうとするのは良いことですよ」
「俺の遊びは家族サービスなのかよ」
「あははっ、もちろん言葉の綾です。でも、バイトしているのはそれなりの予定を立てているからなんでしょう?」
「まあ……そうだな」
そこまで深い考えがあるわけじゃない。せっかくの長期休み、俺の女たちといろんな場所に行けたらなと思っただけだ。
「……で、郷田くんは日葵ちゃんと氷室さん、どちらが本命なんですか?」
「本命?」
横目で黒羽を見ると、こちらをじっと見上げていた目と合った。眼鏡が日光に反射して少し眩しい。
「二人からアプローチされているじゃないですか。お弁当だって二人に作ってもらっていましたし……。郷田くんはどう考えているのかと気になりまして」
「ふむ」
どちらが本命と言われてもな。真面目に答えると、二人とも本命だ。
でも、さすがにそれを正直に言えば軽蔑されてしまうだろう。「真面目に答えてください!」と怒られてしまいそうだ。真面目に答えて怒られるのって、想像しただけで理不尽だな。
「まあ、日葵も羽彩も魅力的だからな」
「ですよね。もう二人ともと付き合った方がお互いのためかもですね」
「……え?」
「え?」
え? 何言っているのこの娘?
いや、すでに二人ともを俺の女にしておいてなんだけどさ、さっきの発言は二股がありって意味に聞こえたぞ?
それを女子が、それも真面目そうな女の子が口にした事実に、違和感が半端じゃない。
もしかして俺の聞き間違いだっただろうか? 勘違いだったら墓穴を掘る事態になりそうだ。
「えっと、黒羽はいいのか? 俺が日葵と羽彩と付き合って、二股しても……」
本当は三股だけどな。だが今重要なのはそこじゃない。
親友の相手の男が二股している。それを許せる女がどれほどいるだろうか? 女の友情を理解しているわけでもないが、普通に怒るだろうと思っていただけにわけがわからなくなった。
「もちろん嫌がる人もいるでしょうが、そういう男の人ってうちの学校にもいますよ? お金持ちの人なら複数の女性を囲っていると聞きますし、幸せにできるだけの度量があればいいのではないですか?」
「……」
これは、そういう認識の世界観なのか。それとも黒羽が特殊なのか?
だいぶ慣れてきたと思っていたが、まだまだこの世界の常識が俺の中で浸透しきってはいないようだった。
「……そういえば、エリカの寝顔を見るのは初めてだな」
俺よりも先に眠っているところを見たことがないし、彼女の方が早起きなので、こうやって無防備な寝顔を見せてくれたことがなかったのだ。
「気を許せると思ってくれているのなら嬉しいぜ」
エリカの髪をすきながらそんなことを呟く。
小さな寝息がくすぐったい。顔が綻んでいるのを自覚しながら、エリカの寝顔を眺めていた。
「ん……晃生、くん?」
「おはようエリカ」
「おはよー……」
エリカは寝ぼけ眼のまま俺に抱きついた。それからすぐに寝息が聞こえてきたので、どうやら二度寝をするつもりらしい。
「って、そのまま寝られると困るんだが。今日はバイトがあるんだからよ」
無自覚な誘惑ほどタチが悪いものはない。魅力的な肢体の感触に、いろいろと困ってしまう。
「んー……そっかぁ。じゃあ朝ごはん作るねー……」
エリカは眠たそうに呟きながら、起きようとして……倒れてしまった。相当眠いらしい。
ここまで無防備なところを見せてくれるとは。面倒だと思うよりも、なんだか嬉しくなってしまった。
「いいよ。今日はお寝坊さんになっとけ」
「やだー……。晃生くんのお世話がしたいのー……」
とか言いつつも、また寝息が聞こえてきた。こんな子供っぽい一面があるなんて初めて知ったな。
エリカを寝かしつけてベッドから起き上がる。床に布団を敷いて眠っている日葵と羽彩が目に入った。二人は仲良さそうに抱き合って眠っている。ちなみに裸だ。
「まるで事後だな。……事後ではあるんだけども」
起きる気配はない。昨晩は激しかったからなぁ。
それでもスッキリ目覚められたのは、やはり郷田晃生のチートボディのおかげだろう。三人がかりだったのに、これほど元気でいられる自分にびっくりだ。
◇ ◇ ◇
エリカのことを日葵と羽彩に任せて、俺はバイトに繰り出していた。
今回は道路の交通量調査だ。一日だけで済ませられるし、給料もそれなりに良い。
「今回の調査は道路の計画や建設、維持修繕その他の管理についての基礎資料を得るために必要です。暑い時期で大変だとは思いますが、真面目に取り組んでください」
と、係の人が仕事の目的を説明してくれる。「真面目に」と言ったところで俺を見ないでほしかったぜ。
「郷田くんとまた一緒になりましたね」
「黒羽と何か縁でもあるのかもな」
今回のバイトも黒羽が参加していた。まさか連続で被るとは思っていなかっただけに驚いた。
でも、前回のイベント設営よりは彼女に合っているのかもしれない。座ってカウントするだけだから力仕事はないしな。
二人一組に分かれて交通量調査を行う。俺と黒羽はペアに選ばれた。……これも世界の修正力か?
俺たちはただのクラスメイトで友達だ。しかし原作では寝取る側と寝取られる側である。役割的に引き寄せる何かがあるのかもしれない。
「まっ、すでに原作通りじゃないし、関係ないか」
原作主人公がいなくなったことで、俺が知っている展開になりようがない。変わったからこそ、西園寺タケルなんていう原作未登場の人物が現れたのかもしれないが。
「何か言いましたか?」
「いや、独り言だ」
俺を見上げる黒羽。小柄で大人しそうな印象というのもあってか、庇護欲をかき立てる。
その一方で泣かせてみたいという欲求もあった。これは郷田晃生の性癖なんだろうな。こいつ、女に対して甘えたいのかいじめたいのかわかんないんだよ。
道路の端っこで椅子に座って、車の流れをカウントする。車が通る方向で、数える役割分担をした。
カチカチとカウントしているだけってのも暇だ。視線を前に向けたまま黒羽に雑談を振ってみる。
「黒羽は夏休みの課題進んでいるか?」
「あははっ。郷田くんは真面目なことを言うんですね」
笑われてしまった。俺が真面目で悪いかよ。
「ごめんなさい。郷田くんが以前に比べて変わったなと思いまして。体育祭の実行委員を一緒にやったから、わかっているつもりではいるんですけどね」
「別にいいけどよ」
「夏休みの課題は手をつけ始めたばかりですね。郷田くんはどうですか?」
「それなりにな。できれば七月中に済ませておきたいからがんばっているところだ。遅くても盆が来るまでには終わらせたいとは思っているぞ」
黒羽は黙り込んだ。何か変なことを言ったかと疑問に思いながらも、カチカチと車が通る度にカウントしていく。
「どうした?」
「いえ、郷田くんがちゃんと計画を立てているようでびっくりしました。あたしは二学期が始まるまでに終わらせればいいかなーっと思っていたので……」
黒羽の声が小さくなっていく。別に悪いことでもないんだから、萎縮しなくてもいいだろ。
「それこそ、課題なんて夏休みが終わる前までに終わらせれば問題ないだろ。俺はできるだけバイトしたり遊びたいって理由だしな。そんな真面目でもねえよ」
「そこまで含めての計画を立てているのがすごいですよ。日葵ちゃんのことも考えているってことですから」
友達として心配だったところなのだろう。黒羽は安心したかのように息をつく。
「ほら、世のお父さんは自分のことばかりで家族サービスをおろそかにすると聞くじゃないですか。ちゃんと相手と楽しもうとするのは良いことですよ」
「俺の遊びは家族サービスなのかよ」
「あははっ、もちろん言葉の綾です。でも、バイトしているのはそれなりの予定を立てているからなんでしょう?」
「まあ……そうだな」
そこまで深い考えがあるわけじゃない。せっかくの長期休み、俺の女たちといろんな場所に行けたらなと思っただけだ。
「……で、郷田くんは日葵ちゃんと氷室さん、どちらが本命なんですか?」
「本命?」
横目で黒羽を見ると、こちらをじっと見上げていた目と合った。眼鏡が日光に反射して少し眩しい。
「二人からアプローチされているじゃないですか。お弁当だって二人に作ってもらっていましたし……。郷田くんはどう考えているのかと気になりまして」
「ふむ」
どちらが本命と言われてもな。真面目に答えると、二人とも本命だ。
でも、さすがにそれを正直に言えば軽蔑されてしまうだろう。「真面目に答えてください!」と怒られてしまいそうだ。真面目に答えて怒られるのって、想像しただけで理不尽だな。
「まあ、日葵も羽彩も魅力的だからな」
「ですよね。もう二人ともと付き合った方がお互いのためかもですね」
「……え?」
「え?」
え? 何言っているのこの娘?
いや、すでに二人ともを俺の女にしておいてなんだけどさ、さっきの発言は二股がありって意味に聞こえたぞ?
それを女子が、それも真面目そうな女の子が口にした事実に、違和感が半端じゃない。
もしかして俺の聞き間違いだっただろうか? 勘違いだったら墓穴を掘る事態になりそうだ。
「えっと、黒羽はいいのか? 俺が日葵と羽彩と付き合って、二股しても……」
本当は三股だけどな。だが今重要なのはそこじゃない。
親友の相手の男が二股している。それを許せる女がどれほどいるだろうか? 女の友情を理解しているわけでもないが、普通に怒るだろうと思っていただけにわけがわからなくなった。
「もちろん嫌がる人もいるでしょうが、そういう男の人ってうちの学校にもいますよ? お金持ちの人なら複数の女性を囲っていると聞きますし、幸せにできるだけの度量があればいいのではないですか?」
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